<非常事態>
ミエたちは言わずもがな非常事態だが、この人もまたそうであった。
これは数時間前のチョル。
ガク・テウクだと確信した人物を追いかけて、
ようやく捕まえたと思ったのに・・・。
結局勘違いの人違いで、チョルはペコペコと謝り倒した。
相手はチョルのことを非常に怖がって、ダッシュで逃げていってしまった。
申し訳ないやら恥ずかしいやら虚しいやらで、言葉もない・・。
「・・・・・」
顔を上げたチョルの目に、街の風景が映る。
ふと、置いてきた三人のことが気にかかった。しかし今更合流する気にもなれなかった。
「どこ行くの〜?」と聞いてくるミエの姿が浮かんだけれども。
まぁ・・もう行っただろ・・
はぁ・・・・
上がった息が戻るにつれて、感情より理性が強まるにつれて、心が重たく凭れるようだ。
重たい足取りで、チョルはそのまま帰宅し、やがて塾に着いた。
そこで、この非常事態である。
[瞬間、チョルは一時停止したが]
固まったチョルだが、じわじわと点と点が繋がるような感覚を覚えた。
「あんた・・メモ・・見てないの?」
「メモ?なんのメモ?」
まずい、そう思った時には立ち上がっていた。
改めて、自分の言動とミエの返答を振り返ってみるチョル。
「ホンギュの誕プレ買いに行くんだけど?」「あ〜そうですよね〜あの猿の誕生日ですもんね〜」
「ホンギュのプレゼント見てんだ」「あ〜幸せですこと〜べ・モンキーは〜」
もしかしてずっと匂わせてたのか?!
「ホンギュの誕生日」を口にするたび、どこか皮肉な反応をするミエが思い出された。
そういえばプリクラを渡すときもこう言っていた。
「じゃああんたが払ってよ。私のプレゼントに」
名札を渡したときも、やたら「プレゼント」にこだわる言い方をしていた。
「これはプレゼントじゃないからね?」
けれどそれを受け取った時のミエの顔が、すごく、すごく嬉しそうだったのだ——・・・。
襲ってくる罪悪感に押しつぶされるより先に、
使命感にかられたチョルはバッ!と後ろを振り返った。
そのまま立ち上がり、ジョン・ソラとコ・テグァンの方へゆっくりと踏み出す。
「え・・何・・・」
「・・店、どこか知ってるか?」
下から見上げると恐ろしい大魔王は、遠慮がちにそう言った。
ジョン・ソラがはぁっとため息に似た息を吐く。
「びっくりしただろが」
「店だって?」
コ・テグァンはそう言ってメガネのツルをクイッと上げた。
そう、それはテグァンのテリトリー・・!
第九十四話①でした。
おお・・!そこに相談するのねチョル!
それであの珍しい2ショットが出来上がるんだww
チョルサイドも先が楽しみです!
第九十四話②に続きます