埼玉の観光地って、”川越”以外はなかなか思い浮かばない。
県全体が東京のベッドタウン的位置なので、田畑を潰した新興住宅地ばかりのような気がしてしまう。
そんな中、歩くに値するような街として気になっていたのが、草加。
そう、関東人にとってのせんべいの代名詞・”草加せんべい”の草加だ。
ここは東武スカイツリー線で、埼玉に入ったばかりの所で、越谷や春日部より東京に近い。
そのくせ、(北)千住から始まる日光街道の2番目の宿場だったこともあり、宿場外れの街道の松並木が”草加松原”として残っている。
東京近郊でこんな松並木が残っている所はなく(栃木に行けば、例幣使街道の長い松並木があるが)、国指定名勝になっている。
ということで、晴天の日曜、東武線の急行で北千住から2つめの草加に行った。
まずは駅の西口に出て、地元の鎮守・草加神社にご挨拶に向う。
ここは元は氷川神社だったが、明治になって周囲の神社が合祀されて(特に皇祖でない神を祀る神社は、明治政府によって強制的に整理の対象となった)、改めて草加神社として再出発。
向いが SLのある公園ということもあってか、地元の人たちが次々散歩がてらにやってくる。
ここで売られているお守り(100円)は、パワーストーンが入っていたり、七福神の誰かが入っていたりと工夫されていて、私はパワーストーンのお守りを買った(入っていたのは”ソーダライト”で魔除けの効果があるという)。
さて、目当ての旧日光街道は駅の東口なので、駅に引き返し、
歩く前の腹ごしらえをする。
旅先では全国チェーンではなく地元の店を選ぶことにしているが、
11時半前なので、開いている店が限られ、「ぎょうざの満州」に入る。
ここもチェーン店だが、「山田うどん」と並んで埼玉のソウルフードだからOK。
焼そば+餃子を注文。
ただ、地元に愛されるソウルフードって、観光客があえて賞味するほどでないのも確か。
たとえば、勤務先(名古屋)の学生から聞いた話だが、中学か高校の時、東京から転校してきた級友に、
おいしいラーメンを紹介するということで、名古屋の中高生が愛する「スガキヤ」に連れて行ったところ、その転校生は怒ったそうだ。
名古屋人の”スガキヤ愛”がなみなみならぬことも知っているが、怒る東京人の気持ちもわかる。
駅に戻って「草加市物産・観光情報センター」に行く(観光スポットは東口なのだが、ここは西口にある)。
草加はせんべい以外にも、染め物や革製品などの地場産業があることがわかる(ここで販売されている)。
ここで観光マップをもらう。
東口に出て、まずおせんさん(草加せんべいの伝説の開祖)がせんべいを焼いている像があるのだが、地元の人がその像の向い側に座っているため、写真が撮れない。
観光マップの案内通りに進むと、次は小学校の校舎を使った歴史民俗資料館。
旅先では、まずは鎮守の神社と歴史民俗資料館を訪れることにしている。
前者は挨拶のため、後者は地域の基礎知識を得るため。
元教室の展示室には、草加宿を通った松尾芭蕉に関する資料のほか、旧草加宿のジオラマがある。
草加宿を開いた大川図書(以降、子孫の大川氏が草加の名主)の墓がある東福寺を参り、
旧日光街道に出ると、さっそく草加せんべいの店が並ぶ。
これほど草加せんべいの店があるということは、単なる観光みやげというより、
今でも地元の人たちの嗜好品として愛されているのだろう(今でも手焼きだし)。
宿場の外れから、旧街道は綾瀬川沿いの松並木となる(写真:矢立橋の上から街道の松並木を見下ろす)。
この並木は隣接する車道(現日光街道)に並んだ歩行者専用道路となっているので、江戸時代のままの日光街道を歩いている気分になれる。
この松並木は全部を歩き通す気がしないくらい長いので(それだけ大規模)、2/3で引き返すことにする。
引き返し地点に草加市伝統産業展示室があり、そこで草加せんべいや他の地場産業の品物を買えるのだが、残念なことに2月まで閉館。
これが楽しみだったのに!
草加せんべいが買えないので、代わりに草加せんべいの店が載っているマップをもらって(市内に25件もある)、ここから往路を引き返す。
松並木起点の草加宿芭蕉庵に入ると、地元のせんべい店の品が1枚ずつはいった計8枚の草加せんべいセットがあったのでこれを土産に買う(せんべい店マップを見ても、どこで買ったらいいか判断に迷う)。
あとは旧街道に沿って宿場跡を巡って駅に戻るだけ。
ところが、その途中、首から下げていたLeicaのボディケース(カメラのボディ部分を覆うケース)がなくなっていることに気づいた。
Leica専用の革のボディケースなので、安くはない。
道を歩いている時に、留め具が緩んで落ちたに違いないので、今まで歩いた道を戻る。
すなわち、今日歩いた道を2回通ることになったが、結局、見つからなかった。
実は、カメラを買うたびに、革のボディケースを買うのだが、3度買って、3度なくした。
かくもボディケースはなくしやすい。
なので、どうせ早晩なくすとは思っていたが、一ヶ月もたなかったのは痛い。
かように草加は観光地として歩き甲斐がある地で、地元の手焼きせんべいだけでも迷うほど店が多い。
個人的にいやな思い出がくっついてしまったのは残念だが。
追記:家で食べた土産の草加せんべいは、”名物”の名に恥じず、おいしかった。できたら、せんべいを応用した個性ある地元料理を開発してほしい(せんべいは土産で、それを昼食にしたい)。