永田和宏選
Vの字にカットされたる片耳は真白き仔猫の桜ひとひら 仙台市 武藤敏子
議論するべきは財源ではなくて軍拡自体であるはずなのに 東京都 十亀弘史
マネキンが着れば素敵なワンピース買いたいけれど思いとどまる 京都市 中尾素子
一首目、耳をV字にカットするのは地域猫の証です。仔猫だけれど、避妊手術したのですね。これからしっかりいい一生を送ってほしいです。猫好きに囲まれて幸せに暮らせますように。二首目、本当にそうですよ、どんどん軍事費を拡大させて、これが戦争放棄の国でしょうかね。自衛隊に志願する若者も減っているのに。戦うのはやめましょう。三首目、この短歌で高校時代のことを思いだしました。近所の衣料品店で買ったワンピースを着てバスに乗ったら、同じワンピースを着たおばさんがいたんです。ものすごくショックでした。その叔母さんの年齢も今の私は超えているかもですね。
馬場あき子選
ため池を泳いで渡る蛇を見てこれぞ田舎の醍醐味と知る 盛岡市 舟山治男
かっこいいですね、蛇が泳ぐなんて、まるで龍ではないですか。私は蛇が嫌いではないから、その光景を見てみたいです。
佐佐木幸綱選
旅先の高揚感で下手なのに弾いてしまった街角ピアノ 吹田市 中村玲子
そうそう、旅先ではけっこう普段できないようなことしてしまいますよね。いいじゃないですか、街角ピアノはうまい人だけが弾くものではないし、音楽を楽しめればそれでいいのですから。らしくない自分を見つけるのも旅の醍醐味ではないでしょうか。
高野公彦選
球児らの足並み揃わぬ後進に平和の証と母呟けり 高槻市 寒川のり子
夏草にすがりし蝶に声かけて草刈り鎌の試し切りする 三浦市 秦孝浩
一首目、わかります。一糸乱れぬ行進って、まるで軍隊ですよ。私も大嫌いです。二首目、やさしい心遣いですね。蝶にどいてもらわないとって。
八王子に住んでいたころ、庭の山椒の木にはいつのまにか、アゲハチョウの幼虫が集まってきて、かなり葉を食べられてしまいましたっけ。それでも、無事に蝶になるのを見るのは楽しいものでした。