韓国の田舎の老夫婦とその家畜の牛を撮った
ドキュメンタリー映画です。
地味な映画だろうから、名作で面白くはあっても、
きっと退屈するだろうと思いつつ見たのに
見事にそんな予想を裏切って
引き込まれて見入ってしまいました。
なにしろ
牛が、牛の佇まいがやさしすぎるー!
ストーリーと言うほどのものはありません。
40年近く生きている老牛と
その飼い主のおじいさん、
おじいさんに愚痴ばかり行ってるおばあさん。
これが登場人物のほぼ全員。
おじいさんは牛を大事にしていますが
擬人化して友達のように思ってるのではなく
また家族の一員のペットのように思っているのでもない。
あくまでも農作業をさせる家畜として扱っています。
人間ではない家畜、労働させる道具。
だから甘やかしたりむやみにやさしくしたりはしない。
でも30年も一緒に働いてきて、人間より大事なのです。
おばあさんは、自分は牛よりも大事にされてない
自分はかわいそうだ、
こんな人に嫁いでさんざんだ、みたいなことを
何度も何度もずーっと言っています。
おじいさんと牛が無口なだけに
ほとんどのシーンで
おばあさんの愚痴だけが聞こえる言葉です。
でもおじいさんの具合が悪くなると
おじいさんがいなくなったら生きていられないよぅと
おろおろ泣き言を言うのです。
静かな静かな映画ですが
もの言わぬ年とった牛が
こんなにやさしい風情だなんて知らなかったなぁ。
姿が、そこにいるのを見てるだけで
涙が出るようなやさしさ。
そして、舞台の韓国の田舎の農村。
父の家はこういうところだった。
こういう牛がいた。
父はこういうところで育ち
日本生まれのわたしは幼稚園の頃から
毎夏、韓国の父の田舎に行った。
田舎は好きじゃなかった。
言葉が通じないし、食べ物もあわないし
都会の子だったので山や畑にも興味がなかった。
でも、今こうして、こういう農村の風景を見ると
確かに自分の中にこういう風景が組み込まれているのがわかる。
好き嫌いではなく
これを自分はよく知っている、という感覚。
そういえば
わたしが子供の頃、犬や猫を飼いたがると、
父は、あんな小さいもん気持ち悪い。
牛や馬ならいいが。牛や馬はかわいいぞー、とよく言ってた。
牛の飼える家には住んでなかったし、無理だったけどね(笑)
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