sigh of relief

くたくたな1日を今日も生き延びて
冷たいシャンパンとチーズと生ハム、
届いた本と手紙に気持ちが緩む、
感じ。

映画:僕とカミンスキーの旅

2017-07-12 | 映画


先月の後半からほぼ毎日働くようになって
映画が全然見られなくなりました。
時間はあるんだけど、それ以上に予定がいろいろあって
映画の時間が取れない!
ブログ書く時間はもっと取れない!

ひと月以上前に見た映画だけど、
これ予告編で、かなり気分が盛り上がります。
有名画家やその作品の画像が次々と流れ、ドキュメンタリーのように
盲目の画家カミンスキーを紹介するテンポは期待が高まる。
映像もカメラも演出も役者もみんなセンス良く
滅法デタラメでときどき驚くような仕掛けがある盛りだくさんな映画かなと。

そして、思ってたのと少し違うところはあるけど、
実際もかなり面白い映画でした。

売れないし、誰にも相手にもされてない評論家のセバスティアンは
今は隠遁生活をしている盲目の画家カミンスキーの伝記を書こうと
彼を訪ねて行く。
カミンスキーは、マティスの最後の弟子でピカソの友人、
ウォーホルやダリらと並びNYでブレークした盲目の画家。
ビートルズやウディ・アレン、ヒッチコックなどとも繋がりのあったという
伝説的な存在で、セバスティアンはいいネタを見つけた!と
情熱や愛情ではなく、ひたすら自分の勝手な欲と功名心で張り切ります。

このセバスティアンがね、本当に嫌な奴なんですよ。
自分勝手で強引で図太く無神経でいいかっこしいでスノッブで卑屈で
ズルくて嘘つきで、人をためらいなく利用し、
本当に見てるちどんどん不快になってくるくらい最低の人間。

この嫌な奴が、カミンスキーには振り回されるので、それは爽快。笑
カミンスキーは彼を上回るわがままな頑固者の老人で
ぼけてるのか意地悪なのかよくわからないんだけど、何しろ偏屈。
彼が昔愛した女性がまだ生きてると知り、
これは面白いネタになりそうだとセバスティアンは一緒に旅に出ることに。

ここからはロードムービーっぽくなります。
ドニ・ラヴァンが怪しいバイオリン弾きのホームレス役で出てきて
彼は本当に面白い俳優だなぁ。怪しさが本当にいたについてる。笑
こういう役やるの楽しいだろうなぁ、としみじみ思った。

いろいろあって、カミンスキーが昔愛した人とは会えるんですけど
いったいどんな出会いになるんだろうと期待してたら、これがねぇ、
派手な面白さはなくて、肩透かしと紙一重な感じの出会いなんだけど、
そこがほろ苦くて切ないのよ。
美化されてた過去、若さ、情熱、何十年もの思い、
現実ってこういうものよねぇ、と思ってなんとも脱力するほろ苦さ。
このあたりにくると、あんなに嫌だったセバスティアンが、
それほど不快ではなくなってきてる。
まだひどい目にあうとザマミロと思うくらいには嫌な奴だし
最後まで好きにはなれないんだけど、どこか、許してしえるようになってる。

そこからつながるラストは、主役ふたりの不思議な友情感が
ハートウォーミングといえばいえそうな展開なのに、
そこは本本当にうまく抑制が効いてて、最後まで甘さや感傷には流れません。
でも、流れないのに、ちゃんとあるのよ感傷が。
うまい、というかセンスがいいな〜。

エンドロールもとても楽しいし、なんか愛がある。
エンドロールって退屈することが多いんだけど、
(動体視力が悪くてどんどん流れる文字読めないし・・・)
このエンドロールは、楽しんで作った感じがする。

美術好きの人、騙されるのを楽しめる人、
皮肉や、意地悪や、バカバカしい展開についていける人、
わかりやすいハートウォーミングに流されない人のための映画。

原作小説があるそうで、読んでないけど絶対面白いと思う。

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