目下、就寝前のお楽しみはこの本。
俳優の塩見三省(本名同じ)による『歌うように伝えたい 人生を中断した私の再生と希望』。
2014年に脳出血で倒れた塩見さん。その翌年にはなんとか仕事に復帰するも、左半身に麻痺が残り、障害者となった。
本書を書くきっかけとなったのは、ドラマで共演した星野源。
「シオミさん、何か書けばいいのに」。
同じように大病を経験した星野源。一冊のエッセイを書くことによって、病に対して一区切り付けられたという。それで友人である塩見さんにも薦めたのだ。
友人の言葉を真剣に受け止めた塩見さんは妻のiPadを譲り受け、つけていた日記をもとにして右手の人差し指一本で一文字ずつ打ち込み始めた。
病のこと、入院生活のこと。リハビリで週に一度、憧れの長嶋茂雄さんと一緒になり、とても励まされたこと。
何よりおもしろいのは、塩見さんの俳優人生だ。若い頃から多くの日本を代表する俳優たちとの出会いがあり、その人たちとのエピソードがなんとも興味深い。たとえば(「おしん」などでも知られる)長岡輝子さんからは朗読を学んだ。同じ劇団の岸田今日子さんには大層可愛がられた。大杉漣さんは20代の頃、阿佐ヶ谷のアトリエでともに演劇と格闘した仲間だ。
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俳優・塩見三省を初めて見たのは、朝ドラ「甘辛しゃん」(NHK)だった。その後「純情きらり」や「あまちゃん」にも出演されていた。これらのドラマに関するエピソードもたっぷりで、朝ドラフリークとしてはたまらない。
最近の塩見さんで覚えているのは、Eテレのドラマ「ハルカの光」(黒島結菜主演)。男性カップルの片割れを演じておられたように記憶している。たしかに歩き方がちょっとおぼつかなかったような? もちろん、このドラマのことにも触れておられる。
大河ドラマ「いだてん」の撮影現場では、リハーサルで今は亡きショーケン(萩原健一)にセリフのタイミングをダメ出しされ、ちょっと焦った?ことなども書かれている。
塩見さんは作品一つ一つに心を込めて向き合い、その後も宝物のように大切にされている。俳優さんというのは演技力はもちろん、人間性が大事なんだとあらためて痛感。あと残り50ページ、今夜もお楽しみは続く...。