今日こんなことが

山根一郎の極私的近況・雑感です。職場と実家以外はたいていソロ活です。

睡眠はどう健康にいいのか:『眠っている間に体の中で何が起こっているのか』

2024年03月23日 | 作品・作家評

睡眠は重要だ、とよく言われる。

ではどういう風に重要なのか。
睡眠をないがしろにするとどうなってしまうのか。

これらについて具体的・医学的に論じたものは意外に少ない。

そこで出たばかりの本書『眠っている間に体の中で何が起こっているのか』(西多昌規 2024 草思社)を読んだ。


著者は精神科医なのだが、ここで紹介される内容は、身体医学の研究結果。
巻末の膨大な参考文献がほとんど海外の医学論文であり、著者の個人的な臨床経験ではなく、
きちんとした身体医学研究のレビュー(概観)にもとづく著作である。

ということで睡眠時の体の状態について、
内分泌系・免疫系・消化器系・循環器系・脳神経系・筋骨格系・泌尿器系・皮膚と、総合病院的に網羅している。

睡眠とは、要するに昼の活動に対する、安息だけでなく整備(修復)作業も兼ねている状態。

自家用車だったら半年か1年ごとの定期点検を、専門分化した整備士たちが毎晩時間をかけてやってくれているのが睡眠だ。
このおかげでわれわれは翌朝から元気に活動できる。

それだけでなく、徐波睡眠(深い睡眠)時の成長ホルモン放出による筋・骨格・皮膚の合成、
そして脳神経の再編による記憶の固定は、覚醒時にはない積極的な働きだ。

睡眠不足による悪影響は、内分泌系・免疫系のアンバランスがベースとなって全身に及び
(ホルモンバランスの乱れ、免疫力の低下)、最終的には皮膚の老化(たるみ、しわ)に達する
※:朝、顔がむくむのは枕が低過ぎるためという。これを繰り返すと”たるみ”に至る。うつぶせ寝はさらに良くない(眼圧にもよくない)。

ただし呼吸器系については、睡眠時の方が脆弱で、その典型が睡眠時無呼吸症候群で、これは筆者も患っているという。
※:睡眠時無呼吸症候群は私も高校生以来かかっていたが、私の場合はレム睡眠中の口呼吸が原因だったので、
寝る前に口にサージカルテープを縦に貼って開口しない措置をした結果、無呼吸から解放された。

健康問題とは直接関係なくても、長い睡眠時間を経てもなぜ空腹にならないのか
(睡眠中は消化活動を促進する副交感神経が優位になるのに)とか、なぜ睡眠中尿が溜まらないのかについても説明されている。


一箇所気になったのは、レム睡眠での夢見の所で、人は悪夢を普通に見ることを前提としている点で、
私自身は少なくとも成人してからは悪夢の記憶はない(幼少時はよく悪夢を見て、夜驚を起こした)。
このブログにも自分の見た夢を記事にすることがあるが悪夢は1つもない。
なので夢≒悪夢という記述は違和感を覚えた(これって私だけだろうか)。

実は精神医学では、うつ病にかかると(成人でも)悪夢を見るという(うつ病は悪夢以外にも睡眠障害を併発)。
穿(うが)ってはなんだが、本書に睡眠時無呼吸症候群の人はうつ病の有病率が高くなると書いてある
(免疫系のサイトカインが関連)。
実際、私はうつ病とは無縁。


では良い眠りとは何か。
それは本書の「あとがき」で語られている。
自分でよく眠れたという感じ(睡眠休養感)があればよいという。
客観的な睡眠時間では計れない。

なぜなら、質のよい睡眠なら、比較的短時間でも満足するし、質の悪い睡眠だと8時間寝ても寝たりないと感じるから。
その睡眠の質は、ノンレム睡眠とレム睡眠の両方にかかっている。
徐波睡眠を含むノンレム睡眠だけが高質な睡眠ではなく、レム睡眠は脳をリフレッシュし、これが短いと寿命も短いという。

私は、目覚まし時計を使わない理想的な生活をほとんど実現しているので(目覚ましを使うのは入試業務の時だけ)、
毎朝自然な目覚めで起きられる。
逆に、本来は趣味であるはずの登山を実行しがたくなっているのは、休日に早起きしたくないから。
ということで山よりも睡眠休養感を優先している。


良い眠りをさらに実行しやすくするには、生活の価値観として睡眠を無駄扱いする発想ではなく、
睡眠こそ有意義という発想がいいかもしれない。

仏教は睡眠を結構敵視し、他の宗教も”不眠”を修行にしている。
その点で参考になるのはヒンズー教の教えかな→睡眠という至福



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