青リンゴ観察日記

韓国漫画「世紀末青リンゴ学習塾」観察ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

第二十六話③

2021-07-31 | 第二十五話〜第二十七話

その日の夜。

ミエは天井でぼんやりと光る星と月のシールを見ていた。

昼間スンジョン姉さんに言及されたチョルのスニーカーは、まだタンスの上。

脳裏に、五年前のキム・チョルが浮かぶ。

ミエは、キム家がこっちに引っ越して来た時に、

チョルの母親から聞いた話を思い出していた。

「チョルは体が大きいから、小さい時からずっと周りから言われて、

顔の傷を見て誤解する人も多かったんです。治療しても消せなくて」
 
「それでも高句麗中は楽しく通ってたんだけど、
 
同じ学校の子が静かに暮らしてたチョルをからかって来て・・」
 
「チョルは強制的に転校させられたわけじゃないんだけど、
 
その子の親御さんが自分の息子も殴られたのに、うちの子だけ転校させるわけにはいかないって言い張られて・・。
 
うちの主人とあちらのご主人がお互い告訴するだの殴り合うだの、騒動になってしまって。
 
それを見て、高句麗中には居たくないとチョルの方から転校の話を出したんです
 
百済中は楽しく通えているのかしら・・」
 

「ますます下を向いて過ごしてるんじゃないかしら」

キム・チョルが置かれた状況と、彼の真意、そして今の彼自身を、ミエはぼんやりと想像してみた。

昼間聞いた、スンジョン姉さんからの話が蘇る。

「ミエ、一つ教えてあげよっか?」

「あの子の顔の傷、自分一人でただ転んで出来た傷なんだ」

「そしたら大魔王になっちゃった」

偶然と因果が重なって、現実は思いもよらぬ方向へと歩き出す。

百済中での一歩だって、”大魔王”というレッテルが勝手に歩き出した。

「おい!大魔王が転校して来たぞ!」「うおっヤバイ!」「バカでけーぞ!」

「うわ、目つきヤバイね」

「目の下の傷、高句麗中の時に集団で喧嘩したときに出来たやつらしいよ」
 
群衆の中から飛び抜けたチョルは、まるで出る杭打たれるかのように噂話に殺される。
 
見た目のせいで、噂のせいで、ねじ曲がった真実のせいで、”大魔王”は独り歩きをして行く。
 
昼間の出来事だってそうだった。
 
「なんだ学生かよ。いや顔見ろよ、傷がヤクザ者・・」

たった一筋、目の下に傷があるだけで、怖がられ、見下され、誤解され——・・。

ミエが初めてその傷を近くで見たのは、あの3月1日のことだった。

擦り傷のできた頬に触ろうとしたミエの手を、

咄嗟にチョルは振り払った。

そんなキム・チョルが、耐え切った先に向かうのは——・・。

大魔王は住んでた場所に戻ろうとしている

広い広い空の下、どこまでも緑が広がっている。

ただただ無邪気でいられたあの空の下で、二人はくるくると踊っていた。

「ジャンプしながら〜横に〜ステップ〜」

「くるくる〜」

グルーッ

二人は手を繋いだまま、スピードを上げてぐるぐると回る。

「うわあああ!」

強い遠心力が二人の外側を引っ張って、やがて繋いでいた手はパッと離れた。

ドサッ

ぐわんと回る目の先にあったのは、青く抜けるような空だ。

小さく、飛行機が飛んでいた。

 

サンバイザーが外れた少年チョルは、眩しそうに目を細める。

「はぁ・・はぁ・・」

まだあどけない、傷もない、綺麗なものしか知らない二人。

隣に転がっているミエが言った。

「ねぇ、アンタも面白かったでしょ?!」

「は・・」

「マジで変な奴・・」

そう言って口元を綻ばせるチョルを、爽やかな風が包んだ。

寝転んだ草原は温かく、幾つもの葉が青い空に吸い込まれて行った——・・。

 

 


第二十六話③でした。

うう・・なんか切ないですね

どんどん心を閉ざして行ってしまったチョルくんの悲しさが・・。

お母さんもすごく心配してるけど、そのお母さんに心配かけさせたくなくてますます無口になってしまうチョル、

の図がめちゃせつないですね・・。

うう・・

 

第二十六話④に続きます

 

 


第二十六話②

2021-07-29 | 第二十五話〜第二十七話

ミエが皆のアイスクリームを選んでいると、スンジョン姉さんが告白した。

「実は、私見たんだよね」「えっ?何を?」

「前に、ゴミ捨て場に二人でいるとこ」

「!!」

「タバコ吸いに外出たら、チョルが転んだりアンタらがわちゃわちゃしてんの見たの。超ウケた

忘れもしない3月1日、あの日の夜に、なんとスンジョン姉さんもゴミ捨て場に居たと言うのだ。

「泣いてんの?!」

ミエは、チョルに言われた”約束”のことを思い出していた。

「・・あの日、ゴミ捨て場で俺を見たこと」

「ただ喋らないでほしい・・そうしてくれるか?」

 

チョルの家で試験勉強をした時、念を押されていたのに。

どうしたらいいのか分からないミエは、ただただ動揺した。

「あ・・それは・・!あ・・あの・・」

スンジョンはそれも折り込み済みのようで、ミエが言葉を選ぶ前にこう言う。

「別に言ったりしないから、アンタも知らないフリしててよ。

チョルが知ったらショック受けるでしょ」
 

「・・どっちにしろ私も親も、大体分かってるからさ」

そしてスンジョン姉さんは、弟のことをゆっくりと話し出した。

「あの子はこれ以上、波風立てるような話は絶対にしない」

「あのことのせいであの子は黙りがちになったし、変なお願いをしても肯くことしかしなくなった。

私が何か言えば、あの子はもっと黙り込んでしまう」

 

下を向いて、心を殺して、ずっと何かに耐え続けているような弟を見るのは、

姉としては辛い。

スンジョンはそういった思いを、昔からずっと弟に対して感じて来た——。

「小さい頃からチョルは、大きな体と傷のせいでたくさん誤解されたんだ。

父さんの仕事の都合上転校もたくさんしたし、そのせいでだんだん口数も少なくなって、
 
もう家族にも何も言わなくなっちゃって」
 
 
「一年耐えて田舎に戻れば、全部解決できんのかな?」

前を向きながらそう話すスンジョン姉さんの横顔を、ミエは目を丸くして見ていた。

その真意を、心のアンテナでキャッチしながら。

スンジョンがミエにこう聞いた。

「アンタはどう思う?あの子のこと理解できる?」
 
「え?あ・・うーん・・」

「・・・・」

考え込んで黙り込むミエを、スンジョンは温かな表情で見守っていた。

視線の先に、家族の中に佇むチョルの後ろ姿が見える。

その背中を、ミエは今までとは少し違う気持ちで見つめている——。

「ねぇ、ミエ」

「一つ教えてあげよっか?」 「? はい!」

スンジョンはそう言って、ミエを自分の方に引き寄せた。

こっちこっち おお?

ヒソ・・

スンジョンはチョルの”秘密”を一つ、ミエに打ち明けた。

「呆れたでしょ?早く行こ。アイス食べよう」

少し憂いを含んで見えるその横顔を、ミエは見つめていた。

皆の前に出ると、いつものスンジョン姉さんに戻っていたけれど。

「はーいデザートですよ〜!」「あたしキャンディーバー!」

「・・・」

右側から見たチョルの横顔。目の下の傷が目立つ。

ミエは先ほど打ち明けられた”秘密”を思いながら、彼の横顔をじっと見ていた——・・。

 

 

 

 

+)おまけ

「あ〜ったく!」

「ちょっとチョル!

アンタのスニーカー、何でいつも片方しかないの?
 
せっかくお姉ちゃんが買ってあげたのにー・・」
 
無駄にリアクション見たくて何度か怒鳴ってみてる人

スンジョンがチョルに対して怒鳴ったり苛立たせたりするのは、

姉なりの心配の裏返しだったようだ。

もちろんチョルが置いて来たスニーカーの片割れの行方も、スンジョンは知っていた。

「あ、スニーカーはアンタが処分してね?」

いつまでも返せないスニーカーは、ずっとミエの部屋のタンスの上に置いたままだ。

どこか異質なそれはずっと、ミエの心の隅に引っかかっていた———・・。

 


第二十六話②でした。

みんなでお昼食べた後のデザートとしてコンビニでアイスを買う、っていうの新鮮ですね・・!

韓国ではあるあるなのでしょうか?(店にはデザートが置いてないってことなのか??)

 

そしてスンジョン姉さん・・!

いつもチョルをイラッとさせてたのは、姉ゆえの愛だったのですね〜〜!

↑こういうのもきっと、姉の愛(笑)

 

さてスンジョン姉さんが打ち明けた秘密とは・・!?

 

第二十六話③に続きます

 


第二十六話①

2021-07-27 | 第二十五話〜第二十七話

腕の中で、ファン・ミエが目を丸くして自分を見ているーーー・・。

そのことに気がついたキム・チョルは、

今自分がどういう体勢になっているかということにようやく気がついた。

はっ

パッ!

チョルが弾かれたように両手を上げたので、その勢いでミエがグラッと倒れそうになる。

パシッ

・・のをチョルがなんとか止めた。

気まずい表情のチョルと呆然とした顔のミエの間に、しばし沈黙が流れる。

小さくチョルが口を開いた。けれど続く言葉が見つからない。

「あ・・その・・」

ドクン

ミエはゆっくりとチョルの方を見上げる。

その間、心臓がやけに音を立てて跳ねていた。

ドクン ドクン

ドクン ドクン ドクン

一体なぜ鼓動が早鐘を打つのか、まだミエには分からないーーー・・。

 

 

「なんだよぉ〜!びっくりすんじゃん!

驚いたせいで心臓バクバク言ってる!ほら!」

「突然引っ張って何なの?!なんで?!

あの人たちあのまま行かせちゃっていいの?!」
 

ポンポンと疑問をぶつけるミエに、チョルは言い聞かせるように言葉を選んだ。

「ファン・ミエ、

俺に何があっても親や姉ちゃんには何も言うなよ。ゴミ捨て場でのことも・・」
 
 
「なんで?てか何を言っちゃダメなの?」
 
チョルがこだわる”ゴミ捨て場でのこと”が、ミエにはいまいちピンと来なかった。
 
それよりも、先ほどぶつかって来た男二人組のことの方がミエは納得できないでいた。
 
「さっきはあのオッサン達が悪いんじゃん!
 
息子が悪く言われたんだから、早く家族に言うべきだよ!
 
あとゴミ捨て場のことは何なの?そのこと知ったらどうなるっての?」

「とにかく今からでも追いかけて・・」

「・・・・」

チョルは下を向いたまま、怒り気味のミエに自分の気持ちを話した。

「・・俺は、変に問題起こしたくねぇんだ。静かに卒業したい」

「問題?」

自らの生活にあまり起こり得ない、”問題”という言葉に反応したミエ。

自らの生活の身近に転がっている、”問題”について話し始めるチョル。

「俺の考えをお前は理解できねーだろうけど、俺は・・」

「二人で何してんのぉ〜?秘密のハナシ?」

すると、路地の向こうからスンジョン姉さんが現れた。

ミエもチョルも、目を丸くしたり顔を背けたりしている。

「なーんで服が地面に落ちてんのよ?」

「大人達のことは無視ってか?今日は超イジられてたもんね〜私もイジったけどww」

「いえっ!そんなことは!」
 
「ねぇファン・ミエ、アイス買いに行くの付き合ってよ。みんなの分も」
 

「アンタはファニ見てて!」

スンジョン姉さんの指示で、そのままチョルはこの場を去ろうとする。

最後にちら、とミエの方を窺ってから。

「行こ〜」

ミエは恐る恐る聞いてみた。

「もしかしてさっき見てました?」

「え〜?何を〜?」
 
 
嘘か真か、スンジョンはそう言って笑った。
 
そして二人はみんなの分のデザートを買いにコンビニまで歩いたのだった。
 
 

第二十六話①でした。

ミ、ミエちゃんがドキドキしている・・・!

これは、無意識ですが恋心が育ってきてますね〜〜

先に意識するのはミエちゃんが先かな!楽しみに待ちます

二十六話の扉絵はこちら!

まるでダンスを踊っているような二人!

小さい頃の草原でのダンスとつながってますね〜〜

スンキ様、さすがです・・

 

一箇所、細かいクラブ発動!

チョル、右目下の傷が消えるの巻・・

普通に好青年・・!

 

第二十六話②に続きます


第二十五話④

2021-07-25 | 第二十五話〜第二十七話

一瞬、何が起こったか分からなかった。

ミエはゆっくりと顔を上げる。

 

目の前に、真剣な顔をしたチョルがいた。

低く、静かな声でこう言った。

「ダメだ」

「何も言うな」

「知らないフリをしろ」

二人の身体が密着する。

ミエの心臓が、まるで一つの生物のように蠢く。

ドクン ドクン

先ほど、スンジョン姉さんから聞いた話を思い出した。

「中三の一年間、問題を起こさずに全校一位になったら、

もう一度あいつの願いを受け入れることになってる。
 
だから静かに勉強ばっかして暮らしてるんだよ」
 
「願い?」
 

「あの子は田舎に戻ろうとしてるんだ」

 

 

スンジョン姉さんの話と、今目の前でチョルが言った言葉が重なった。

この人はその”願い”を叶えるために、じっと息を殺して耐えているのだ・・・。

ドクン ドクン

心臓の音が大きく聞こえる。

再び、スンジョン姉さんの言葉が反響する。

「あの子は田舎に戻ろうとしてるんだ」

 

サアッ

 

 

その言葉で、思い出す風景があった。

「はぁーー・・」

大きなため息をつく、五年前のキム・チョル。

そんな少年チョルを見て、少女ミエはガミガミと声を荒げた。

「ため息つかないで!遊んでくれるって言ったじゃん!」

「はぁぁぁ〜〜〜」

「運動会の時、フォークダンスやったことない?ほら早く手ぇ出して!」

「はい!」

そう言ってミエは手を差し出した。

少年チョルはまごついている。

「何してんの?早く手出してってば!」

早く!と急かすミエ。

やがて観念したように、チョルはしぶしぶミエのそれに手を乗せた。

「お前のせいでありえねーことしてんぞ」

どこまでも続く草原の中で二人は、互いに手を取って向かい合う。

「こうやって手を握って、始まるんだよ〜」

「横に二歩!」

「もう二歩!」

「腰を持ってクルクル〜」
 
 
キャハハ、とミエが笑う。心から楽しそうに。
 
「こんなんナシだろ」 「アリアリ〜」
 
 
小さなカップルは、たどたどしいステップでダンスを踊る。
 
ミエが体を倒した拍子に、ぐらついて倒れそうになる。
 

「もー!ちゃんとつかんでてよ!」

そんな昔の風景を、まるで白昼夢のようにミエは思い出していた。

 

 

そして今、五年ぶりに身体を沿わせた二人はーー・・

 


第二十五話④でした。

おおう・・身長差〜

昔は大して変わらないのに、今のこの身長差いいですね・・!

草原でダンスを踊る少年チョルと少女ミエ、なんと素敵な思い出なのか・・

 

第二十六話①に続きます


第二十五話③

2021-07-23 | 第二十五話〜第二十七話

和やかな昼食会は続いていた。

今度また田舎に遊びに来るか?と聞くチョルの父親に、

トイレ直ってますか?とミエが聞く。

笑い声が絶えないそのテーブルで、チョルは一人黙って下を向いていた。

 

食事も終わり、大人達は食後のお茶を飲みながら談話をしている。

子供達はというと、ファニの持って来たおはじき(コンギ)でミエが遊んでやっていた。

「ねぇ、ファン・ミエ」 「はい?」

「ミエから見ても、チョルってガリ勉だと思う?」

「んー・・はい!」
 

ミエの正直な答えに、スンジョンは「あはは」と笑う。

小さい頃から変わらないミエに、スンジョンはこんなことを話し出した。

「小さい時に一度会ってるってのはあるけど、アンタは偏見がないね。

まぁ自分から問題を起こす子では絶対ないから。
 
どうしてか分かる?」
 

キョトンとした顔をしたミエに、スンジョンはとある話を教えてくれたーー・・。

 

 

 

 

 

その頃チョルは、一人外に出て新鮮な空気を吸っているところだった。

見上げた薄い青空は、建物や電線に囲まれ切り取られた断片のよう。

頭の中に、

昔飽きるほど見上げた真っ青で広い空が広がっていた。

 

心に負った傷跡は、未だふとした時に疼き出す。

大切にしていた心の一部を、捨てなくてはならなかった。

蓋をして、見ないふりをして、必死に自分に言い聞かせた言葉。

大丈夫、こんなのなんでもない

心の中にいつまでも残っているあの温かい時間を、宝物達を、

自分のせいで、捨てなければならなかった。

「新しく始めるんだ」

父はもう前しか見ていない。

前しか見えないように、後ろからチョルの背中を押さえているーー・・。

 

 

「ははは」

「うわっびっくりした!

おい、なんでそんな所突っ立って・・」

突然、曲がり角を曲がって来た男が、チョルにぶつかった。

声を荒げられ、チョルの目が吊り上がる。

「いや、す・・すみませ・・あ?」

「なんだ学生かよ、謝っちったよ」「いや顔見ろよ、傷がヤクザ者・・」

「いやガキだガキ」

男達はチョルのことを恐れた後、ガキだからとナメて謝らなかった。

何者にもなれないジレンマが、チョルの心を波立てる。

グッ・・

 

すると。

 

「ちょっと!全部聞こえてますけど!今なんて仰いました?!」

なんと、ミエが出て来て男達に啖呵を切り始めたのだ。

「な、何だよ!」

「謝ってから行ったらどうですか!?店の中に大人達みんないますからね!」

「ガタイのいい大人もいますよ!今みんな呼んでー・・」

「ちょっ・・!」

その瞬間、チョルは考えるより早く体が動いた。

ブンッ・・

ガシッ

チラッ

ヒョイッ

トンッ

それは一瞬だった。

チョルが持っていたジャンパーが地面に落ちるーー・・

 

 

 


第二十五話③でした。

ミエがファニちゃんと遊んでいるこちらの場面は・・

↓なんか二人似てるw

コンギノリ、と呼ばれるおはじき遊びだそうです。

おお・・手先の器用さが問われそう・・

韓国の小学生の遊びみたいですね^^

夢中になっているミエが可愛いです

 

第二十五話④に続きます