(前回からの続き)
以下のグラフは2008年1月から2012年8月までの日中両国の米国債保有額の推移と、同じ期間のドル円レートの推移を示したものです(米国財務省データ等による)。
これによると、2008年9月に、それまで米国債保有額ランキングで首位だった日本を追い抜いて中国が史上初めて同第1位となりました。以来中国は4年以上にわたって首位の座をキープしています(各年6月の増分幅が大きいのは、米財務省が当年6月~翌年5月の保有額推計を当年6月に行っていることによるデータ補正等の影響があるものと思われる)。
ところが昨年7月の総額約1.3兆ドルをピークに、この1年間ほどは、中国は米国債保有額を少しずつ減らしてきているように見受けられます。直近の今年8月の保有額はピーク時の約88%にとどまる1兆1586億ドルと、第2位のわが国(1兆1215億ドル)との差が縮まってきています。
一方、わが国のほうは2008年9月に首位の座こそ中国に明け渡したものの、同年から現在に至るまで、ほぼ同じ増額率で一貫して米国債の保有額を増やし続けています。この間の為替レートを見ると、2008年1月の1ドル約108円から今年8月は同約79円と約37%の円高ドル安となっているので、たとえば2008年の円安当時に購入した米国債の多くは現時点で為替差損を抱えているものと推定されます(日本円に換算した総額では2008年初の約63兆円から2012年8月は約88兆円に増えている)。
にもかかわらず米国債の保有額が増えているのは、民間企業等に替わって、もっぱら日本政府が為替リスクをものともせずに(?)買い増しているためでしょう。財務省データによれば今年8月のわが国の外貨準備のうちの「証券」は1兆1843億ドルとなっています。米財務省統計データと照らし合わせると、このうちの大半が米国債と推測されます。
今後も上記のように中国が米国債のこれ以上の買い増しを手控える中でわが国(とくに日本政府)がこれまでと同じようなペースで米国債を購入していけば、近いうちにわが国が米国債保有国の第1位に返り咲きそうです。
通常の場合、外貨準備が大きいことは国家の支払能力の高さを表すので好ましいことと解釈されると思われますが、わが国の場合、はたしてこれが良いことなのかどうかは微妙なところだと感じています。このあたりを次回以降、個人的に考察してみようと思います。
(続く)