新・日曜炭焼き人の日記

炭遊舎のホームページで書いていた「日曜炭焼き人の日記」を引きついで書いていきます。

「ちょうちょ」は「てふてふ」だったのか

2019年12月31日 | 日記

菅公腰掛けの石
 菅公とは菅原道真のこと。平安時代、宇多天皇にひいきにされた学者で、いまは学問の神さまとして祀られていることはご存じでしょう。その菅公が宇多天皇のお出ましを腰掛けて待ったという石が仁和寺紫宸殿の脇にあります。話し好きな仁和寺の門跡に教わり、見学してきました。
天龍寺
 今回の京都散策は天龍寺も入っています。天井に描かれた龍を見たかったのですが、その建物自体が土曜日曜しか一般公開していないことが分かりました。天龍寺とは「天井に龍が描かれた寺」というのが私の認識です。嵯峨野、嵐山に何度も訪れているにもかかわらず50年近くごぶさたの寺でした。お寺近くにある湯豆腐屋の湯豆腐は絶品でした。

てふてふ
 一緒に歩いていたSくんが、「ちょうちょ」はむかし「てふてふ」といっていた、といいだしました。「なにぃ? そんなはずない」「ちょうちょ」はむかしから「ちょうちょ」で表記法が変わっただけではないか、と私は主張しましたが、残念ながらそれを証明する資料がありません。帰宅して日葡辞書を開いてみました。1600年前後の京都界隈のことばをポルトガル人宣教師たちが収録し、ローマ字表記したその辞書には、Cho(oの上に山形の記号がつき、伸ばす音であることを記す)が出ています。つまり「ちょう」という音はこの400年あまり変わっていないことが証明されています。語釈欄はborboleta(蝶)と書いてあります。意味も変わっていません。「ちょうちょう」または「ちょうちょ」と音を重ねていっているのは「め」を「おめめ」、「て」を「おてて」と重ねているのと同類の趣向でしょう。

 では、よいお歳をお迎えください。




フランク・ウェルズ、ディズニーを再建した人

2019年12月23日 | 日記

 東京ディズニーランドが開園した1983年春、ディズニーは創立者であり、独創的なキャラクターを次々に生み出したウォルト・ディズニーの死から20年近くが経過し、経営が低迷し、企業買収の危機にさらされていた。その危機を救ったのがマイケル・アイズナーとフランク・ウェルズのコンビだった。二人のおかげで、ディズニーの営業成績はV字回復し、1990年には押しも押されもせぬトップ企業に成長していた。そのころ書かれた「ディズニー・タッチ」を読み返していて、日米の学生生活の違いがじつによく描かれている一節に出会った。
 フランク・ウェルズはもともとアスリートとしての才能はあまりなかったが、高校卒業時に推薦状をもらうためにフットボール部やバスケットボール部を設立し、プレーした。バスケットボール部を1949年の地域リーグ優勝に導いてみごとに推薦状をとれ、ロサンジェルス郊外のポモナ・カレッジへ進学できた。カレッジでも卒業時の推薦状が欲しくて、水球部でゴールキーパーを務めた。水球部なら地元のカレッジとしか試合がなく有利になると考えたからだった。
 だがのちに弁護士資格を得ることになるフランク・ウェルズのこと、みずからのもくろみとは異なり、頭角を現したのは学業面においてだった。政治学専攻でファイ・ベータ・カッパの会員に選ばれた。さらに大学4年では奨学金を獲得した。日本の奨学金制度とは異なり、大学で優秀な成績を収めた学生に与えられる一時金のようだ。長年にわたり部活動やグループ活動をしてきたことが評価され、学生審査会の会員に選ばれ、学生としてあるまじき行為をはたらいた学生の処分を検討する審査会の議長を務めるまでになった。また学食の食事がまずいという問題が生じたときには食堂委員会にも加わった。
 いま、大学生のホームレスが増えている。車上生活をしていたり友人宅を渡り歩いたりしながら大学に通う学生をホームレスに含めると、カリフォルニア州内の大学生の10人に1人がそれに相当する。住居を確保していても毎日の生活に困窮し、学業に専念できない学生がさらに多くいることも分かっている。大学の教員は研究室に食料をしのばせ、学生の相談に乗っているし、学内の簡単な仕事を学生にさせて生活費の一端を補助しようとしている大学もあるほどだ。フランク・ウェルズがもしいまの学生だったら、このような問題にもとり組んでいるだろう。
「ディズニー・タッチ」のわずか16行ほどの文章からアメリカ社会が抱えるさまざまな問題が見えてくる。




村上世彰氏

2019年12月10日 | 日記

 小学校3年生のとき父から100万円を小遣いとしてもらい、それを使って投資を始めた。投資は順調に進み、高卒時には大金持ちになっていた。村上ファンドを立ち上げ「ものいう株主」として一躍有名になったが、インサイダー取引で逮捕された。たまにメディアで見かける程度だが、颯爽と登場した若手投資家もいまでは白髪になっているが、その風貌からは相変わらず精力的に活動しているようすがうかがえる。シンガポールに生活の拠点を移し、日本の学校でお金の授業をしながら、子どもたちにお金についての啓蒙活動をしている。村上氏については、この程度の知識しかもっていなかった。
 このたび上梓された村上氏の著書「生涯投資家」を読み、この人についての見方が百八十度変わった。株主と会社経営者との関係、株主総会はなんのためにあるか、コーポレート・ガバナンスが日本の会社に欠如していることなどを知らされた。
 株というのは配当を期待して会社に投資することだと思っていたが、それだけではない。会社の経営を精査し、望ましい方向へ向かわせることが株主に求められている。そのために株主総会を開くことが義務づけられている。シャンシャンのお手盛りで総会を終わらせる会社があとを絶たないのは、会社の経営者側にも株主側にもコーポレート・ガバナンスが欠如しているからだ。国でいえば、政府がしようとしている政策をチェックするのが国会であるはずが、それが十分に機能せず、政府の思惑どおりに政策が推し進められているのに似ている。政府が会社経営者、国会議員が株主にあたると考えれば分かりやすい。株主は配当金やその会社から得られる特典を目当てに投資するのでなく、その会社の財務諸表をチェックし、会社の経営方針を明確化させることによって株価を適正なものにしていく努力をしなければならない。
 村上氏はコーポレート・ガバナンスに早くから目覚め、遅れている日本の会社を健全な方向へ導こうと活動してきたのだった。「ものいう株主」という揶揄が入り交じった表現で世間から注目を浴びるようになった背景には、一歩先んじていたアメリカの会社文化を知悉していた村上氏の識見があった。文春文庫「生涯投資家」の解説でジャーナリスト、池上彰氏が奇しくもこう書いている。「“金の亡者”であるかのような印象が世間に広まってしまった村上氏ですが、本書を読むと、まるで少年のような正義感を持った人物である姿が見えてきます。投資を通じて世の中のお金の流れを円滑にし、経済を発展させたいと強く願っているのです。」いま村上氏が子どもたちにお金の授業をして回っているのも、うなずける。

写真はわが家の近くにあるいま盛りの紅葉





卵に黄身が二つ

2019年12月07日 | 日記

 以前、このブログで卵について書いたことがあった。目玉が飛び出るほど高価な卵を取り寄せて食べているときだった。あの高価な卵はそれっきり取り寄せしていないが、相変わらず卵は1日に2個ぐらい食べている。
 むかしときどき巡り会ったのに、いまでは珍しい卵に出会った。黄身が2つある卵だ。久しぶりだ。相模原市根小屋の養鶏場直売店で買った。たしか「ミックス玉子」の名前がついていて、店の人は「黄身が二つある玉子です。違ってたらゴメンナサイ」といっていた。手にとるとずっしり重い。おそらく養鶏場の人が手にしたときの感覚で選り分けているのだろう。いまのところ「ミックス玉子」は6分の5の確率で黄身が二つ入っている。
 ふだんスーパーで玉子を買っているが、黄身が二つある玉子に巡り会ったことがない。おそらくこの50年、二卵生の卵に巡り会っていない。一般の養鶏場では、なんらかの方法で二卵生の卵を生ませないようにしているのだろうか。
「初たまご」も1袋買った。「初たまご」は卵を産み始めたばかりの若い鶏が産む卵だ。初々しい味がする。そういえば長い間、有精卵にも巡り会っていない。黄身のどこかに黒っぽい斑点がある卵、暖めれば雛がかえる卵だ。
 きょうもまた元気の源、卵かけご飯をかき込もう。





すべてを下請けにさせる時代

2019年12月06日 | 日記

 2021年度から予定されている大学入学試験、共通テストの英語民間試験の導入が延期され、さらに国語と数学の記述式問題出題も延期される気配になってきた。原因は、採点に公平性が保証できないことらしい。しかしそれ以外にも問題が多い。
 考えてみれば共通テスト自体が文科省から教育関係業者に丸投げされているようなものだし、その業者がさらに関連会社に採点業務を委託することになる。採点業務を委託された業者は採点にあたる人を一時雇用する。一時雇用される人は文科省から見れば孫請け、いやもう一つ下のひ孫請けということになる。
 お金は上から下へと流される。文科省から流されたお金がひ孫に届くまでには各段階でピンハネがなされ、ひ孫にはスズメの涙ほどの報酬が支払われる仕組みになっているはずだ。
 先月中ごろ、共通テストを請け負っているとされるベネッセ・コーポレーションが高2生を対象に実施した共通テスト対策模擬試験は、なかなかの良問をそろえていた。これはベネッセが優秀な作問者を確保していることを示している。具体的には大学教員、予備校教師らに作問を依頼していると思われるが、ベネッセが優秀な人材を抱えていることは間違いない。英語民間試験の一つ、GTECHもベネッセが実施している試験であり、近年大きくそのシェアを伸ばし、実用英語検定試験(英検)に急追している。
 そうした模擬試験の採点には大学院生、大学生があたっているようだ。採点基準は作問者とその周辺の人がつくっているだろうが、その基準に基づいて採点するのは大学生が多い。大手予備校の試験監督や採点をも請け負っているこれらの大学生が、2021年からの共通テストの採点者としても期待されていたはずだ。
 高校の退職教員も採点者の候補に挙げられているが、多くの退職教員は現役時代、高校入試の採点でうんざりしているので、スズメの涙ほどしか報酬の出ない仕事に応じる人は少ないと思われる。
 すべてを下請けに任せる時代が、この先もつづきそうだ。