あれから約二日後、つまり月曜がやって来た。
ミエはカサブタになった上唇をめくって見る。
[16歳]
[かなり敏感なお年頃]
ミエは鏡の前で、唇をむにゅっとやってみた。
「ん」
「ちゅ・・」
・・・・・。
ミエは一際大きな声で母に「行ってきます!」と言った。
「あんた、今日成績表が出る日だからね?!もう調べはついてんのよ!」
ミエはプリプリしながら学校へ行った。
まだかなり早い時間なのだが。
ドサッ
しん・・・・
[そして全てにイライラするお年頃]
あれから約二日後、つまり月曜がやって来た。
ミエはカサブタになった上唇をめくって見る。
[16歳]
[かなり敏感なお年頃]
ミエは鏡の前で、唇をむにゅっとやってみた。
「ん」
「ちゅ・・」
・・・・・。
ミエは一際大きな声で母に「行ってきます!」と言った。
「あんた、今日成績表が出る日だからね?!もう調べはついてんのよ!」
ミエはプリプリしながら学校へ行った。
まだかなり早い時間なのだが。
ドサッ
しん・・・・
[そして全てにイライラするお年頃]
ミエは唇に手を当てたまま、チョルとキスをした後のことを思い返した。
ありえないことが起こりすぎて、二人ともふわふわと現実感がなかった。
ただ心臓の振動だけが、二人の間の空気を震わせる。
ミエの上唇から、たらりと一筋の血が流れた。
その赤い滴を目にした途端、チョルは現実に引き戻されたようだ。
バッ!
叫び声が、青い空に響き渡る。
「うわああああああ!!!!」
ミエが叫ぶならまだしも、誰よりも大きな声を上げたのはチョルだった。
そのチョルの狼狽っぷりに、ミエもファニもファニの二人の友人も、思わずポカンと口を開ける。
そこからのチョルはすごかった。
叫び、項垂れ、突っ伏し、壁に頭をぶつけ・・。
「うおおおおおおお!!
うわあああああ!!」
ブルブル・・・
「があっ!!うわぁあああ!!」
「ぐああああああああああああああああ!!!!」
ミエは呆気に取られた。
一通り暴れた大魔王は、ギッとミエに一瞥を食らわす。
ダダダダダ!!ドタッ!ゴロゴロ・・
ダダダダ・・・
チョルは叫び声を上げながら、そのまま走って行った。
ミエはなんのリアクションもできないまま、ただその場に残された・・。
半日経って、ミエは気づいた。
チョル、お前ものすごく失礼だぞ、と。
「クソーーーッ!!」
「ふっざけんなっ!!消えろっ!!なんであんたの方がテンパってんだよ!!
暴れ回るミエに、母が一喝した。
「早く布団入って寝なさい!!」
「めっちゃムカつくぅぅぅ!」
その日は夜遅くまで、ミエの叫び声とムンクの鳴き声が響き渡っていた・・。
[16歳、ファーストキスの夜は更けていく・・]
第八十二話③でした。
チョルの狼狽っぷりが・・
小さい頃にミエとからかわれた時も、チョルは叫び声を上げて逃げてましたね。
普段は冷静なチョルですが、ハプニングがあるとこうなっちゃうみたいです
第八十二話④に続きます
ゆらゆら、と天井で光る星が滲む。
というのも、それほどミエが目を血走らせているからであった。
昼間起こった衝撃な出来事により、ミエは到底眠ることなど出来ないでいた。
[その日の夜、ファン・ミエは・・]
[まるで全身がプカプカと浮いているような・・]
脳裏に、もう何十回と巡らせた場面がプレイバックする。
「ぬわぁぁぁ!!いやいやいや!!」
ミエは叫びながらガバッと身を起こした。
ドアの向こうで母親が「うるさいわよ」と怒っているが、それどころではない。
汗がとめどなく流れてくる。
「うわあああ!!違う違う違う違う!!」「何が?」
「あんた寝ないなら勉強しなさいよ!」
ミエはしばらく母とそんなやりとりを繰り返した。
昼間起こった出来事に、脳がまったく対応できていないのだ・・。
<幻想と現実>
[キス?]
それは大人の響き。
美女と野獣のクライマックスで披露されたそれを、小学生だったミエは見せてもらえなかった。
だからそれはどこか遠い世界のお伽話の中の出来事のようなものだと思っていた。
[いつかするだろうな]、と漠然と感じてはいたけれど。
少し大きくなってくると、友達らがにわかにそれに興味を持った。
その群れの中にいたミエもまた、その情報に触れながら育つ。
[小さい頃から、耳から入ってくる情報に踊らされてきた人生なので]
[高校に入ったら彼氏ができるかもしれないし] きっと背が伸びてるはず
[だったらファーストキスは・・]
大学生になった”大人”の自分が、お伽話の中のそれにようやく出会うのだ。
[こんな風に・・]
[ラブラブな・・]
[ラブ・・]
[ラ・・]
ふわふわと温かいその愛の中にある”ファーストキス”が、まるでシャボン玉のように突然消えた。
脳裏に焼き付けられた現実の光景が、ミエの”ファーストキス”のネタばらしをする。
二人きりでもなく、大人でもなく、汚い道路の上で、
目の前にいたのは驚いた顔をしたあいつだった。
「ぬわあああああ!!!!違うっつーに!!」
ミエは”こんなはずじゃなかった”を振り払うように、手近にあった枕をぶん投げた。
ブンッ!
ボンッボンッ!
ボスッボスッボスッボスッボスッ!!
繰り返される奇声と物音に、両親は「何があったのか」とざわめいた。
そしてひとしきり暴れ終えたミエは、バッタリとベッドに倒れ込む。
<私の感想はこうです>
激しい怒りの後は、何だか気分が落ちていく。
そしてその落ちた先で、訳のわからないおかしみが波立った。
ふ・・
そう思って自分を慰めつつ、己を騙してなかったことにしようと思った。
けれどそこまで振り切れていないことなんて、本当は自分が良くわかっている。
・・じゃないよねーーーー!!
[ファン・
衝撃は衝撃だったわけで]
今まで出来事の衝撃でほとんど意識していなかったが、
そこでミエは触れた唇の感触を改めて思い出した。
むにゅっ
なんだか妙な気分だった。
ミエは唇を押さえながら、思いのほか柔らかだったその感触を、もう一度思い出していた・・。
第八十二話②でした。
高校生のミエと、大学生のミエ!!めちゃ可愛いですね
チョル版も見てみたい・・!
第八十二話③に続きます
第八十二話①でした。
時は数十分前に遡る。
コトッ
「チョルの家、誰も電話に出ないや。みんな出かけてるみたい」
パク・ジョンウクは受話器を置いて、ゲーム中のベ・ホンギュに声を掛けた。
ここはホンギュの部屋である。
「別にいーって。新しい友達とやらと遊ぶのに忙しくて、俺の誕生日なんて興味ねーんだろ」
「全く・・子供かって」「はっ!だーれが」
拗ねるホンギュと、ため息をつくジョンウク。
すると、電話が鳴り出した。
「おい、電話だぞ」「お前が出ろよ」
「なんで俺が。ここはお前んちだろ」「そんじゃお前がゲームしといて」
「もしも・・」
「ベ・ホンギュ、このクソ野郎」
聞き覚えのある声だった。
ホンギュは反射的に声の主の名を言い返そうとする。
「あんだぁ?イ・・・」
が、すんでのところで止めた。
ジョンウクに聞かれるとややこしいことになる。
ホンギュは子機を持ったまま、隣室へと移動した。
「おい、イ・インウク。クソゲロ野郎」
「は?何言って・・」
「教えたらもう俺に近寄んじゃねーぞ?キモすぎて吐くからよ」
キャンキャンと吠えるインウクを、ホンギュは小馬鹿にするように言葉を返した。
「は?何言っちゃってんの?先生から俺ら仲良くしろって言われたん忘れたか?
「ガク・テウクがいなきゃなんもできねーくせにな。
その一言で、ホンギュは冷水を浴びたかのようにハッとした。
「お?なにいきなり黙り込んでんだよ、乗る気になったか?」
「それとも実際に会えると思ったらビビったかよ?」
インウクが、意地の悪い笑い方で肩を揺らしている。
ホンギュはジョンウクの方をチラリと窺った。
ジョンウクはホンギュの言いつけ通り、代わりにゲームをやっているようだ。
ホンギュは覚悟を決めた。
「だれがビビるかよ。あの野郎どこにいる?」
じわりじわり、と良くない方向に歯車が回り出していた。
それが勢いづいて回るのは、もう少し先の話・・・。
第八十一話④でした。
こちらは八十一話の最後、+)の後に書かれたエピソードです。
何やら不穏な空気ですね・・
ガクテウクは地方に行ったんじゃなかったのかー?!喧嘩はやめてー!!
受験生なのに・・ヒヤヒヤしますね・・
第八十二話①に続きます