青リンゴ観察日記

韓国漫画「世紀末青リンゴ学習塾」観察ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

第二十二話④

2021-06-29 | 第二十二話〜第二十四話

翌日は雲一つ無い晴天であった。

その晴れ渡った青空に、百済中では生徒のどよめきが広がっていた。

「あいたたたたたた!」

校門に立つ先生、必死に身なりを正す生徒達。

抜き打ち服装検査が行われているのだ。

「そこ!きちんと制服を着ろ!今行くから待ってろ!」

「名札、バッジ!正しくつけろ!」

その騒ぎを聞きつけたモ・ジンソプとその友人達は、正門から離れた所で身なりを整えていた。

「あ〜何なんだよ学年主任。抜き打ち検査かよ」

「一旦ライター捨てるわ」 「俺らカバンもポケットも探られんじゃね?」
 

モ・ジンソプはピアスを外しながら、残念そうにこう呟く。

「もったいない・・ピアスかわいいのに

お気に入りのそのピアスだが、

ポケットにも鞄にも入れておけないとなると、捨てるしか無いのだ。

そんなモ・ジンソプの元に、救いの神が現れた。

ゴキゲンで鼻歌を歌っている。

「あ」

「ミジョンちゃん・・ミヨンちゃん?」

「私?」
 
 
ミジョンでもミヨンでも無いが、ミエはその声が呼ぶ方へ顔を向けた。
 
そこには再びあのイケメンがいる。

「おっはよ!ちょっとこっちおいで!」 

「何何?!モ・ジンソプ?!」

「何?!何なの?!」「行こ行こ行こ行こ行こ行こ行こ〜♪」
 

ちょっとお願いがあるんだけど〜〜

何?!

そしてコソコソと、路地の角の方で話をしている・・

・・二人を見ていたのは、なんとキム・チョルだ。

そのなんとも不穏な組み合わせを目にして、思わず片眉が上がる。

 

二人は依然交渉中だ。

「だからちょっと持っててもらって、あとで俺に返してもらっていいかな?」

「これ校則違反じゃん!」

「あとでお礼するからさ!お願い〜」

パアッ、と光り輝いて見えるのは、モ・ジンソプの必殺イケメンスマイルだ。

「ね?」「あ・・」

思わずミエが頷きそうになったその時、背後から声がした。

「おい」

 

「そこで何してんだ?」

立っていたのは、キム・チョルだった。

えっ?とミエは目を丸くする。

「何してんだって聞いてんだ」

チョルは尚も言葉を続けた。

三人の間に、驚きの沈黙が訪れる・・。

 

<誤解だよ>

 

ミエは今の状況に頭がついていかない。

え?今私に話しかけてる?学校なのに?

「な・・」「え?俺?」
 

「あぁ」

チョルが同意したので、ミエはすぐに口を噤んだ。

彼がモ・ジンソプを見据える視線は厳しい。

「・・あ」

「え〜っと・・」

路地の隅 小さい女子 チャラ男 という組み合わせを考えて、
 
モ・ジンソプは今の状況の結論に思い至った。

ニコニコと笑顔を浮かべて弁解する。

「なんだよキム・チョル〜、怖いんだけど〜。

俺がこの子からカツアゲでもしてるように見えた?俺ら仲良しだもんね〜?ミソンちゃん!」
 

名前を間違い続けるモ・ジンソプにミエは小さく「違うし」と言うが、

モ・ジンソプは全然聞いていない。

「そんなんじゃなくて、ちょっと頼み事があって話をしてたんだよ」

「頼み事って何の?」
 
淡々と追及を続けるチョルに、モ・ジンソプは若干苛立ち始めた。
 
顔には出ていないが、言葉の端々にその悪意を滲ませる。
 
「え〜?ちょっと気分悪いんだけど。何で突然割り込んでくるの?
 
まさか喧嘩売ってるわけじゃないだろうけど・・二人は知り合い?
 
・・それとも正義の味方とか?」
 

「あーそっか!お前ヒーロー君だもんなー?

高句麗中でもダチ守るためにガク・テウク成敗してさぁ」

頬に見える傷と心についたそれよりも深い傷を、抉るような言葉をチラつかせる。

モ・ジンソプは自分の前にある道を侵害されるのを、何よりも嫌った。

「まぁそんなのもカッコイイと思うけど〜、だからってこういうのは・・」

「それで頼み事ってのは何なんだ?」
 
 
モ・ジンソプがどんなに嫌味を投げつけても、キム・チョルはブレなかった。
 
二人は互いを見据えてジリジリと近づく。

 

その時だった。

 

パッ!

「それじゃピアスは私が持っていくから!感謝してよ!?

昼休み、手洗い場に持っていくからね!」

「昼食前ね〜!」

モ・ジンソプの手からピアスを奪ったミエは、光の速さで走って行ってしまった。

・・あの子今悪口言った?

「ね?カツアゲじゃなかったでしょ?今服装検査してんだよ」

「なんか俺・・寂しいなぁ・・」

先ほどまではモ・ジンソプを睨んでいたキム・チョルも、さすがに目を逸らすしかなかった。

誤解という借りを一つ、チョルはモ・ジンソプに作ってしまったのだった。

 


第二十二話④でした。

抜き打ち服装検査!

ミエちゃんはオールクリアでしょうけど、モジンソプ一行は大変そうですね

そして今回は何と言ってもモジンソプを睨むチョルが良かった!!!

根っこのところで優しさが滲み出ちゃう感じですよね。

これは好きになってもしょうがないな!!(勝手にフラグを立てていくスタイル)

 

第二十三話①に続きます


第二十二話③

2021-06-27 | 第二十二話〜第二十四話

<私を見て>

キイッ、とバスが停まり、同じSクラスの男子が席を立った。

「さようなら・・」

「じゃあね!」

彼は運転手のおじさんに挨拶をしたつもりだったのだが、

突然後部座席に座っているミエが口を開いたものだから、思わず固まってしまった。

バタンッ

「いやまぁ、だからって・・」

ビックリしたのは分かるが、そんなにあからさまに逃げなくても・・。

そんな思いを抱えつつ、バスは夜の道をひた走る。

 

 

「さようなら!」

いつも一番最後に降りる 

ミエが家へと急いでいると、同じようにキム・チョルも自転車で帰宅する所だった。

バッタリ !!

「わ!よく会うね!」

もう驚きはしない・・と青くなったチョルに、ミエが言葉を続ける。

「ねぇチョル・・じゃなくてキム・チョル!」

「学校じゃなかったらいい?!」

「・・え?」

突然の突拍子もないミエの言葉に、思わずチョルは振り返った。

ミエはカバンの紐をギュッと握り締めながら、ずっと考えていたことを言葉にする。

「アンタの気持ちわかるよ!私もからかわれるのめっちゃ嫌!」

「けど、塾では仲良くしても良いでしょ?あそこなら知り合いもいないし!」

「はぁ?いや、その・・」

チョルが思っている前提と、ミエの思っている前提の差がありすぎていた。

けれどミエは怯まない。まるでそれが正解であると言わんばかりに。

「アンタは嫌かもしんないけど、誰に言われたとかじゃなく、

私はアンタと仲良くしたいよ!一緒に勉強もしたいんだよ!」

「私、塾で一人だからさ!」

心を開くように、ミエは両手を下に向ける。

真っ直ぐにチョルのことを見つめながら、自分と、そしてチョルに向かって、

正直な気持ちを届けようと。

「一人はしんどいよ」

「一人はしんどいじゃん、チョル!」

 

二人の心の中にある、同じ気持ちが向かい合う。

二人の頭上には、傾いだ半月が浮かんでいる。

 

<抱き込む>

ミエは再びカバンの紐を強く握った。

強い気持ちを手の先に宿して、そして真っ直ぐにチョルを見ている。

 

 

チョルは暫し沈黙を守っていたが、やがてミエから視線を外すと、

小さく低い声で返事をした。

「うん」

弾かれるように反応するミエ。

「ほんと!?」 「あぁ」

パアッ

ミエは花が咲いたような笑顔で、チョルの元へ駆け出した。

チョルはミエから視線を外したまま、どこか苦い表情をしている。

「本当に?!本当だよね?!」

「私のこと無視しちゃダメだよ!?」

チョルはまだ前提が引っかかっているのだった。

互いに「仲良くすべき」ミエと、互いを「無視するべき」チョルの間には、溝がある。

 

「いや、そもそもどうして俺に・・そんな必要・・」

チャッ

「じゃ、約束ね!」

その溝の向こうから、ミエは小指を出してチョルと繋ごうとする。

いつだって予想の斜め上を行くミエの言動に、

チョルは思わず絶句してしまうのだ。

「お前・・何歳だよ・・」

「なんで?幼稚なことこそ忘れないでしょ?」
 
「そんなことはやらんでいい。つーかお前、ああいうのはやめろよ」
 
「何?何を?」
 

「双眼鏡!」

「あ〜」
 
「あれは一体何してたんだ?一体何なんだ?マジで変態みたいだから止めてくれ!」
 
 
そして二人は先日の「のぞき魔事件」について議論を交わす。

「いや、アンタの部屋見てたんじゃないよ!?飛行機を見てたの、飛行機を!」

「は?何で飛行機なんか見てんだ?どっちにしろ俺の部屋の方向見てたじゃねーか!止めろ!」
 
「アンタ元々あそこの部屋じゃなかったじゃん!とにかく飛行機は見続けるんで!」
 
「はぁぁ?!

「見る前に知らせるならいいでしょ?!」 「はぁ?」

「家帰って!あとでね!」 「あぁ?!何?」

ミエは一方的にそう言うと、走って帰宅してしまった。

「ただいまー!」

すぐに自室に入り、チョルの住む建物の向かいの窓を開ける。

ガラッ

ほどなくして、チョルの部屋の電気も点いた。

「ねぇ!」

窓の外から、ミエが呼び掛ける。

見てみると、双眼鏡を持ったミエがこちらに手を振っている。

「ほら、私もう見てるよ!アンタの部屋は見ないから!飛行機だけ!

こういう風にするならいいでしょ?」
 

「問題なし!ね!?」

ただでは転ばないミエの足掻きに、とうとうチョルも折れた。

カーテンを引きながら、半ばヤケクソでこう言った。

「あぁ、見てろ見てろ!」

「うん!どうせアンタの部屋見えないよ!」

「分かったぁ〜?」と小さくミエの声がする。

廊下では母が、「誰かと電話でもしてるの?」とチョルの声が聞こえたのかそう言っている。

「・・ったく」

「変な奴」

どこか温かな表情で、チョルはミエのことをそう言って微笑った。

 

 

 

ベッドに入ったファン・ミエは、今までのことを思い出していた。

「仲良くしようね!」

 

「ねっ?」

「何だあいつら?そういうことなの?」

「”チョルとミエ”」

 

目の前には、蓄光ステッカーの土星と星がぼんやりと光っている。

それを見ながら、眠る寸前のミエが呟いた。

「うん、ちょっと焦っちゃったな」

「チョルは敏感になってるし、あんなことしちゃダメだよね。失敗失敗。

もう小学生じゃないんだから・・」

「とりあえず学校でアンタはもう一度透明人間だ!チョル!」

二人の距離を縮める最短の方法を思いついたミエは、

満足そうにそのまま眠りについたのだった・・。

 

 

 


第二十二話③でした。

うわーーーー

めっちゃ・・めっちゃ良い展開ーー

真っ直ぐに気持ちを伝えたミエも、それを受け入れたチョルも、なんと尊いのか・・

そしてこの時のチョルのセリフはいわゆる・・

「おもしれー女」ですかね 

*少女漫画界でこう言われると恋が始まるフラグ・・

 

ここから何が動き出すのか、本当楽しみですね〜〜

 

第二十二話④に続きます


第二十二話②

2021-06-25 | 第二十二話〜第二十四話

「さようなら!」

塾が終わると、もう空はとっぷりと暮れていた。

教室から塾生達がゾロゾロと出て、エレベーターの前に行列が出来る。

ミエはその列から外れて、階段で一階まで降りた。

急いで外に出ると、すでにそこにキム・チョルの姿があった。

Sクラスで一緒の二人と共に歩いている。

 

不意に見えた横顔で、キム・チョルが微笑んでいるのが窺えた。

あ・・と口ごもりながら、ミエはその顔から目が離せなかった。

 

 

<試してみたい>

 

塾のバスに揺られながら、ミエは先ほどのことを思い出していた。

とあることを室長さんの所に聞きに行ったのだ。

 

「進度?」

「AクラスとSクラスは成績も進度も大した違いはないよ。

Aクラスの定員がいっぱいだからSクラスに行ってもらったんだ」

「BクラスとCクラスは少し遅めだけど、学校の進度よりは進んでいるよ。

Sクラスで何かありましたか?クラス変えましょうか?」
 

「気にせず言ってください」 「あ・・」

そう言われて、ミエは口ごもった。

脳裏にキム・チョルの姿が浮かぶ。

「あ・・いえ、大丈夫です!」 「そうですか」
 
「あの子達ちょっと変わってるだろう?けどみんな親切だからすぐ仲良くなれると思うよ!」
 
「ハイ・・」
 
そうしてミエは部屋を出た。
 
そのことを思い出しながら、窓の外を流れる風景を目に映している。
 
 
ミエは、キム・チョルのことを考えていた。
 
「ガク・テウクは転校したし、あいつらだってもう何もできねーって」
 

「大魔王が転校して来たぞーっ!」

「ガク・テウクを半殺しにしたって」

有名な不良を半殺しにしたとして、鳴り物入りで転校して来た”大魔王”。

それは幼い頃知り合った、キム・チョルだった。

夜のゴミ捨て場で、泣いているような姿を見た。

「問題起こさないって言ったのに」 「いつか事件起こすんじゃない?」

本人とその意思が、駆け足で広まっていく噂話と乖離していく。

「大人しくしてようぜ、卒業までだけでも。頼む」

友人達といる時に見せた微笑みを、一体何人が知っているだろう。

学校ではこんなこともあった。

「サ、サッカークラブ入らない?」 「いや」

心を開かず、目も合わせず、ただ存在を殺して生きている。

ミエの隣の席に座るのは、そんな”百済中でのキム・チョル”だ。

[キム・チョルは幼い時よりさらに難しい少年になった]

[ファン・ミエは突然変な場所に一人放り出されたような気がしていたが]

[ファン・ミエには分かっていた]

まぁ、足掻いたらどうにかなるんじゃない?

[・・じゃないのか?]

そしてミエはバスに揺られながら、一人決意を固めていた。

 

 


第二十二話②でした。

おお!ちょい微笑みのチョル!

チョルくんが息をつける場所があって良かったです

そして次回、ミエちゃんの本領発揮が見られますよ〜

 

第二十二話③に続きます

 

 


第二十二話①

2021-06-23 | 第二十二話〜第二十四話

階段で下に降りると、すぐに授業が始まった。

 

 

<私 一人?>

再びSクラス。

初日、確か隣の席になったあの子はこう言っていた。

「私はチャ・ヨンヒ!これから仲良くしような?」

けれど今日、彼女は 来ていない・・。

となると、Sクラスの男女比率は開くばかりである。

・・女子が私入れて二人しかいない

チラ、とミエはもう一人の女子の方へ視線を走らせた。

新羅中のその子には、授業開始前に声を掛けたのだが・・。

「こんにちは!」 「・・・」

先ほど挨拶したのに無視された のである。

あの子・・なんていうかちょっと・・変わってる・・

というわけなので、ミエは一人で勉学に励むしかないのだった。

 

<私だけ?>

「はい、問題集広げて。進みますよー」
 

「次のページ!」

学校とはまるで違う授業進度に、ミエはついて行くのがやっとである。

[実のところファン・ミエは、塾なんて無駄なんじゃないかと今まで少し思っていたが、]
 
自分なりに頑張って勉強したら、高校もなんとかなるんじゃない?
 

[いざ塾に通うことになったら・・]

毎日4教科 
 
重要科目の問題集1教科あたり1X万ウォン
 
塾オリジナルの応用問題のプリントも追加
 
進度は完全に教科書の最後の方
 
「こりゃ何ぞや?!分厚っ!なんて書いてあるの?暗号??」
 

今まで自分のペースで勉強してきたミエにとって、塾の課題量は膨大だった。

こんなにも大変ならば、みんなも同じように苦労してるに違いない。

バッ!バッ!

そう思いながら周りを見るも・・。

みんな黙々と

コツコツ勉強中

・・なんと、皆当たり前の顔をしてこなしている。

これは本気にならないとマズイ。

ミエは全身全霊を傾けて授業に身を入れた。

「土工の順序は、通常土地削り、搭載、運搬、土積み、確約結末の順序で行われて・・」

普段なら居眠りをしてしまうような内容にも、ミエは必死に食らいついていた。

頭脳フル稼働 
耳フル開放 
とにかく頭に叩き込もうという意思

ミエは前に座るチョルの背中を見ながら、半信半疑でこう思う。

あ、あの子は全部理解してんの?
 
去年引っ越して来たけどその間も塾には通って・・?

うううう・・・!

 

<本当に?>

 

授業が終わると、脳内パンク寸前のミエの元に宿題が配られた。

「宿題のプリント後ろ回して」

「来週までに全部やって来てね」

?!こ、こりゃまた何ぞや・・

うわあああああ

 

膨大な量の課題、早すぎる進度、そして配られた大量の宿題・・。

ミエはキャパオーバーのあまり、その場で俯してしまった。

涙の池が出来ている。

「飲み物選び行こーぜ!」

「・・一緒に勉強しヨ?」 「嫌」 「そっか・・」

頼みの綱の唯一の女子にも振られ、見事なまでに落ち込むミエ。

そんなミエを見て、面白がったベ・ホンギュが言った。

「ぷはは!大変そうだな新人!ファイティン!!」

 

「泣くか?w」

[苦しむ中三] のミエのことを、チョルがチラッと見たことをミエは知らない。

チョルもまた、ミエが泣いてなどおらずメラメラと燃えていたことを知らない・・。

ムッカ・・!全部解いてやるぅぅぅ

[ミエには負けん気だけはあったのである]

ミエは一人、そんな秘めた闘志を燃やしていた・・。

 


第二十二話①でした。

学校で勉強してその後塾でも鬼勉して・・

キャパオーバーになっちゃうミエちゃんの気持ち分かるわ〜〜

受験ナシの地域ではしなくていい苦労かと思うと、もどかしいでしょうね

ファイティン!!

 

第二十二話②に続きます


第二十一話④

2021-06-21 | 第十九話〜第二十一話

ミエは塾へと向かうバスの中で、再び五年前の夏の夢を見た。

チョルのことを呼び捨てにしたら、鳥肌が立つから止めろと言われた思い出の続きだ。

「ちょっとアンタ!」

「名前呼ぶことだってあるじゃん!学校ではどーしてるの?!

女子達はアンタに話しかけない?!」
 
「なんで俺が女と話さなきゃなんねーんだよ!」

「はぁ?!意味わからん!アンタ友達いる?!」

「なんだと?!」

「当たり前だろ!お前こそ意味わからん!!」

二人の怒号で、夏の空に鳥が羽ばたいて行く。

そんな苦い思い出が、夢となって現れたのだった。

はっ

ほど良いざわめきと単調な揺れで、つい眠ってしまっていたミエだった。

塾行きのバスは、それなりの時間を掛けて目的地へと連れて行く。

はぁ・・

深い息を吐いて見上げると、変わらぬ風景が目の前にあった。

「うっ、お腹がシクシクする」

不意に腹痛を覚えたミエは、そのままビルの中にあるトイレへと駆け込んだ。

人がいない一番上のトイレまで行ったミエは、

用を足し終えると急いで階段を降りようと駆ける。

その時だった。

「止めろ」

それは聞き覚えのある声だった。キム・チョルだ。

誰かと話している。

「俺がイ・インウクと話してみっから」「いや、事を大きくするなよ」

「誤解があんなら解けよ!

ガク・テウクは転校したし、あいつらだってもう何もできねーって」
 
Sクラスに居た男子二人、そしてキム・チョルが話しているのだった。
 
そしてその内容は何やら訳ありだ。

「ベ・ホンギュ、

お前がイ・インウク達がタバコ吸ってるとこ学年主任に言ったこと差し引いても、
 
イ・インウクはチョルがお前使って復讐しようとしてるとは思わないよ」

「いや、あの野郎がチョルの新しい家の近くに偶然いただけかもしんねーじゃん。

チョルには迷惑かけねーようにするから、俺行って確認してくるよ」
 
「ベ・ホンギュ」
 
「あいつらが俺を疑ってんなら俺のとこ来るはずだし、変にチョルのとこには・・」

「あいつらがお前に話すはずがねぇ」

ズバッと言ったな・・

「ベ・ホンギュ、

気持ちは分かるけど、もう終わったことだ。
 
またジョンウクまで巻き込んで、止めさせなきゃなんねーか?」
 

「大人しくしてようぜ。卒業までだけでも」

キム・チョルはベ・ホンギュに向かって静かにそう言うと、最後にこう口にした。

「頼む」

あ・・

キム・チョルと友人達の様々な事情を耳にしてしまったミエは、

不意に顔を上げた彼と目が合った。

「!」

あっ、と声を出したミエに、男子は穏やかに挨拶する。

「こんにちは」

「こ、こんにちは」

思わずバッと顔を上げたチョル達であったが、

相手がミエだと分かるとチョルはあから様に顔をしかめた。

「行くぞ。もう授業始まる」 「マジで?俺も行く!」

「君も急いで降りておいで。遅刻するよ」 「う、うん!」

階段を降りながら、彼らの後ろ姿を見てミエは思う。

・・あの三人は高句麗中で一緒だったのかな?

話の内容もそうだが、友人と一緒にいるチョルを見たのは初めてだった。

幼い頃も、今現在も。

友達いるんじゃん

そう思いながら、教室へと急いだのだった。

 


第二十一話④でした。

今回は二十二話の冒頭とくっつけてありますので、あしからず・・

本当、チョルくん友達居たんですね!(失礼)

ベホンギュくんと、ジョンウクくんと言うんですね彼らは。

イ・インウクは前にチョルの家の近くにいた人物ですね。

第十四話①より

彼がチョルの宿敵(?)ガク・テウクの腰巾着で、また何かを企んでいるらしい、と。

何があったのか、知りたいような怖いようなですね・・

それに今後ミエちゃんが絡んでくるのか?モジンソプは?あのかわい子ちゃんは?と

先が楽しみです〜〜〜ワハハ

 

第二十二話①に続きます