今回の訪問は、っていうかVol1の中で記事的に全く触れなかったベラスケスとゴヤに関する薀蓄、と私がこれまでプラド、現地で見た彼らの作品を交えてのご報告。
あ、勿論会期終了前、実物を拝見してのチェックはやっておきたいもの
さて、冒頭の話題は…
本ブログで語るまでもないことですが、スペイン画壇を代表する2人の巨人:
ベラスケス: 1599−1660、スペイン、バロック期の宮廷画家。バロック派として同時代のカラヴァッジョをどう見ていたか、など気になるポイントは多いのですが、ルーベンスとの交流、”2度に渡ったイタリア旅行は画家の作品形成に大きく影響し、それまでの無骨な写実描写と厳しい明暗対比から古典主義と空間表現を取り入れ、 視覚効果を重要視したスペイン絵画独自の写実主義的陰影法を発展させた”は重要なポイントでしょう。
ゴヤ: 1746−1828、それまでのロココ主義から変わるロマン主義の手法で宮廷画家としての地位、人気を得る。
但し、フランス軍進入、自由革命・独立闘争など政治的背景の下、最後はフランスに亡命して人生を終える。
その時代背景を基にした作品群がこれまでも私の心に響いています。
その2人の主な作品ってプラド収蔵ですから、こんな機会に東京でもお目に掛かりたい、とは思う訳です。
そして、今回ベラスケスは2点、ゴヤは彼の部屋に数点、いずれも小品、が来ていましたね。
彼らの紹介のところに添付のそれは、それぞれ、ベラスケスの岳父像、襟のクレープ状のそれが素晴らしく美しい、と外光の中スケッチから起こしたと思われる風景画「ローマ、ヴィラ・メディチの庭園」。恐らく当時としては異色でしょう、
と、ゴヤの肖像画「レイカディア・ソリーリャ」です。これは後述しますが、2年前私が飛ばした?西洋、「着衣のマヤ展」でも来日していたみたいです。
添付は会員向けニュースレターの抜粋で、
ご興味があればクリック、拡大してお読みください。
さて、前回の記事でも言及したのですが、今回のプラド美術館展、その全力を挙げてのものでないのは明らか
Vol1ではクロード・ロランの風景画でも”目玉の2品”が来ていない、と語りましたが、
今回注目のベラスケスとゴヤに関しては、格段語る必要もない位であります…
ベラスケス: ラス・メニーナス、プレダの開城、キリストの磔刑…
ゴヤ: トビアスと大天使ラファエル、裸/着衣のマヤ、カルロス4世の家族、1808年5月3日、プリンシペ・ピオの丘での銃殺、巨人、我が子を喰らうサトゥルヌス(黒い絵)…
どれも、目を閉じれば脳裏に浮かぶ^^;、プラド美術館の至宝です。
Vol1にも書きましたが、tokyoboyは5回位でしょうか、プラドに訪問お機会が有る度にこの2人の部屋へ直行しておりました
何て言って、2013年初頭の「着衣のマヤ」展が東京で開催された時は”まあ、いいや”と回避している私でもあるので、現地では目にも止めない彼らの他の作品が見られた!ということで納得致しましょう。
さて、前回(Vol2)記事(こちら)で”気になった”と言及した作品、
ダーフィット・テニールス(2世)、「老人と手伝い女」:
どうです、滅茶苦茶”怪しい”作品でしょ^^;
恐らく嫌らしく若い女性を口説こうとする爺さんに、それを上の方から奥方か婆さんが見下ろしている…
その他の細部表現も見事です。
彼は1610-90.フランドル地方の画家。
アントワープの画家協会会長にして、オーストリア大公の宮廷画家+コレクション責任者だったそうです。
彼の作品、「レオポルト・ ウィルヘルム大公の画廊」は丁度同時期BUNKAMURAで開催されていたウィーンの美術史美術館コレクション展でも、同企画展で展示されていた幾つかの作品がその画面に見られる=確かにそのころから収蔵のコレクション、と証明する素材として紹介されていました。
この画家を知る切っ掛けとしてもこの訪問は価値があります。
って、下に述べるアメンのところで西洋美術館にこの画家の素晴らしい作品があるのに気が付きました(その記事はこちら)^^;
女性の足の部分にご注目
知っているジャン…
ルイス・メレンデス((Luis Egidio Meléndez)、「静物:風景の中のきいちごの皿…」:
1716年 - 1780年、イタリア、ナポリ生まれで絵の修業のためマドリッドに移住したようです。生前あまり認められず窮乏の内に没したが今日では18世紀スペイン最高の静物画家であると認められている。構成や光の表現の見事さ、個々の対象の質感と量感を捉える卓越した技量が最もありふれた台所の食物を感動的なイメージに変容させている。
とのことで、宮廷画家への道が閉ざされて、依頼無しに描ける静物画に特化していったようです。
ライティング、質感、瑞々しさ…
風景の中、という面白い構図も含めて素晴らしい作品であります。
ビセンテ・???・ゴンザレス(Vicente Palmaroli González)、「手に取るように」:
1834−96、お父さんはイタリア人画家で、その宮廷コレクションの仕事を引き継いだり、国内博、万博で活躍。亡くなる前にマドリッドに移り、このプラド美術館館長を務めたそうです。
ラファエロ前派とも思しきこの作品、今回の企画展出口直前に置かれていました。
ファン・バン・デル・アメン(Juan van der Hamen)、「スモモとサワーチェリーの載った皿」:
今回の三菱一号からのニュースパンフ、冒頭にフィーチャーの画。
会場でも、その透き通った色、光は異彩を放っておりましたが、
1596-1631、”スペイン黄金時代の天才的写実画家”と評される画家。宮廷画家でもあったようです。
2014年には西洋美術館が彼の作品を購入(これも良い作品!2015年9月の訪問記はこちら)、今では常設で見られますので、ご参考まで。