一方こちらはキム・チョルの朝。
彼の部屋の窓には、「変態退散」がまだ貼ってある。
ファン・ミエの変態疑惑は更に深まり、昨日は・・
チョルは胸をドンドンと叩きながら、一人呟いた。
「マジで変人じゃねーかよ・・」
「ファン・ミエ!まともになってくれっ!」
半分カーテンが開いた窓を見上げながら、チョルはそう口にしたが、
彼女が顔を覗かせることはなかった。
そしてチョルは、朝一番に「三角文具店」へと向かったのだった。
放課後に訪ねたときの閑散とした雰囲気とは真逆の、ワイワイガヤガヤとした空気がそこにあった。
店内は学生たちで溢れ、店主のおじさんはあっちこっちに呼ばれとても忙しそうである。
「おじさーん」「はいよ、ちょっと待っててよ」「えーあんたも来てたのー」
「え?名札?今日の放課後来てくれよ!」「おじさーん」「ねぇおじさーんこれいくら?」
チョルは小さく「はい・・」と返事をして、踵を返す他なかったのだった・・。
<とりま友達>
”百済中学校”
そしてチョルは正門を通過した。
その後、”毛虫ロード”に差し掛かった途端、早速洗礼を受けたのだった。
ボトッ!
ヒィィィ!!
この男も共に・・・。
ぎゃああ!!
バチッ
二人は押し合いへし合い、毛虫を避けて身を捩って歩く。
「え、なんでこっち来んのー?ずっとそっちだったじゃ・・」
「こっちはちょっと虫の雨・・」「ぎゃっ!」
「俺元々左側が好きなんだって」「じゃあ後ろ歩けよっ」
するとそんな二人の道の先で、ひょいと毛虫を避けてくれる人がいた。
「はい、もう大丈夫でしょ?喧嘩しないで・・」
にこやかにそう言ったハン・ソンイに、モ・ジンソプは「この子も普通じゃないような・・」と思いつつも、
笑顔で対応した。
「ソンイは優しいな〜。さ、さ、こんなのは捨ててさ。大丈夫大丈夫、俺たちふざけてるだけよ?」
それを聞いて、ソンイはにっこりと笑った。
「そっか。二人、本当に仲良しなんだね」
えっ
それを聞いてチョルは微妙な顔になったが、そういえば・・と最近のジンソプの言動を思い出した。
「やっと来てくれたんだからさぁ、変なこと聞かないでよ。
チョルはマジで勉強したいんだって。邪魔しちゃダメだよ?」
今まで興味本位で近づいてきた人達や、わけもなく悪く言ってきた人達までもが、
ジンソプの対応でチョルに一定の距離を置いて、その上好意的に接するようになったのだった。
学年一のイケメンの彼は、チョルと違って世渡りに長けている。
「そーなんだよ」
「だよね?」
だからすぐには、「二人仲良くなったんだね」というソンイの言葉を否定できなかった。
チョルはジンソプから顔を逸らしつつも、曖昧に頷いた。
「あ・・まぁ・・」
そしてそんなチョルのリアクションを見て、ジンソプは少し驚いた。
「なになに、ついに認めんのね?俺は猛烈に感動してるぜぇ」
ジンソプはチョルとソンイの肩に手を回した。
「よし、じゃあ友達記念に街で遊ぼーよ。いつにする?
ソンイ、俺もそろそろ勉強しなきゃだし、問題集選ぶの手伝ってくれない?」
「え?うん」「は?何言って・・」
その時、ソンイが目を丸くした。
「あっ?ミエ!」
「だね、ファン・ミエも一緒に・・」
ミエの名前が出た途端、チョルは表情を変えた。
しかしその瞬間、ミエの大声が辺りに響き渡った。
「いや本当なんですって!!」
「男子が私の名札つけてたから、
「おいおいよくそんな馬鹿げた嘘を・・そんな戯言言う奴は山ほどいるんだよ!」
「いやちょっともう一度落ち着いて私の話を聞いてくださいよ!
お仕置きの体勢から必死の弁解をしているミエの姿に、
みんなドン引・・いや驚いていた。
ガバッ!!
ミエは唐突に顔を上げ、必死の形相でこう叫んだ。
「あいつ!あいつです!」
「あそこにいるイヤフォン・・じゃなくてヘッドフォンの!」
「あの男子捕まえて!あいつ!」
その言葉を合図に、チョルが猛ダッシュした。
風紀検査の先生がチョルの服装を指摘した矢先であったが、チョルにはそれが耳に入らなかったのだ。
「おおー」「なんだ?」「大魔王どしたん?」
皆が騒然とする中、ミエは目を丸くしてチョルの背中を見ていた・・。
<走って>
バッ!
チョルは走った。
皆に見られていたが、気にも留めずに”ヘッドフォンの男”を追いかける。
階段を上り切ったところで、ターゲットがまた上階へ上がっていくのが見えた。
数段飛ばしで追いかける。
ダダダダダダ!
ダダダダダダ!
上まで上がり切ったが、その男を捕まえることは出来なかった・・。
「いねーし・・」
ファン・ミエの名札をつけていたという謎の”ヘッドフォンの男”とは、
一体何者なのか・・?
第七十三話②でした。
ここでジンソプが「やべっピアス」と言って外してるのを、本文中に入れれなかったのでここで・・
服装検査多いですね百済中学校・・
三年の夏が終わったらゆるくなるんでしたっけ?
個人的には、シャツの中にTシャツ着てるチョルの着こなしが好きですー!
第七十三話③に続きます