あまちゃんの カタコト中文日記

中国・杭州がえりのライター助手、日々のいろいろ。

脚本家・倉本聰の自伝『破れ星、流れた』

2022-09-29 | book


『破れ星、流れた』 倉本聰

「北の国から」「優しい時間」「風のガーデン」など、最近では「やすらぎの郷」…と言わずと知れた脚本家の倉本聰さん。われらも尊敬する大、大、大先生だ。
脚本家は当然エッセイもすばらしいのだが(山田太一しかり、向田邦子しかり)、この自伝は予想以上にすばらしかった。特に戦中・戦後の少年時代。倉本少年の周りで起こる色んなできごとがたまらなく面白い。
「これらの経験&体験がドラマの下地になっていたんだー」
そう思うと合点がいく。

倉本聰さんが一家でクリスチャンだったのは意外だった。
昭和20年の東京。B29が昼夜を問わず来襲するなかで、こんなエピソードが ↓

(抜粋)
僕らはローソクが一本だけ灯る、防空壕の闇の中で、おばあさんとお父さん、お母さんに囲まれ、妹と弟、僕の六人で懸命の大声で讃美歌を唄った。次から次へと讃美歌を唄った。それは時には二重唱となり、初めての曲でも僕は自然に、下のパートを歌えるようになっていた。
 今になって時々ふと考える。
 奇妙なことにあれは僕にとってこれまでの人生で一番倖せな”時間”ではなかったか。
 腹ペコの体で死と向かい合い、明日も未来もなかった筈なのに、両親の愛にどっぷりと抱かれ、声を張り上げて讃美歌を唄った。変な話だがあれ程の幸福感を味わったことは前にも後にも一度もなかった気がするのだ。」


このドラマチックな自伝をドラマ化してほしいくらいだが。今さらご本人が書くとも思えず。だからといって他の脚本家が書くと台無しになりそうなんで、映像化は無理だろう。
今頃、ママちゃんから預かった新聞の切り抜きが出てきて(2回くらいもらってる)↓

やはり、上の讃美歌のシーンが抜粋してあるのでびっくり。

読み終えたあとに、もう一度本編に入る前のプロローグを読んでみた。
最初読んだ時はピンとこなかったのに、今読むとぐっときた。

(抜粋)
おやじの匂いを不思議に覚えている。
 おやじの死んだのは昭和二十七年。僕がまだ高校二年の冬で、日本はまだ敗戦から立ち直れないでいた。
 戦前、羽振りの良かったおやじは、戦争によって一挙に凋落し、借金だけを残して死んだ。
 おやじの遺したものは負債しかなかった。
 永い間ずっとそう考えていた。

 その考えがガラッと変ったのは、三十歳を過ぎて、僕がそこそこ文筆で喰えるようになってからである。
 ある日突然ハッと気づいた。
 たしかにおやじは物質的遺産を殆ど僕らに遺してくれなかった。しかし生まれてから十七歳まで、ともに過ごした歳月の中で、おやじは僕の気づかぬうちに、計り知れない膨大なものを、遺して行ってくれたのではなかったか。それは物質的遺産ではなかったが、十七年の歳月の中で気づかぬうちに沁みこませてもらった金銭には代えられぬ巨額な精神的遺産であった気がする。
 そう気づいたとき、僕は狼狽(うろた)えた。
 そしてその時何故か唐突に、おやじの匂いを思い出したのだ。
 おやじの匂いには枯草の匂いがした。
 枯草と、そして焚火の匂いがした。
 それから原野の闇の匂いがした。


本書には、倉本さんが大河ドラマを降板し→ 北海道へ逃避行? その何年か後に自然と共生する「富良野塾」を開くあたりは書かれていない。

戦前、お父上はひょんなことから、のちに「日本野鳥の会」を創設する中西悟堂(ごどう)氏と兄弟の契りを交わすほどの仲になり、たびたび富士山麓へ野鳥観察へ出かけるのだが。そこに幼い倉本氏も同行、少年はいつしか鳥のさえずりを聞き分けるようになる。この頃の体験によって、倉本氏の”自然愛”は培われ、のちの「富良野塾」へと繋がっているものと思われる。大自然との共生、という意味では家族で疎開した岡山・金光での体験も大きい。

倉本氏は「麻布高-東大出」の秀才、エリートではあるが。生きるか死ぬかの戦争体験や疎開生活を経験した者にしか書けない世界を持っている。
こんな脚本家は以後、現れないかも。

*おまけ*
本書に登場した戦中の品が拙宅にも↓

右)ムギコガシ:戦中、ひたすら食卓に出たのが「ムギコガシ」という代用食。
空腹の身にはこれでもありがたく、当時としては貴重品だった。それがある日ノックせずに父さんの部屋を開けたら、父さんが秘かに隠匿(いんとく)したムギコガシをスプーンで口に入れたところだった。「お父さんがムギコガシをこっそり喰べてる!」「お父さんズルイッ!」(略)ー 父さんはムセた。激しくムセた。父親の権威は一瞬にして消滅した。

左)アミエビ:一家で疎開した岡山・金光町の思い出の味。
裏山を越えて一里ばかり歩くと瀬戸内海が広がり、沙美(さみ)という海水浴場があった。沙美からは時々行商のおばさんが、アミの塩漬けを売りに来てくれた。アミとは小さな小エビのことである。これが滅法おいしくて、僕はおばさんのやって来るのを待った。
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騒ぎすぎ! 低俗なネット記事、多し。

2022-09-27 | 野球
最近の報道、特に低俗なネット記事には困ったもんだ。
たとえば、西武ライオンズ・源田選手の妻(元乃木坂メンバー)のSNSを誹謗中傷していたのが、夫のチームメイト山田選手の妻だったという記事。プロ野球のシーズン終盤の大事な時期に(特に西武はCS進出できるか否か?の瀬戸際)、どうしてこのようなくだらない記事が出るのだろう。ふしぎでしょうがない。
(やめてくれ~と言いつつ、リンク↑ 貼ってしもた)

それより驚いたのは、先日羽田空港で暴行容疑で現行犯逮捕された元ロッテの村田兆治さん(72)。
保安検査場で何度も金属探知機に引っかかり、イライラしたのだろう。あの年代のおじさんは結構融通がきかないからね~。真面目な村田さんはいかにもそんな感じ、容易に目に浮かぶ。
それにしても、何もそこまで大げさに報道しなくてもいいんじゃない? お気の毒だよ。離島の子どもたちに夢を与え続けているヒーローの名に傷がつくやん、などと思っていたら。年上のライターさんも同じようなことを書いていた(←9月25日付のところです)。

      生气= 怒ってます

ちょっとしたことで騒がれるこのご時世。香川照之の一件* も詳細は知らないが報道がエスカレートしているのだろうか。
朝ドラ「ちむどんどん」への批判もドラマレビューの上ならいいが、わざわざネットニュースの見出しにする必要はないと思う。ここまで叩かれると出演者たちが気の毒だ。

*香川照之の一件については、ママちゃん説:「あんな仕事(ホステスなど夜の接待)してたら、ある程度は覚悟してるわな」
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元気な玉鷲⁉︎ 大相撲秋場所 終わる 

2022-09-26 | 大相撲
本音を言うと…優勝決定戦にもつれこみ、できれば高安に初の賜杯を抱かせてあげたかった。高安は今年の3月場所でも優勝決定戦で若隆景に敗れている。つくづく運がない人だね。
あの時(3月場所の千秋楽翌日)は「主人への応援ありがとうございます♡」と気丈にブログを更新していた演歌歌手の杜このみさん(高安妻)も今回は更新せず。というか、このひと月は音沙汰無しだった。(子育てで忙しいのかも。それか、インスタに替えた?)
結果は文句なし、玉鷲の優勝。「優勝の最年長記録・37歳10ヶ月」と年齢のことばっか言われているが、横綱不在&ふがいない大関たち、というまたとないチャンスを見事ものにした。
いまだ声援禁止の国技館(たまに声出す人がいて、注意のアナウンスが流れていた)。声援の代わりに、ファンによる手づくり横断幕やプラカード、応援タオル(力士名)が目立つ。その中で昨日ひときわ目立っていたのは「元気な玉鷲」というプラカードだ。
たしかに”鉄人”と言われる玉鷲はパワフルで元気だ。しかし「元気な玉鷲」という日本語にはどこか違和感をおぼえる。ともに見ていたママちゃんも「なんやおかしいな」「”祝優勝”とか書けばいいのに」。(>それは違う!まだ優勝するかわからないうちに作成しているのだから)。
あとになってボクはふと気づいた。このプラカード、もしや日本にいる玉鷲の同胞・モンゴル人ファンによるものではなかろうか。それでちょっと不自然な日本語になったのかも。いずれにしろ、玉鷲にとっては嬉しい応援であることには違いない。(ケチつけてごめんやで~)

今場所も元横綱・白鵬(宮城野親方)が花道を引き揚げる力士に声をかけ、アドバイスを送る光景をよくみかけた。これ力士にとっちゃ、ありがたいのかor有難迷惑なのかよくわからんが。ある日、白鵬が玉鷲に声をかける光景が映し出された。これをみたボクは「白鵬はモンゴル語で声かけた?それとも日本語?」おそらくモンゴル人同士なので母語であるモンゴル語だろうと推察した。しかしママちゃんにたずねると、「そら日本語やろ」。ふむ、そうとも言える。ここは両国。国技館。しかも場所中なのだから。まあどっちゃでもええか。
では最後に、川柳とそっくりネタを添えて、秋場所の総括といたします。

千秋楽雑感★川柳仕立て
1)若元春さん江。
弟に 聞けよ 三役そろい踏み
・・・若元春が千秋楽恒例の三役そろい踏みを初体験。案の定、ぎこちない動き。ともに土俵に上がった弟・若隆景に事前に聞けばいいのに、そうもいかないんでしょうかね。
2)「朝乃山 十両あがれず いと口惜し
・・・復帰2場所目は幕下で6勝1敗。全勝しないと関取にはなれんとです(涙)。
3)「遠藤が (あの)甥に敗れて 館内しーん
・・・7勝7敗同士の対戦となった「豊昇龍vs遠藤」。なんとしても勝ち越して大関への足掛かりをつけたい関脇・豊昇龍(元横綱・朝青龍の甥)は立ち合いに変化するという姑息?な手段に出て白星、会場をシラケさせた。
4)「(優勝)インタビュー もっとやさしい日本語”で
・・・先場所の優勝インタビューでも感じたこと。先場所Vの逸ノ城も、今場所Vの玉鷲も外国人。インタビューの際、前置きの文言が長くて難解すぎて、答えづらいのだ。こういうインタビューはほんとに難しいな〜と思った次第。

【”どっか似てへん?この2人” 大相撲篇(まとめ)】
1)「玉鷲」 vs 物まねタレント「松村邦洋」
2)「明生」 vs 落語家「桂雀々」
3)横綱「照ノ富士」vs 俳優「斉藤 暁
4)「錦富士」vs  「元垣添の雷親方」
5)大関「御嶽海」vs 西武ライオンズ「山川穂高」
6)「大栄翔」 vs お笑い芸人「ダイアン津田」
7)「一山本」 vs 小結「阿炎」(今場所休場)
いじょー。新ネタ少なくて御免!

きのう、相撲観戦後の夕日。

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祝89歳・ママちゃんは果報者⁉︎ 糸井も(^_-)

2022-09-22 | ママちゃん日記
9月に入り、昔の写真ばっか見ているママちゃん。
懐かしむというよりは早く片づけたい=捨てたいんだろうな。
最近読んだ、曽野綾子さんの本(たとえば『身辺整理、わたしのやり方』)の影響もあるかも。
というか、高齢になると持ち物を極力減らして身辺整理したくなるようだ。うちのボスちゃんでさえ、昔の洋服類を捨て始めているのだから。

しかしちょっと心配だ。以前は見向きもしなかった昔の写真を眺めては、
「この人はもうおらへん。この人も、この人も・・・私以外みんなおらへん」。
母のおばたちなんて、とっくに亡くなっているから無理もない。

老婆にとって最も興味のない写真は、こぼんのパパちゃん(亡き夫)の職場関係の写真だ。
「こんなんいらん」「知らん人ばっかりや」
そらそうかもしれんけど。
「捨てんといてや!」
ボクとしてはまだ捨てないでほしい。そんなに大量にあるわけでもなし、、。

写真を熱心に見るなんて、もしや”お迎え”が近いのを予感しているのかな?
先週まで体調が悪く、ぐったりしていたのもあって、そんなことを考えてしまった。
「はて、今月の誕生日までもつやろか・・・」と悲観的なボスちゃん。

しかし今週に入り、体調が戻ってきた。徒歩数分のスーパーに行けたと聞き、ホッ。
しかし相変わらずゴソゴソと昔の物を出してきて、
こんなものも ↓

母子手帳。
めくって、「出生時間、午前1時40分…」「体重2600何キログラム」などと声を出して読み上げ始めた。
そして「あんたのや、持って帰り」。
うーん、持って帰ったところでなぁ~とボスちゃん。
そのまま置いといてもらうことに。

そして昨日、無事89回目の誕生日を迎えたママちゃん。
大相撲をみながら、
「今日たんじょうびやね。おいつくですかー?」とたずねると、
「しらん!」。プイと新聞に目を落とした。
都合の悪いことは「しらん」のかい!

間を置いて、何度かたずねても同じ反応だった(-_-;)。
補聴器も入れ歯もする気なし。気ままに余生を過ごすママちゃん。あちこち痛かったり、食欲なかったり、寝ててもしんどい日もあるけれど。
ボクらに気にしてもらえて、結構“果報者“ かも?

*おまけ*
昨夜のウィチャットより。

訳)さいきん老母は昔に思いをはせる時間が多い。例えば、①自分の小学校時代の写真をみたり(クラスの集合写真、自分はどこにおる?と探す)②結婚式の仲人をした時の写真を捨てたり(補足:どうやら当時はあまり偉い上司には仲人を頼まなかったようだ) ③母子手帳(赤ちゃんはボス)④きょう玄関のところでボクを見送る母。きょうは彼女の誕生日、89才になった。ボクが「おいくつですか?」と聞くと、「しらん!」。わかったわかった、あなたはこれからもマイペースで生きてってちょうだい。
これには多くの“赞“(ざん=いいね)をいただいた。ある人からは「福如东海,寿比南山(福は東海のごとく、寿は南山のよう)」といういかにも中国らしいメッセージも。

***
最後に昨夜11:30頃の甲子園より ↓

糸井さん、あんたこそほんまに果報もんじゃわ!(引退セレモニー、胴上げ直前のショット) 協力:おっサンTV











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エリザベスの国葬をみる

2022-09-20 | テレビ
昨夜は台風で野球中継もなかったので
夕飯時のおともは…

英国エリザベス女王の国葬とあいなった。最初はそれほど興味がなかったけど、
見始めると・・・

これがいいんだな~

荘厳で美しく、まるで映画をみているような感覚だった。

故人の希望で庭の花を摘んで王冠をあしらったり、バグパイプの演奏があったり。(バグパイプといえば漫画「キャンディ・キャンディ」をおもいだすボスちゃん)

讃美歌もいいな〜 
今日ばかりは”クリスチャン”に憧れたボクであった。
(いじょー)
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