ウィーンで研究留学!

以前はウィーンでの留学生活を綴っておりました。今後はクラッシック音楽を中心に細く長く続けていけたらと思っています。

アルバン・ベルク四重奏団2

2008年05月18日 06時06分50秒 | 音楽(クラシック)
アルバンベルク四重奏団の録音をそんなに端から聴いているわけではないが、私の知る彼らのCDの中の演奏はいつも完璧でそして遥かな高みから聞こえてくる音楽のようだった。言い方は悪いが彼らの録音を聴いているとなんというか音楽の生々しさのようなものは感じない。しかしその説得力は圧倒的で、どこにも妥協のない、際立った精神性に基づいた音楽という印象を受ける。

僕が初めて買った彼らのCDはモーツァルトの弦楽五重奏の3番と4番で、これは曲もモーツアルトの室内楽のなかでも最高の部類だと思うが、本当に素晴らしい演奏だ。モーツァルトの短調の曲のCDを選んで聴いていた受験生の時に一番沢山聞いたCDの一つで、どういうわけか合格発表を見に行くときにバスの中でこれを聴いていたのが忘れられない。彼らの演奏はそのゆるぎない格調の高さ故、精神的に不安定なときに聴くのに向いている気がする。このCDではそのト短調の4番も素晴らしいが、3番は本当に得がたい格別な録音だと思う。五重奏なのでヴィオラが一人加わっているから四重奏団としてのオリジナルではないかもしれないが、彼らの名録音の一つであることには変らないだろう。



彼らの録音を最初に聴くときにはその音楽の、なんというか格の高さに常に驚かされる。有名な四重奏で良く知っている曲だったとしても、彼らの演奏は何か他とは絶対に違うように思われる。その印象というのははじめに書いたとおりでいつも変らないのだが。最も印象に残っているのはドビュッシーとラヴェルの弦楽四重奏曲の録音。これはCDがサークルの部室にあって、自分で買うのは別の演奏にしようと思って別のものを買ったが結局最終的に彼らのCDも買うことになった。



これも超有名な四重奏曲でシューベルトの死と乙女、ロザムンデ。いくら書いても同じようなことになってしまうので興味を持った方は是非聞いていただきたい。買って絶対に損することのないクラシックのCDというのはそうはあるものではないが、これは稀なものの一つといっていいと思う


アルバン・ベルク四重奏団1

2008年05月18日 00時25分34秒 | 音楽(クラシック)
この世界でもっとも有名といっていい弦楽四重奏団は僕にとっては絶対的な存在だが、それは完全に彼らの録音のみによって形成されたもので、彼らの演奏を生で聞いたことは一度も無かった。今から考えれば本当に惜しいことで、全盛期の演奏を聴くことが出来たのかもしれない。彼らはなんども日本を訪れているしいくらでもチャンスはあって、実際に王子ホールの演奏会のチケットを取ろうと思って電話をしたこともあったのだが、そのときは電話が繋がらず売り切れ、他にサントリーホールなどの演奏会もいくつかあったと思うが、CDで有名なことをいいことに法外に高いチケット代にひるんでしまった記憶がある。僕の中では彼らはオーケストラと同じようにずうっと存在し続けるもののような気がしていて、その気になればいつかは生で聴けるだろうと思っていた。だが考えてみたら成熟に時間が掛かり、メンバーの交代は大きなリスクになる弦楽四重奏団の寿命というのはそんなにながいものであるはずがない。アルバン・ベルク四重奏団が一流の四重奏団として存在し続けた38年間という歳月は十分に長いといえると思う。

解散してしまう、ということをどうして知ったのか良く覚えていないが、ウィーンにいるとニュースも新聞もドイツ語だからわからないし、かといって日本語のウェブサイトでニュースをチェックするわけでもないし、本当に世間から疎くなってしまう。最低限のことはそれでもなんらかの形で知るけれども、世界を騒がせたオーストリアのニュースなどもランチでの会話で知ったくらいで、だれかが教えてくれなければ全く知らずにいただろう。いかに科学者といえどもこれではいけないと思いつつ、なかなかこういうところは変わらない。確か1月にベートーベンの弦楽四重奏の彼らの録音ををたまたま聴いて、ウィーンにいるんだからアルバンベルク四重奏団の演奏会に行かなきゃと思い検索したところ、女性がメンバーに入っていることに気づいて驚き、いろいろ見ていたら解散してしまうことを知ったのだと思う。解散する前に何としても一度は生で聴きたいと思ったが、今回聴きに行ったKonzerthaus(彼らのデビューの地)でのコンサートもその時点で完全に売り切れになっていて(通常にくらべて物凄く早く売り出している)、他にどこか無いのか調べてパリでの演奏会はまだ残っているけれどこれに行こうかどうか迷ったりもした。Konzerthausでは6月にHeinrich SchiffやLeonskajaなどとSchubertを演奏するコンサートが別にあり、これは大ホールなのだがこれを手に入れて一応満足することにした。しかし彼らの解散ツアーのプログラムとは当然別物で、僕にとっては大好きなベートーベンの作品132が入っている今回のプログラムは格段に魅力的だった。彼らのこの曲の録音を何度となく身震いを起こしながら聴いていたのだから。

諦めつつもなんとなく折に触れてKonzerthausのウェブサイトをチェックしていたところ、2週間前になってたまたまチケットがavailableになっているのを発見し、即座に購入した。実は研究所の大きなイベントと重なっていたんだけれども当然こちらが優先である。席は舞台の上。奏者の息遣いまで聞こえて来そうな場所だ。オーケストラの場合、舞台上の席はホルンが口を向けて並んでいたり、ティンパニのすぐ後ろだったり音のバランスが酷いことが多いが、弦楽四重奏ならほとんど問題にならないはずだ。