sigh of relief

くたくたな1日を今日も生き延びて
冷たいシャンパンとチーズと生ハム、
届いた本と手紙に気持ちが緩む、
感じ。

映画:カラー・パープル

2024-02-18 | 映画


リメイクだし古い小説なのでネタバレありの感想です。

原作を知らなければとても良い映画だし、これはこれでわたしの物語だと思ったかもしれないけど、
わたしはこの原作を家に閉じ込められて普通に出かける自由も奪われて抑圧されていた20代の頃
何度もお風呂で読んでは(みんなが寝た後のお風呂しか安心できる場所がなかった)
何度も号泣していたので、ちょっとなぁ…という感想。
ミュージカルだから仕方ないのか。
ミュージカルって、良い物語やあらすじにドラマチックな歌を上手い歌手に歌わせて
素晴らしいキャスティングで上手いカメラで撮れば、よい作品にはなるだろうけど、
なんだか何もかもがハッキリしすぎている感じなのよねぇ。
尺の都合で繊細な部分を残せなかったのはともかく、センスが現代的すぎるのも仕方ないのか。
女の地獄を、むしろあっさりしたきれいな描写から想像させるという意図かもしれないけど
あっさりしすぎな感じ。服や景色もきれいすぎて…
まだ少女の頃に性虐待受けて何度も生まされた末に暴力男に売られるなんて地獄の話なのに
今回のはなんかその辺ごく呑気というかさらっとしてて、
重く深刻なところを深刻に描いてないというか、真正面から向き合ってないというか、
ドロドロを見せない感じのずいぶんきれいな映画になってるなぁと思った。
黒人女性の差別の歴史から暗くて思い泥臭さをなくしてもいいのかなぁ。
どうもパワフルで美しい歌で、全体に前向きすぎる気がする。
(とはいえセリーがI'm beautifulと歌うところでは泣きましたが。)
ミュージカルってそういうものと納得して見るしかないのかな。

そしてやっぱり、神が許してもセリーが許しても、わたしはこの男たちは許さんぞ。と、今も思う。
一般的に黒人差別の話になると白人からの差別ばかり思い浮かべがちだけど
(それも少し描かれているけど)
その黒人社会の中で黒人女性が黒人男性から女性が受けていた暴力の凄まじさを描いた話なのに
最後に許してみんな仲良く輪になって、みたいな大団円で許さなくてもいいのにと思う。
許すことは正しいのかもしれないけど、正しくなくてもいいから、
人の人権も尊厳も人生も何もかも踏み躙った人間を許さなくていいよ、もう。
そして最後のその大団円のシーンの映像の陳腐さ。
変な新興宗教の集まりみたい。うへ。

でも、ピュリッツァー賞受賞の素晴らしい原作が好きすぎて、特に前半で乗れなくて
散々文句をつけたけど、それは余計なお世話で、十分いい映画です。
(その原作者がちゃんと製作に入ってるのでわたしがどうこういうことじゃないのよね)
キャスティング素晴らしいし。特に女たちは、みんなすごく合ってる。
そして音楽のちから、歌の力は確かにあって、実際見ている間は引き込まれて聴き入ってました。
実はわたしはミュージカルが苦手で、歌はいいから物語を進めてくれー、
もっとディテールを描いてくれー!とか思ってしまう無粋者なんだけど
(元々聴覚より強烈に視覚優位なのだと思います…)
逆にその自覚があるのでミュージカルはできるだけ楽曲を楽しもうと
意識的に音楽に集中するよう自分のチャンネルを合わせているのです。
だから楽曲がいいと、まあ楽しく見れます。

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