ホモ・サピエンスがどのように進化するのか、生物学的なことではなく、社会的にどういう位置を占めるのかという考察だ。
ヒトは神を目指すということを示すようなタイトルだが、最終章ではヒトが不要となる社会を描き出している。
現代の人間には無限の価値があるという考えをパラダイムと言い切るあたりは説得力がある。古代から中世までは善悪の区別をつけるのは神であったが、近代以降は人間こそが善悪の区別をつける主体となったということは同意できる。
そして、ヒトが歴史上求めてきた貧困や飢餓や戦争からの解放が現実のものとなりつつあることも事実で、行きつ戻りつしながらも社会は発展してきた。
神の存在といった人類が共有する価値観が失われた後に、何がヒトを導くことになるのか。人類の存在そのものを計算過程と解釈するような著者の主張が正しいのか判断できない。
こうやって考えること自体が、著者が主張する人間至上主義のパラダイムに捕らわれていることは間違いない。
新しいパラダイムを考えることはヒトが生き延びていくためには必須なのだろう。