新・日曜炭焼き人の日記

炭遊舎のホームページで書いていた「日曜炭焼き人の日記」を引きついで書いていきます。

CIAのケース・オフィサーとは

2020年06月09日 | 日記

 CIAのケース・オフィサーとはなにをする人か。外国でその国の機密情報を提供してくれる人を探し出し、手なづけ、機密情報を母国に送ることを主たる任務にする人をいう。ターゲットを見つけたら、その人に取り入るのだが、その人が置かれている状況を探り当て、困っている点を察知する。娘が病気だ、親が病気でお金が要る、息子に海外留学させたい、借金苦にあるなどの理由でお金を必要とする人に、そのお金を提供するのと引き換えに国家機密を引き出す。もちろんケース・オフィサー自身は自分の正体をいっさい明かさず、すべてを仮面のままでターゲットとつき合っていく。「私はCIAのスパイだった」というメモワールのタイトルとは裏腹に、本人がスパイ活動をするのでなく、ターゲットにスパイ活動をさせる。
 メモワールの半分あまりを、任務に就くまえの訓練のようすを描くのに費やしている。壮大な規模のサバイバルごっこをする。「ザ・ファーム」と呼ばれる訓練場で、教官も一緒になってサバイバルごっこをする。泥沼で歩行訓練をし、飢えに瀕しながらも任務を遂行し、仮想の敵に銃を向けられても正体を明かさず、偽名でとおし、仮想の敵に逮捕され、辱めを受ける訓練に耐える。ターゲットに選んだ相手とともに豪華な食卓を囲み、ターゲットの弱みをつかむ訓練、現地当局による尾行を察知し、煙に巻く訓練も含まれる。不思議なのは、こうした厳しい訓練中も、土日は休暇で、実家へ帰ることができる点だ。ただし実家や友人たちには自分がCIAで訓練を受けていることを明かしてはいけない。
 著者のリンゼー・モランは、仲間十数人とともに受けたこの訓練を、上位2位で通過した。根っからのスパイ好き女性だった。フルブライト奨学生として行ったブルガリアでロック・クライミングをしていたころに知り合った恋人と別れ、恋い慕い始めたタパス・バーで働く青年ともきっぱり縁を切ってしまうほどスパイになることに憧れていた。不思議な人もいるものだ、と思いながら、CIAの裏側を知りたくて読み進めている。




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