sigh of relief

くたくたな1日を今日も生き延びて
冷たいシャンパンとチーズと生ハム、
届いた本と手紙に気持ちが緩む、
感じ。

映画:葬送のカーネーション

2024-03-19 | 映画


これは今年立て続けに見ているゆっくり映画の一本。とはいえロードムービーで、
とりあえず一つの目的に向かってゆっくりだけど進んでは行くので、
そもそも何も起こらずどこにもいかない映像詩映画(これですね→「オール・ダート…」)よりは映画っぽい。
ていうか、ゆっくりだけどとても映画的な映画と思う。
この予告編見るだけで、ああ、映画だなぁと思ういい映像ばかり。

トルコの映画で、小津安二郎好きの監督らしいけど
個人的には小津安二郎好きな監督というのに、ちょっとうんざり。
小津はわたしも好きですけど、小津好き監督、世界に多すぎないか?笑

お話は、おじいさんが亡くなったお婆さんの入った棺を故郷に埋葬するため
両親を亡くしてる孫娘と旅に出るロードムービー。
最初は車に乗せてもらってるけど、途中で降ろされて途方に暮れたり、
引きずってるうちに棺が壊れたり、トラブルは続くけど、いやそんなの当然でしょう?
そもそもが、お金もなく車もなく、棺を担いで紛争地域まで国境越えてって、
いや、それめっちゃ無謀でしょ?無理でしょ?と最初から最後まで思うような道のりなのです。
野垂れ死ぬんじゃない?とか、ほんとに辿り着けるの?などと心配しながら見ることになる。

去年、ひょえー!最高!すごいー!と思ったロードムービー「君は行先を知らない」より
さらにずっとセリフが少ないしドラマも少ないけど、
左右に続く道をゆっくり人や車や何かが横切る構図をスクリーンで見るのは、
映画館で映画を見る至福のひとつなので、それはかなり堪能できます。美しい。
じっくり見せるので、時間の流れも一緒に見ることができます。美しい(2度目)。
ちなみに主人公二人は本当にほとんどしゃべりませんが、周りの人間はペチャクチャよく喋ります。
なんか二人の世界だけが別の世界で、リアルのおしゃべりな世界とは離れている感じに見える。

この映画のポスターがこの絵なんだけど、この絵はかわいすぎる。
色もきれいだし人間の姿も顔も、なんか線にユーモアがあるけど実際の映画はもっとストイックです。


この映画にも一筋の希望が、とかいうレビューもたまに見るけど、わたしはそれには懐疑的です。
だってこの映画には幻想的なエンディングはあっても未来への光は見えないし(むしろ逃避)、
生きている人間の間にコミュニケーションも秘めた思いやりさえも感じられないんだもん。
おじいさんのおばあさんへの愛は感じるんだけど孫娘への愛を感じる箇所はほとんどなかった。
両親を失った小さな子供の方こそ守るべきなのに、おじいさんは自分の悲しみだけを優先する。
そんな大事なお婆さんと何十年も添い遂げたんだから、まだましやん、
孫娘の傷を癒してあげてよ!と思って、つらかった。
おじいさん、自分のことだけじゃなく12歳の子どものことを少しは思いやってあげてよ。

あるブログで「今まで遺体を運ぶ物語の映画なんて、聞いたことがない。
本作『葬送のカーネーション』は、非常に斬新なアプローチで展開される作品だ。」
と書かれてるのを見たけど、いや、わたし見たことあるよ。
「悲しみのミルク」ペルーの映画です。これは素晴らしい映画だった。
悲しい話だけどこちらにはちゃんと希望も少しあった気がする。

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