sigh of relief

くたくたな1日を今日も生き延びて
冷たいシャンパンとチーズと生ハム、
届いた本と手紙に気持ちが緩む、
感じ。

「天使の分け前」続き:味わうこと

2013-07-06 | 芸術、とか
昨日の「天使の分け前」を見て考えたことの続きですが
映画カテゴリーに入れないで書きます。
これは芸術というか感性についてのことかなと思う。

映画でもう一つ心に残ったのは、主人公がウィスキーの味を覚えていくところ。
それまで、酔っぱらうためだけのお酒しか飲まなかった彼が
いいお酒を、色で、匂いで、舌触りで、味で、のどごしで、
味わえるようになっていくところです。
分厚い専門書も読んで勉強し始めます。
ウィスキーとの出会いの前と後とで犯罪の質が変わったのでは、と
映画の後のトークイベントに参加した人が言ってたけど、
確かにウィスキーを味わうということで
彼は随分違う人間になったのだと思う。
傷つけ合う犯罪から人を傷つけない犯罪へ。
(犯罪しなければもっといいんだけど。笑)

貧しい環境で育って、文化資本を持たないと
まず、おいしいものや美しいものを、いいと思うことさえできないものです。
繊細な料理より、ジャンクフードの方が美味しく感じるし
さりげない自然の美よりも、どぎついグラビア写真をいいと思ったりします。
(それはそれでいいものですが)

感性って、
よく子どもの感性はすごいとか言われて
勝手にだれでも持ってて、大人になるにつれ失うように思われてる気がするけど
完全に逆だと、わたしは思います。
感性は育つものです。
生まれながらに鋭い感性を持ってる人は少ないし
子どもの感性なんて、単にモノを知らないせいで自由なだけのことで
美しいものを美しいと気づく子どもは実はとても少ないのです。
自分の中に元々、生まれながらに持っているものは
本当はとても小さな種のようなものでしかないと思ってます。
もちろん、同じものを見ても種が育つ子もいるし
育たない子もいるでしょうし個人差はあるだろうけど、
やはり環境、教育やその他の外部からの影響は大きいと思うのです。

この映画の主人公は、あまりに殺伐と育ったせいで、
本来もっていたかもしれない感性の種は育たず、
どんなに素敵なものを見ても食べても聴いても、
感じたり味わったりすることができなかったのです。
それがハリーという親切な人や、ウィスキーとの出会いで
主人公はじっくりと、匂いや味や色や口当たりなど
五感すべてで味わうことを知り、
それで、やっと、立ち止まって
世界を新しい目で見られるようになったのだと思う。
ウィスキーだけでなく、立ち止まってよく見る、感じるということを
知ったのだろうなぁ。

日本画の小倉遊亀さんが、
小さな葉っぱ1枚の中にもすべての宇宙があるって言ってたけど、
本当にそうだと思うし
でもそれは、注意深く見て感じないとわからないことだよね。

わたしはアートに世界を変える力も戦争を止める力も
本当はないと思ってるし、そもそも
アートがそういう役割をしょうことが、いいのかどうかもわかんないけど、
感性を育むということが、モノゴトの美に気づくということで、
それが立ち止まって世界を味わうということに繋がるなら、
美術教育は、ものすごく重要で
人の幸せや世界の平和に貢献できることだと思います。

この映画は、映画自体はわたしには特に印象に残ることもないと思うけど
こういうことを改めて考えられたのは、よかった。

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