ミエが怒りの縄跳びを飛んでいる頃、
チョルは一人自転車を漕いでいた。
キイッ、と自転車を止めて見入ったのは、
今はもう自分の捨てた物も無くなったゴミ捨て場だった。
[そしてキム・チョルも、ゴミ捨て場を見て何かを思い出す]
[数日前 始業式の前日、断捨離をした日]
ウイイン、と掃除機の音がうるさい。
断捨離も含めた大掃除は、もう終盤だ。
「掃除終わり!」
出て来たゴミを見ながら、家族がワイワイと会話していた。
「ふぅ、これで全部終わりだな!一日仕事だった」
それらをじっと見つめるチョルと、父、そして妹。
そこに騒がしい姉が加わる。
「いいねぇみんなで掃除してくれて家具も変えてもらって〜〜」
「スンジョン、アンタの部屋も掃除したでしょ」
そして笑顔の母も。
「チョルはもう受験勉強頑張るんだもんね?」「全校一位取るってか?」
女性陣にもみくちゃにされながら、チョルはそこを抜け出し靴を履く。
かかとを潰しながら。
「どこ行くん?」「ゴミ捨ててくる」「まだ寒いよ!上着着て行きなさい」
段ボールを抱えたチョルは、ゴミ捨て場まで歩いて行く。
二月の終わりの、まだ寒さの残る夜。
ゴミ捨て場はしんとしていた。
空には丸い月。
[いつもと同じ1日だった]
ドン!
[もう必要ないものを捨てるだけなのに]
段ボールに詰め込まれた、幼い頃使っていたその物達は、
色々な記憶とつながっている。
生まれ育った場所の風景や、温度や、匂い。
家族が揃った時の賑やかさや、笑顔や、感情。
幸せの記憶・・。
胸を締め付ける感情に従って、チョルはその場に蹲み込んだ。
ズッ
その時だった。
「ワン!」
突然聞こえた犬の鳴き声に顔を上げると、
そこに誰かが立っていたのだ。
「あ・・あの・・」
ファン・ミエ 。
彼女は何も言わないチョルの元へ近づいてくる。
「あれ?なんか・・」
「目が・・・」
暗くてピントが合いづらかったせいか、彼女が目の前に来るまで何も考えられなかった。
その女の子は目を丸くさせながら、まっすぐにチョルの目を覗き込む。
「悲しいの?」
突如浮かんで来た昔の記憶の中のミエが、チョルを現実に引き戻す。
「あっ」
ズベッ
「大丈夫?!」
胸と顔が恥ずかしさでかあっと熱くなる。
こんな感情を、チョルは何度も味わったことを思い出した。
「ミエちゃんと仲良くしろって言っただろ!」
[あいつの前だと・・]
チョルはミエの顔も見れずに、大股でその場を後にする。
胸の中はグチャグチャだ。
「・・んだよ」
「んだよ、クソッ・・」
「ファン・ミエ ・・!」
・・あいつの前だといつも恥ずいことばっか起こる!!
恥を拭うように、胸の中のグチャグチャを振り払うように、チョルは走った。
「うわーーっ・・!!」
チョルは心の中で、誰に言うでもなく感情のままに不平を鳴らした。
[マジで恥ずい死ぬほど恥ずい]
[なんでよりによってここに引っ越して来たんだ]
「あああああ!!!」
[16歳]
[恥は死ぬより耐えがたい]
あの日出ていた丸い月が、再び巡ってまた満ちる。
解けないループのように、また欠けて満ちる月のように、
チョルの心を廻り続ける。
[些細なことで胸はザワザワする]
[無駄に悩んで、感情は行ったり来たり]
[ザワザワと、行ったり来たり]
胸のザワザワとグチャグチャを抱えながら、二人は反対方向へと歩いて行ったのだった。
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第七話④でした。
おお・・!チョルくんがそんなことを思っていたとは・・
ミエのことが憎くて睨んでたんでなく、とにかく恥ずかしいところばかり見せちゃって
そうするしかなかったって感じ・・なのかな
そして初めて出て来た妹が可愛いですね〜〜
ここの場面で言ってる「テ◯タビーズは捨てちゃダメ」ですが、
「テレタビーズ」とは
このキャラクターらしいです↓
元はイギリスのキャラらしいですが、、知らなかった。。
知ってる方いらっしゃいますかね!?
またコメ欄にてお待ちしております・・
第八話①へと続きます