goo blog サービス終了のお知らせ 

sigh of relief

くたくたな1日を今日も生き延びて
冷たいシャンパンとチーズと生ハム、
届いた本と手紙に気持ちが緩む、
感じ。

映画:嘆きのピエタ

2013-07-19 | 映画


すごい映画で、中々感想が書けなかった。
6月は映画館で11本見たけど、7月はちょっと疲れて
今の時点で1本しか見てない。
それがこの映画です。

まず上の予告編を見てほしい。
いやぁ、これ見るだけで、震え上がるこわさでしょう。
暴力シーンがそのまま出てるわけじゃないけど
もう、この機械工場のシーンが出て
何か機械が動いているだけで
もう、こわくたこわくて、ひいっ!と縮こまってしまう。
サスペンスやホラーは、ほとんど見ないのです、わたし。
何しろ好きな映画ジャンルはラブコメとメロドラマですからね。
だから、ベネチアで金獅子賞を取ったって聞いても
これは無理、と怖じ気づいてたのですが
友達が、これを見た後鶴橋行って買い物して、
今里行って韓国料理をたらふく食べる会をやるからと言われ
こわいよこわいよ、と言いながら見てきた。(笑)

こわさは・・・なんとか大丈夫でした。
予告編以上にこわい場面は、そんなに多くはないです。
でもこの話のやりきれなさに
見終わった後、うわぁ、なんかすごいもの見たなぁと
友達とため息をつきまくりながら、韓国料理得を食べ
ビールとマッコリを飲みました。

ストーリーは
天涯孤独の冷酷な借金取り立て屋の男のもとに
昔彼を捨てた母だという女が現れる。
母だと言い張って、どんどん彼の生活の中に入り込む。
やがて彼もそれを信じて受け入れ、いつのまにか
ひとりの孤独には、もう耐えられなくなる。
母親との、おそらく生まれて初めての
温かい時間を過ごす彼だけど、その時間は続かず、
そしてわかる衝撃の真実と、その果てに彼の選んだ道は・・・

と書くと普通のサスペンスみたいなんだけど
ディテールは結構えぐくて、こわいです。
えぐすぎて、笑っちゃうブラックなところはある。
そして、中盤で先がわかってくるんだけど
わかりながら見てても衝撃な終わり方で、
本当に救いがない。
彼らのあまりの絶望の重さに、言葉もなくなるけど
それだけすごい映画になってると思う。
こういう映画が好みではないのに、ああ、すごいもの見たと思わされる。
予算がなくて学生に撮影監督させたり、
11日間とかの、わずかな期間で撮ったとか聞くと
確かにそう感じさせる場面はないことはなかったけど
それ以上のものが潤沢になる映画なので、感心するだけです。
映画好き、文学好きな人には是非見てほしいです。
ちなみに、「ピエタ」というのは死んだ我が子キリストを抱く聖母マリアで
古来何度も絵画や文学のテーマにされてきたモチーフです。
この映画はそう言う意味ではわかりやすいテーマの映画ですね。


「ピエタ」を見てから2週間ほど経って
昨夜、同じキム・ギドク監督の、おそらく20年くらい前の映画を1本
DVDで見ました。
そちらは、誰も死なないし、グロいシーンもないし
最後は笑い合ってるシーンで終わる映画なんだけど
実は不気味なのはそっちかも、と今「ピエタ」を思い出しながら考えた。
孤独な娼婦の女が、誰にでも与えるばかりで奪われ続けるばかりで
でもふわっと優しく笑っていて、すり減った感じはしないんだけど、
ちょっと途中キレたりもしながらも
やっぱり同じように奪われ続けることを選択し、
ラストはやっと気持ちの通じた友達ができて笑ってるという映画。
(それで笑いあいながら終わっていいのか?ときょとんとしたけど)
これを見て思い出したのがニコール・キッドマンが主役の「ドッグヴィル」。
これは今まで見た映画の中で、一番後味の悪い
いやな気分にさせる映画ナンバーワン。わたしの中では不動の映画です。
ここでも、さんざん凌辱され奪われ踏みにじられた末に
非難され排除される女が出てくるのですが
そこに描かれる、人のずるさ、いやらしさ、悪意というものの
気持ち悪さは、耐えられないほどで
善人と言われる人が保身や差別や正義のために
行う偽善や搾取や策略など、もう、
誰にでも潜んでいそうな人間のいやなところを、
ここまで見せつけるかと疲れ果てるほどです。

それに比べると「ピエタ」は逆だなぁと。
主人公の男のしてきた冷酷なことや、そこで生きる人たちの
行き詰まり感は、やはり救いのないものがあるけど
「ピエタ」には、人の善意や、愛情がしっかり描かれているのです。
それがテーマではないにしても
零細工場主の家族や、主人公の母への愛情は
わずかな場面でもしっかりと描かれていて
起こったことには救いがなくても、
人間というもの自体に関しては
どこまでも邪悪で卑しいものという風には描いていない。
彼らに救いはないけど
人間というものには、どこかに救いはあるし
すべて終わったあとの彼らの魂にも
救いはきっとあると思わせるところがある映画です。

そう思うと「嘆きのピエタ」は
案外甘く温かい映画なのかもしれないなぁと、昨夜、考え直しました。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

サービス終了に伴い、10月1日にコメント投稿機能を終了させていただく予定です。