ウィーンで研究留学!

以前はウィーンでの留学生活を綴っておりました。今後はクラッシック音楽を中心に細く長く続けていけたらと思っています。

ウィーンフィルのブルックナー

2009年02月13日 10時01分51秒 | Weblog
 渋谷駅の公衆電話コーナーでサークル仲間と待ち合わせして休日の朝の十時からせっせとチケットとりのために電話していたのを思い出すと本当に懐かしく、自分にもそんな時代があったなあと思ってしまいますが(第一携帯電話なんて普通にまだ誰も持ってなかったし)、結局つながった時にはS席しか残っておらず、二万八千円を払う決意をしたのは自分だけだったのがその年のウィーフィルの来日公演。小澤征爾指揮のこの年のプログラムはひとつは前半モーツァルト(確か36番だったような)、後半マーラー4番。これは行きたかったのでよく覚えているのですが、自分がチケットを取れたのは前半バルトークの不思議な中国役人・後半ドヴォルザークの新世界という征爾らしいけど一番人気がなかったと思われるプログラム。もう一つは思い出せません。前にも書いたような気がしますがこの演奏会、座席がS席のくせにサントリーホールの前から二列目という不当な配分だったこともありますが、とにかくなにも琴線に触れることがありませんでした。皇太子夫妻がいらしていたことが話題のネタになったのが唯一の収穫というくらいものもの。休憩時間にコーヒーを飲んでいても周りの客層がいつもと違い、本当はクラシックなんか全然興味ないのにステータス的に来ているような雰囲気の人ばかりでげんなりしました。まだ音楽会はバブルを引きずっていたような当時、ウィーンフィルがどれくらい本気で演奏していたのかもやや疑問ですが、こういうときには友人の言っていたことが思い出されるもの。「別に征爾指揮のウィーンフィル大金払って聴きたくないし」「モーツァルトとマーラーならともかくバルトークとドボルザークだったらウィーンフィルじゃなくていいし」ぶしつけな物言いは所詮二十歳そこそこの若造たちなのでおゆるし願いたいですが、まあ普通に日本のクラシックフファンが言いそうなことです。ちなみに付け加えるなら当時は征爾とウィーンフィルの距離が急激に近づいた頃で、ウィーン国立歌劇場の音楽監督になるなんてまだ誰も思いつかない時期でした。征爾とボストン響の組み合わせだったらみんなもっと行きたがったことでしょう。
 例によって前降りが長すぎるのですが、じゃあウィーンフィルでなにが聴きたいかなあとなんとなく考えるともちろんモーツァルトとかブラームスもあがってくるんですが、どうしてウィーンフィルで一度は聴きたいと特に思うのはブルックナーでした。曲がりなりにもウィーンのスタイルの奏法や特殊な楽器を維持しているこのオーケストラの特殊性を考えると、作曲家自身がこのオーケストラで演奏することを想定して書いていたブルックナーの交響曲をこのオーケストラで聴いてみたいということです。もちろん今どきはそんなことを言うならオリジナル楽器のほうがよっぽど適当ではないかと言われるとそれまでですが、ウィーンフィルにはブルックナーの成功傑作を初演した当時の伝統という面もありますし、実際生粋のオーストリア人であるブルックナーは彼らにとっても特別な作曲家であるに違いないでしょう。
 そういうことでウィーンフィルがブルックナーを弾く時は聴きに行こうと思っていたものの意外にプログラムに組み込まれることが少なく今までチャンスがありませんでした。たぶんショスタコービッチイヤーの影響が強かったのではないかと思うのですが、まあそんなに自由にコンサートに行ける時間があるわけではないというのあります。ウィーンに来て3年経とうというときにやっと巡ってきたチャンスが今回で、指揮はメータ。プログラムは前半にシェーンベルグの「浄められた夜」、後半にブルックナーの9番でした。今回手に入れたチケットはウィーンフィルの定期演奏会の公開リハーサルという名目のもので実際ほとんどの奏者が普段着、メータもエンジのポロシャツのようなものを着ていましたのではじめ彼が入ってきたときは指揮者だとは思わず拍手のなんとなく始まったような感じでした。ただ実際にはリハーサル的なことが起こることはほとんどなく(希に全部終わった後に指揮者が気に入らなかったところを繰り返したりすることもあるらしいですが)服装を除けば会場のマネージメントも含めて通常のコンサートとなんらかわりはありません。チケットはかなり割安なので(通常のウィーンフィルのコンサートは来日コンサート程ではないにしてもさすがにかなり高い)とてもお得です。ただしやはり雰囲気はちょっとリラックスした感じがありますし、たぶん批評家などはここで評価することはないでしょうからはやり違いはあるとは思います。かえっていいかもしれませんけど。
 ということで長くなったので次回に続きます。本当はアルバンベルクとかブレンデルとか先に書かなきゃいけない物もあるんですが、なかなか時間がないので書けるときに書いておくということでまたそのうち何とかします。