新・日曜炭焼き人の日記

炭遊舎のホームページで書いていた「日曜炭焼き人の日記」を引きついで書いていきます。

曲がりくねった道

2022年10月31日 | 日記

 写真は私がよく歩く曲がりくねった道だ。上野原駅の近くにある。
 道路というより道、人びとの生活の場としての道だ。車は通れるが地元の人の車以外、地域のようすをよく知っている業者の車以外はおそらく進入しない。対向車とすれ違うことができない。子どもたちが遊んでいたり、自転車に乗ったりしている。沿道に住む人たちはみな互いに顔見知りだろう。ある程度のアップダウンはある。上野原駅に近いが、察するに駅より先に、桂川ぞいの町として開けたところだろう。商店はない。
 ウォーキングコースとしてこれほど理想的な道はない。くねくねしたところに人間味を感じる。乗り物用の道路でなく生活用の道だから。くねくねした道は人間の本性に合致する。人間は決してまっすぐではなく、この道のようにくねくねして一貫性がない。人間が自然に作りあげた道はくねくねしているものだ。偉そうなことを書くようだが、イギリスの作家ヒレア・ベロックに共感してこれを書いている。
 このような道を歩いているとホッとする。心がウキウキする。歩くという苦行を感じないから脚が軽くなる。めったに車に出会わないから事故に遭う危険がない。
 思い出すのは2012年ロンドン・オリンピックでのマラソンコースだ。じつによく曲がっていた。これほどくねくねした道をマラソンコースに選んだ大会のマラソン担当者に快哉を送りたい。ロンドンはくねくねした道の価値を知悉し、それをいまにきちんと遺していて、世紀の大行事に披露している。
 人間味がある道には、それなりの名前がつく。ヒレア・ベロックから引用する。「小麦三束通り」「トランペットが響く荒野通り」「あわてんぼうの悪魔通り」と愛嬌のある名前がめだつ。くねくねした道沿いの広場にもそれなりの名前がついていた。「三人の狂った尼さん広場」はのちに「ヴィクトル・ユゴー広場」に変わったそうだ。19世紀初頭の話だ。



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