”大魔王”ことキム・チョルの登校前、
クラスメート達は平和に談笑していた。
彼が3−12のドアを開けるまでは。
約3秒間の静寂
しんとした教室で、思うことは一つ。
[まぁ、去年と同じ日常だ]
静寂に包まれた教室内で、じっと息を潜めるチョル・・。
<歌え、クソ〜>
ガラガラッ!
ドン!
すると突然、大きな音を立ててミエが隣に座った。
おまけにチョルの方を睨んでくる。
「クッソ」
その振る舞いを見てユンヒはビクビクしていたが、
ミエの怒りボルテージはまだおさまらないようだ。
<イケてるミエ>
[キムチョルが睨んでくるならこっちは無視してやろーじゃないか
その程度ならミエにもできる]
もうアンタは透明人間だから!
[隣の席だけど、だってコイツはやな奴だから!]
私はもっと大切なことに神経使わなきゃいけなくて忙しいの!
かくしてチョルは透明人間と化した。
一方担任は朝礼の後、模擬試験の話をした。
「今回の模擬試験はとても難しいことは皆分かってるかしら?
内申には響かないからって手を抜いてはダメよ。
今回の模擬試験の成績がそのまま入試に反映されると考えなさい」
[つまり勉強]
ミエが神経を使うべきなのはチョルではなく、勉強だったのである・・。
<どうして・・・>
ミエと友人達は、休憩時間に思い思いの時を過ごす。
お菓子を分け合っていたユンヒが、眉根を寄せて聞いてきた。
「ねぇ、てかアンタ・・・」 「ん?」
「なんでもない」
先ほどチョルの隣で強気な態度でいたミエのことを、ユンヒは一応心配していた。
けれどいつだってミエは、キョトンとした顔で首を傾げるのだ。
「あれ?」
「そこってすごい後の方じゃない?もうやってんの?」
「塾は進むの早いんだよ」
そして友人達は、テキストを進めながら塾の話をし始めた。
「うちら塾で模擬試験やってるしね」「ハングン塾は体罰あるって」
「私そこ行くとこだったんだけど!親ようやく止めてくれて」
「難しいけどできたー」
「トホ先、なにげに人をけなすじゃん。宿題もめちゃ出すし」
「ミソルが同じ問題集使ってるから、答え一冊多めに取ったらしいよ」
「やったじゃん」
「ファンミエ 、アンタも塾来なよぉ。何の話かわかんないでしょ?」
「えーヤダ」「断固拒否やん」
チへは残念そうにしながら、再びテキストに向き直った。
ミエの心の中で、少しだけ何かが残る。
<意識>
退屈な授業中。
ミエは先ほど心に残った何かが、モヤモヤとした意識になるのを感じていた。
「大体このくらいの・・違い?」
今学校で習っているところと、友人達が塾でやっているところ。
それは明らかな差があった。
こんなに前倒しで習うの?
<意識してないって>
母親からの言葉が脳裏に蘇る。
「チョル君を見なさい!しっかりしてるわ勉強は頑張るわ優しいわ!アンタも見習いなさいよ!」
勉強に行っていた意識は、ふとした瞬間に再び隣の席の人へと戻された。
ミエは透明人間の存在感を、右隣にひしひしと感じている。
チラッ
隣の透明人間は、真剣に勉強に取り組んでいた。
ふと、二年生の時に偶然耳にした会話を思い出した。
「大魔王、今はもう完全に模範生じゃん」「摩訶不思議よな」
「・・・・」
行ったり来たりする思いと意識が、ミエの心を白く曇らせる。
チィと口を真一文字にして、ミエはただ前を向く。
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第八話②でした。
チョ・・チョルの横顔の破壊力よ!!
なんというか・・スンキさんの絵ってシンプルな線なんだけど
すごく繊細で、すんごい美しいんですよね・・。ジ◯リの絵に近い感じがあります。
いや〜この先が楽しみですねーー!
第八話③に続きます