今日こんなことが

山根一郎の極私的近況・雑感です。職場と実家以外はたいていソロ活です。

ギャンブル依存症の心理

2024年03月22日 | 心理学

大谷選手の通訳・水原一平氏がギャンブルにハマって、負けが6億8千万円に達していた。

ギャンブルで負けが続くと、その負けを一挙に回収しようと、より大胆(ハイリスク・ハイリターン)な賭けに手を出す(その結果、負けの桁数が雪だるま式に増える)ことが行動経済学(人の経済行動を心理学的手法で実験する分野)でも実証されている。
彼の行動は行動経済学の説明通りだ。

ギャンブル依存症は、ギャンブルにおけるリターンしか目に入らない。
言い換えればリスク(損失の可能性)、さらにすでに確定した損失の総計も鈍感になっている。

そして金額の桁が大きくなるほど、金の出入り自体に鈍感になるのも行動経済学で確認されている。

 

通常では、人は損失の方に敏感になっている(行動経済学で「損失回避」という)。
すなわち、1万円得た時より、1万円失った時の方が心に響く(喜びの度合い<ショックの度合い)。

ギャングブルは客観的・積算的には、胴元が得をし、参加者は損をする仕組みだから、
たいていの人は、興味本位に手を出しても、まず損を経験するから、損失回避の心理によって早々に手を引く。
私もその1人で、結局は、宝くじを含めて、ギャンブルに手を出すこと自体が損だと認識している※。

実際、ギャンブル好きに金持ちはいないし、現実の金持ちはギャンブルに手を出さない。
なので、本気で裕福になりたい・資産を形成したい人は、ギャンブルに手を出さないし、
逆にギャンブルにハマっている人は、資産形成が目的ではない。
別の理由だ。

残念ながら、損失回避と矛盾する心理も人に存在する。
宝くじを買った場合に誰もが経験する、結果が出るまでのワクワク感だ。
ほとんどあり得ないリターンの可能性が有る(未決定)状態に固有に感じるあれ。

この固有のワクワク感が、ギャンブルでしか得られないなら、
損を承知でそれにハマっていく(=リターンしか目に入らない)。

同様な現象が、アルコール・万引き・痴漢等の行為にも存在しうる(薬物は少し別)。
すなわち心理的快感の誘惑。
これにハマると、損失回避が二の次になり、上述した一挙の損失回復をすればいいという心理になる。

これを防止するには、損失回避のメンタリティが有効な段階で手を引くのが一番だ。
その段階で下手に儲かったりすると、逆にハマってしまうから要注意。
そのためには、家計(出入り)を細かく認識しているとよい(小さな損に敏感な段階で実行しやすい)。
あるいは行動経済学を勉強するのも、”平気で損する人生”から脱却できるだろう。


※:宝くじを1枚(300円)だけ買うと、たいてい(9/10の確率で)300円丸々損する。10枚(3000円)セットで買うと、損は2700円となる。すなわち損の比率が減った(期待値は同じ)。すると、宝くじをたくさん買うほど、当たる確率は増えるので、損する割合は減っていく※※。この理由で宝くじをたくさん買う人が出てくる。損する金額の桁自体は増えているのに。

※※:この記述について疑義のコメントをいただいたので、この記述が宝くじのコンピュータシミュレーションに基づいていることを右のリンクに示す→年末ジャンボ宝くじの神聖シミュレーション結果

宝くじを100枚買と、1枚買うより当たる確率は確かに100倍になる※※※。
だがこの100倍は、10の-10乗が、10の-8乗になったに過ぎない(小数点以下の微細な変動)。
※※※:この表現は確率論として正しくなかった。サイコロを6回振れば1が出る確率は1/6の6倍=1にならない。1-(当たらない確率**100) という式になる :**は累乗


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6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (通りすがり)
2024-03-22 11:39:12
いつも興味深く拝見させていただいています。

最後の※欄,「宝くじをたくさん買うほど、当たる確率は増えて、損する割合は減っていく」とは言えないのではないでしょうか。

宝くじを300円買って300円当たる可能性が1/10ありますので。
Unknown (山根)
2024-03-22 14:20:59
通りすがりさん、コメントありがとうございます。期待値は1枚買っても10枚買っても同じですが、実現値は10枚買うと必ず300円当たります。じゃあ100枚買うと、3000円当たるだけかということ、300円以外の賞が当たる確率が増えます。でも損する金額も増えます。この記述は、コンピュータシミュレーション結果をもとにしているので、その記事のリンクを本文に追加することにします。
Unknown (h)
2024-03-23 01:17:49
大谷くん潰しが始まったか…というのがこの事件の最初の印象です。
情報規制されて、小出しにしかされていないので詳細は分かりませんが、一般的に考えて、他人名義の口座を自由に扱える訳がありません。
大谷くんを守る為に全てを被るんだろうなと思っています。
私的には、きっかけがなんであれ、大谷くんニュースが減ってくれることを期待しています。
連日のバカ騒ぎには辟易しているので。
(内容と関係なくってすみません)
Unknown (通りすがり)
2024-03-23 09:11:44
ご丁寧にご返信ありがとうございました。元記事のリンクは切れているようでしたが,別のURLでシミュレーションを試すことができました。

私は確率論に詳しくないですが,10回とか100回とかのシミュレーション結果から,「宝くじをたくさん買うほど、当たる確率は増えて、損する割合は減っていく」とは帰結できないように思います。

プログラム等で数百万回試行すれば意味のある数値が取れるでしょうけれど,このシミュレータが使う疑似乱数と,実際の宝くじ当選番号を決定する乱数発生器のシステムは違うので,その場合でもやはり「この疑似乱数では」という前提付で「宝くじをたくさん買うほど、当たる確率は増えて、損する割合は減っていく」という結果しかでないように思われます。
Unknown (山根)
2024-03-23 09:11:45
hさん、コメントありがとうございます。
大谷報道そのものに辟易している人たちはいるはずです。しかも理想像に祭り上げてしまっているので、その反動もいつか来るというわけで。野球への過剰報道の伝統がベースなんでしょうね。
Unknown (山根)
2024-03-23 09:46:03
通りすがりさん、「宝くじをたくさん買うほど」という場合は、買った数を限定しない一般論といえますが、「100枚買うと当たる確率が100倍になる」という表現(この場合は1等が当たることを含意)は、”確率”すなわち度数ではなく”度数の出現率”としては正しくありませんでした。
1回の宝くじでn枚買って、(1等が)当たる確率は、1-(当たらない確率**n)という式になります。

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