翌日は雲一つ無い晴天であった。
その晴れ渡った青空に、百済中では生徒のどよめきが広がっていた。
「あいたたたたたた!」
校門に立つ先生、必死に身なりを正す生徒達。
抜き打ち服装検査が行われているのだ。
「そこ!きちんと制服を着ろ!今行くから待ってろ!」
「名札、バッジ!正しくつけろ!」
その騒ぎを聞きつけたモ・ジンソプとその友人達は、正門から離れた所で身なりを整えていた。
「あ〜何なんだよ学年主任。抜き打ち検査かよ」
モ・ジンソプはピアスを外しながら、残念そうにこう呟く。
「もったいない・・ピアスかわいいのに」
お気に入りのそのピアスだが、
ポケットにも鞄にも入れておけないとなると、捨てるしか無いのだ。
そんなモ・ジンソプの元に、救いの神が現れた。
ゴキゲンで鼻歌を歌っている。
「あ」
「ミジョンちゃん・・ミヨンちゃん?」
「おっはよ!ちょっとこっちおいで!」
「何何?!モ・ジンソプ?!」
ちょっとお願いがあるんだけど〜〜
何?!
そしてコソコソと、路地の角の方で話をしている・・
・・二人を見ていたのは、なんとキム・チョルだ。
そのなんとも不穏な組み合わせを目にして、思わず片眉が上がる。
二人は依然交渉中だ。
「だからちょっと持っててもらって、あとで俺に返してもらっていいかな?」
「あとでお礼するからさ!お願い〜」
パアッ、と光り輝いて見えるのは、モ・ジンソプの必殺イケメンスマイルだ。
「ね?」「あ・・」
思わずミエが頷きそうになったその時、背後から声がした。
「おい」
「そこで何してんだ?」
立っていたのは、キム・チョルだった。
えっ?とミエは目を丸くする。
「何してんだって聞いてんだ」
チョルは尚も言葉を続けた。
三人の間に、驚きの沈黙が訪れる・・。
<誤解だよ>
ミエは今の状況に頭がついていかない。
え?今私に話しかけてる?学校なのに?
「あぁ」
チョルが同意したので、ミエはすぐに口を噤んだ。
彼がモ・ジンソプを見据える視線は厳しい。
「・・あ」
「え〜っと・・」
ニコニコと笑顔を浮かべて弁解する。
「なんだよキム・チョル〜、怖いんだけど〜。
名前を間違い続けるモ・ジンソプにミエは小さく「違うし」と言うが、
モ・ジンソプは全然聞いていない。
「そんなんじゃなくて、ちょっと頼み事があって話をしてたんだよ」
「あーそっか!お前ヒーロー君だもんなー?
頬に見える傷と心についたそれよりも深い傷を、抉るような言葉をチラつかせる。
モ・ジンソプは自分の前にある道を侵害されるのを、何よりも嫌った。
「まぁそんなのもカッコイイと思うけど〜、だからってこういうのは・・」
その時だった。
パッ!
「それじゃピアスは私が持っていくから!感謝してよ!?
昼休み、手洗い場に持っていくからね!」
「昼食前ね〜!」
モ・ジンソプの手からピアスを奪ったミエは、光の速さで走って行ってしまった。
・・あの子今悪口言った?
「ね?カツアゲじゃなかったでしょ?今服装検査してんだよ」
「なんか俺・・寂しいなぁ・・」
先ほどまではモ・ジンソプを睨んでいたキム・チョルも、さすがに目を逸らすしかなかった。
誤解という借りを一つ、チョルはモ・ジンソプに作ってしまったのだった。
第二十二話④でした。
抜き打ち服装検査!
ミエちゃんはオールクリアでしょうけど、モジンソプ一行は大変そうですね
そして今回は何と言ってもモジンソプを睨むチョルが良かった!!!
根っこのところで優しさが滲み出ちゃう感じですよね。
これは好きになってもしょうがないな!!(勝手にフラグを立てていくスタイル)
第二十三話①に続きます