青リンゴ観察日記

韓国漫画「世紀末青リンゴ学習塾」観察ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

第三話③

2021-01-30 | 第一話〜第三話

<ミエの願いは>

ミエはその日、母親と共にお寺にやって来ていた。

母は頭を地面に付け、一生懸命お祈りをする。

「ミエの集中力が発揮されて成績が上がりますように〜
良い高校に合格できますように〜」

「良い大学良い企業・・いや公務員に・・
ファン・ミエ!アンタも早くお辞儀してお願いしなさい!
せっかく連れて来たのに何ボーッと突っ立ってんの!」

ボーッとしているミエとは対照的に、母はずっとぶつぶつと願いを唱えていた。

良い旦那、そして良い家に恵まれますように・・と祈りは続く。

願い?

願い・・・

願い・・・!!

”願い”というキーワードでミエの脳内にスイッチが入った。

飛行機に願掛けをしていたミエのことだ。”願い”は山ほどある。

努力しないで成績向上 暗記の天才 新しい机 ストレートロングな髪 小遣いUP
コンピューター 統一 宝くじ1等 リーバイスのジーンズ
携帯はおろかポケベルすら ソウルに引っ越し 新しい鞄 新しい靴 10cm背が欲しい

脳内PCに”Enter keyを押して下さい”表示が出た。

山ほどある願いを全てふるいにかけたらーー・・

多スギデス

ですよね、と納得したミエは、

これだけは譲れないという願いをお願いすることにした。

あの子と同じクラスにだけはなりませんように

そして・・

 

<新学期の朝>

ミエ・・ ファン・ミエ!

この子はファン・ミエだよ

閉じた瞼の裏側に、声が反響する。

誰かがミエのことを呼んでいる。

さぁ、挨拶して この子の名前はー・・

あの子の名前を聞く前に、意識が徐々に戻って行く。

聞き慣れた母の声が、ミエを現実に引き戻す。

「エ・・ ファン・ミエ ・・」

「ファン・ミエ!」

「早く起きなさい!」

怒鳴る母の声に混じって、ムンクが吠えているのが聞こえる。

「アンタ遅刻だよ遅刻!!」

ミエは時計を見て青ざめた。

「ぎゃっ!お母さん!私遅刻じゃん! 」

「普段遅刻なんてしないのにねぇ。始業式以来かしら?」

[朝からそんな不吉な始まり]
 
[1999年3月2日 中三新学期 DーDAY]

いよいよ中学三年生の幕が開ける、こんな日にミエは全力疾走していた。

「チャイム!」

ディンドンディンドンと鳴るチャイムを聞きながら、走るミエ。

「うわあああああ〜!」

「仲間がいる!」

ミエの前に何人も、教室に向かって走る生徒たちがいた。

ミエはさらに加速する。

まだ遅刻と決まったわけじゃないー!

↑短距離記録には自信がある方 

正門を抜け廊下を走り抜け、階段を駆け上がった先にゴールが見えた。

「12組!」

「セーッ・・!」

「・・フ」

トンッとミエはおでこをぶつけた。

そこに人が立っていたからだ。

顔を上げるミエ。

そこにはあの少年がいた。

ミエの目は思わず点になる。

3年12組の前で固まる二人。

<当選>

ミエは思わず吃った。汗もすごい。

「あ・・あ・・あ・・」

そんなミエの様子を見て、少年も遂に悟ったようだ。

 

自分とこの小さな女子が、同じクラスに”当選”したことを!!

ドドン

ドドドン!

ドドーン!

蒼白

[同じクラス 100%]

顔面蒼白は少年だけの話ではない。ミエもだった。

あれほど嫌だと思っていたことが、リアルに起こってしまったのだから。

 

<最悪>

 

少年は大きな溜息を吐いて、

青い顔で、それでも覚悟を決めた。

ガラガラ、と教室のドアを開ける。

ありえない・・同じクラスだけは・・ありえない・・

パニックになるミエ。

それもそのはず、この先には地獄が待っていたのだから・・。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

第三話③でした。

12組って・・生徒多っ

もっとクラスあるんでしょうかね?!しかしその中で同じクラスになるのは

すごい確率です 物語が動き出しましたね!

 

最初のお寺のシーンですが、お母さんがしていたのが韓国式のお祈りみたいですね。

子供の受験が上手くいきますように、と親がこうしてお祈りするそうです。

韓国の受験戦争は本当に大変そうで頭が下がります・・

 

第三話④へ続きます!


第三話②

2021-01-28 | 第一話〜第三話

<シンデレラ>

「およ?」

去って行った少年は、一つ忘れ物をして行ったようだった。

ずいぶん足の大きなシンデレラだ。

彼は靴を片方だけ忘れて行った。

 

<その少年>

少年が去って行った方向を見つめながら、ミエはふとこんなことを思った。

そういえばこんな間近であの子のこと見るの、あの時以来だな

五ヶ月前のことが蘇る。

転校して来た時、偶然遠巻きに見て
 
デカいなとは思ってたけどマジで超大きい
 
 
小さい時も大きかったもんな

大きなサンバイザーで、初めて少年と向かい合った時は顔が見えなかった。

けれど先程相対した時、彼の目は見開かれていた。

あれは一体・・・?

首を捻りながら、ゴミ袋を持ったその時だった。

「あ」

「もしかして泣いてたとか?」

先程の不自然なまでの少年の態度に、合点がいくのはその理由だ。

ミエはゴミ捨て場を眺めながら、しゃがみ込んでいた彼を思う。

 

<何かを忘れてしまったみたい>

真夜中。

両親もムンクも眠っている。

シンデレラが忘れて行った靴は、紙袋に仕舞っておいた。

ミエの部屋には、”為せば成る”と書かれた紙が、額に入れて飾ってある。

そして天井には、星と土星の光るステッカーが貼ってあった。

 

真夜中だというのに、ミエの目はぱっちりと開いていた。

何かを忘れているような気がしてならない・・・。

「あっそうだ!デュオバック!完全に忘れてた!」

「しかもタンスもあった!
ステッカーもまだ付けて無かったし、もうすでに誰か拾ったんじゃ・・!」

大型ゴミの回収時に貼るステッカーも貼られていない、

しかもあれだけ良い物ならば、すぐに誰かに持って行かれてしまうかもしれない。

けれどミエのプライドが、今すぐにゴミ捨て場に向かうのを躊躇させる。

ち、違う!私はホームレスじゃない・・!

「うぁぁ・・・」

 

<予感>

瞼の裏に、五年前の少年の姿が蘇る。

五ヶ月前のことも。

今日のことも。

その時、ミエにはある”予感”がした。

まさか同じクラスになったりしないよね?

なんだか胸がざわざわする。

そういえば以前、友達のユンヒが言っていたことを思い出した。

 

<この前>

学校帰りに、おやつ代わりのトッポギを食べながらユンヒが言った。

「ねぇ、そういえば大魔王の話だけどさー」

「なに?」 「もし同じクラスだったらどうする?」

「えっ?考えたこともなかった」

「けど・・」

そう言われて、ミエは初めてその可能性に気がついた。

あの子と 私が

「同じクラス?」

・・・え?

リアルに想像すればするほど、悲惨な結末が見えるようだった。

その日からミエの願いは、それを回避することになったのだった。

 

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第三話②でした。

男の子の忘れて行った靴、大きいですね〜〜

一体背が何センチくらいなのか気になるところです。

そしてお母さんの隣に寝ているムンク、可愛いですね・・

 

第三話③に続きます


第三話①

2021-01-26 | 第一話〜第三話

自分の運命を変えることになる少年と、ミエは今相対していた。

飼い犬のムンクが、突然彼の前で吠えたからだ。

まるで時が止まったかのように、二人はその場から動けない。

はっ

一瞬の後、少年は我に返って立ち上がった。

突然動いた彼を見て、ミエはビクッと身を揺らす。

 

 

ゴシゴシと目元を擦った後、少年は再び動きを止めた。

暗闇の向こうに立つ人物を、そのままじっと見つめている。

 

「あ・・・」

そう小さく呟くミエのことを、少年はじっと見据えて動かない。

「・・・・」

ミエはそんな少年に向かって、何か言わなきゃと口を開いた。

「あ・・・あの・・」

「? 誰・・」

「その・・・」

その時だった。

ワンッ! 「あっ!?ムンク!!また?!

目にも止まらぬ早さで、ムンクは少年の元へと走って行く。

「ぎゃっ!ムンクアンタ何してんのっ!やめなさい!

「こっちおいで!」

「やめなっ!」

ミエは大声で叫びながら、ムンクをパッと抱き上げた。

 

 

「ごめんねっ!びっくりしたでしょ?!」

突然、二人の間合いがゼロに近くなった。

少年はただ目を見開いて少女を見る。

ミエはポカンと口を開けたまま、至近距離で少年のことをじっと見ていた。

そしてふと、口を開く。

「あ・・」

「あ・・どうも・・お・・お久しぶり・・お久しぶり?」

[ミエはとりあえず挨拶しなきゃと思った]  らしい。

そのままたどたどしい様子で会話を続けるミエ。

「私達前にほら・・私のこと知ってるよね?わ・・私君のこと知ってて、君もゴミ捨て・・」

そう会話を続ける最中にも、(本当に中学生?怖いくらいデカい 首痛っ)とミエの心の声は止まらない。

するとふと、ミエはあることに気がついた。

「あれ?」

「なんか目が・・・」

少年は思わずバッと顔を隠した。

「あっ」

突然くるっと向きを変えた、少年の靴が脱げる。

「あっ?!」

「大丈夫?!」

[靴のかかとを踏んづけて履くのはやめましょう]

少年に贈る言葉である。

ミエはあたふたしながら少年に駆け寄った。

「けっけがしてない?!」

「どうしよう!!ごめん!」

倒れたまま動かない少年を見て、ミエは慌てた。

転がっていたスニーカーを差し出す。

「これ、靴!」

バッ!

スニーカーをぶん取った少年は、ゆらり・・と立ち上がったかと思うと、

そのまま一目散にその場を後にした。

「およ?」

少年の心はもう、これしかないだろう。

 

<一人になりたくて>

「およよ?!」

少年は靴も履かず、そのままヨロヨロと路地裏に消える。

「家そっちじゃないっしょ!?」

「なんでそんな急いでんだろ?マジでびっくりしたのかな?」

ミエは少年がなぜそんな態度を取るのか分からなかった。

もう姿は見えないが、大きな声でもう一度謝る。

「ねぇ!ごめんね!びっくりさせて!」

「この子いつもはこんなんじゃないんだけど・・!」

少年の気配は、もう消えてしまっている。

ムンクの、いや自分のせいでこうなってしまったことに、ミエは後味の悪さを感じていた。

 

ギロッ

「ちょっとファン・ムンク!なんであんなことしたの!私を本気で怒らせたいの?!」

 

ミエは懐に入ったムンクにお灸を据える。

「どこ見てんの!この!」
 
「ほら家帰るよ!
 
最近やたら虫獲って食べるわ言いつけ聞かないわだよねアンタ?!」

輝く満月の下で、ミエはしばらくムンクにお説教を続けたのだった・・。

 

 

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第三話①でした。

ついに二人が顔を合わせた回でしたね!

しかしスンキさんは本当に絵が上手いなぁ〜〜と改めて思います。

シンプルな線なのに、動きや表情の移り変わりまで伝わってくるというか。

チートラよりもおぼこい感じというか、そういう年齢の描き分けも上手だし、本当すごいと思いました。

 

そしてムンク・・可愛い・・

 

第三話②に続きます

 

 

 


第二話⑦

2021-01-24 | 第一話〜第三話

涙目で見上げた夜空には、満月が浮かんでいた。

片手にゴミ、片手にムンクのリードを持ったミエが、悲しみに暮れている。

悲しい

 

ゴミ捨て場には、色々なものが無造作に置かれていた。

その中を、ミエはムンクを散歩させながら歩く。

 

その時、ミエのすぐそばでゴロゴロとキャスターが回っていたのだが、

ミエは気づかず散歩を続けていた。

「ムンク〜こっちおいで」

そしてふと視線を上げた、その時だった。

「・・・・」

 

掃き溜めに鶴、

ならぬゴミ捨て場に・・

「デュオバック」

欲しくてたまらなかったデュオバックが目の前にあることに、

ミエは興奮を隠せなかった。

「デュオ・・」

けれどその椅子のところに、人がいることにようやく気が付いた。

その人は、デュオバックの近くに持っていた段ボール箱を捨てた。

ビックリした、と呟きながらミエはさっと壁に身を寄せる。

「・・・・」

ミエは羨望と苛立ちの入り混じった視線でその人を見つめた。

何?あのデュオバック、今あの子が捨てたっての?

「・・・・」

少年はゴミ捨て場にしゃがみ込み、何やら見ている様子だ。

俯いて、手で目の当たりを擦っている。

・・?そうだよね?

暗くてよく見えないので確信は持てないが、おそらく彼はお向かいの少年だ。

あの子・・キム・・

・・スンジョン姉さんの弟

たとえ心の中でも、ミエはその少年の名を決して口にしなかった。

気まずさと気恥ずかしさで胸がいっぱいになるから。

ミエはただ、ワクワクしながらその時を待っていた。

なんでずっとあそこにいるんだろ?あの子が去ってから私があのデュオバックを・・

と、その時だった。

ワンッ!

ビクッ、と少年は思わず体を震わせた。

ミエは突然鳴き出したムンクを抑えるので精一杯だ。

「ワンワンワンワン!」

「ちょっ・・アンタ!何っ・・!ちょ、ムン・・

「ク・・」

ワンッ!と一際大きくムンクが鳴いた時、

少年がこちらを向いているのが見えた。

赤い目元は、その満月の光で潤んでいる。

しかしミエは、今の状況を処理することで精一杯で、それには気がつかない。

そんな二人の始まりを、ただ満月は見ていた。

 

[1999年3月1日 新学期 Dー1]

[この少年は近い将来、]

[この少女にとって永遠に忘れることの出来ない、

この世で最も特別な少年になる。]

[そして・・・]

物語はすでに始まっていた。

けれどゴミ捨て場に立ち尽くす二人は、まだその行き先を知らない・・。

 

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第二話⑦でした。

これで第二話は終わりです。

最後にイラストがありました

なんだかこの物語を象徴する絵ですね^^

早く二人の絡みが見たいですね〜〜!

 

第三話①に続きます!


第二話⑥

2021-01-22 | 第一話〜第三話

ドンッ!

その衝撃に、母は思わずりんごを取り落とした。

家の外では、変わらず少年が自転車を押しながら歩いている。

バンッとドアが開いて母が駆け込んで来た。

「なっ何?!何事?!」

「うう・・おかぁさぁぁん」「あらららららら!

歪んだタンス、倒れている娘。

母は血相を変えて駆け寄った。

「大丈夫?!怪我はない?!」「おかぁさぁん〜〜」

「見せてごらん!」「いたい〜〜」「一体どうしたのこのタンスは?!」
 
「オンボロだからだよ〜!グスングスン

「やだこれどうなって・・」

そう言って母が引き出しに手を掛けた時だった。

嫌な予感がすでに漂っている。

「あらま!」

ドサドサッ、と服に紛れて色々出て来た。

二人の時が止まる。

夥しい数の雑誌、雑誌、雑誌・・。

「あ・・これは・・少しずつ隠してたやつ」

ヒィィィ

身の危険を感じたミエが、必死に雑誌を隠そうとする。

母はゆっくりと低い声で、娘の名を呼んだ。

「フ ァ ン ミ エ ・・・」

「いやこれは違っ・・お母さん、これは売ろうと思って集めた・・っ
 
お母さんちょっ・・ちょっと待っ・・」

その日ファン家には、母の雷が落とされたのだった・・。

「またこんなもん買ってぇぇぇ〜〜〜!!!もう何回目よ?!

「ダメーーーっ!!
 
「なんで出さない?!お金の大切さを全く分かってない!!
 
「ただいま・・なっなんだなんだ?!ちょっ・・落ち着け落ち着け!!
 
「全部出しなさい!絶対これ全部燃やすからね!!」
 
「これは売ろうと思って集めたんだよ!今は見てないんだったら!」

「うわぁぁぁ〜〜〜ん!!」

母の雷の後には、ボロボロになった雑誌の山しか残されなかった。

ミエは泣きながらゴミを捨てに行かされた。

「グスングスン」

母はブチ切れ、父はそんな母をなだめて幾分罰を軽くしてくれた。

「今回だけは手加減して没収にしたげるわ!高校受かったら返すんだから聞き分けなさい!
なんでお小遣いでこんなゴミを買うのよ!!」

「ミエ、お父さんが守ったぞ!」

「もうこのゴミ捨てて来なさい!ついでにムンクの散歩もして来てよ!」

そう言われ、泣く泣くムンクを連れてミエはゴミ捨てに行かされたのだった。

「うわ〜〜〜んひどいよぉぉ!何すんだよお母さん〜〜〜
お小遣い貯めて必死に集めたのに〜〜〜」

ゴミ捨て場に近づくと、ムンクがゴミに向かって鼻をクンクン言わせた。

「ムンク!そればっちいよ!」

ムンクを連れて、泣きながら歩く夜の道。

見上げた空には、満月が浮かんでいた。

 

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第二話⑥でした。

ミエちゃん、なんだかんだファイアボーイズ 好きだったんですね

あんなに引き出しに隠して・・泣けて来ます

次回で第二話最後です。

第二話⑦に続きます