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映画『怪物團』FREAKS:侮辱した分だけの侮辱をクレオは受ける!同害報復!

2021-01-04 09:29:29 | 日記
※映画『怪物團(ダン)』FREAKS(1932、米)監督トッド・ブラウニング

(1)
映画は旅回りのサーカス一座の話だ。空中ブランコの花形・クレオパトラ(クレオ)、そしてその情夫の怪力男・ヘラクレスが悪役だ。またピエロ役のフロゾと彼に恋する女性団員ビーナスが、小人症の男性ハンスと小人症の女性フリーダの味方だ。
《感想1》クレオ、ヘラクレス、フロゾ、ビーナスの4名は、「健常者」(healthy person)だ。
《感想1-2》だが「健常者」とは何か?意味的には、「健常者」に対して「病者」(sick person)が存在する。
《感想1-2-2》分類上は「障害者」(hanndicapped person)は「障害を持った健常者」だ。つまり「障害者」も「健常者」だ。
《感想1-2-3》つまり「健常者」は、「狭義の健常者」(障害を持たない健常者)と「障害者」(障害を持つ健常者)からなる。
《感想1-3》この場合、「健常者」(healthy person)とは《人間的感情・共感の可能な者》の意味だ。「病者」(sick person)は人間的感情・共感の不可能な者だ。
(2)
サーカス一座には「見世物」にされる多くの「障害者」がいる。(a)小人症(低身長症)、(b)手足のない男性、(c)手のない女性、(d)ひげの濃い女性(Cf. 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS))、(e)「シャム双生児」(結合双生児)の女性(Daisy and Violet Hilton)、(f)小頭症の姉妹、(g)右半分が男性で左半分が女性の半陰陽者(Josephine Joseph、Cf. 裁判で「詐欺」とされた)、(h)「ハーフボーイ」(下半身がない)、(i)「骨人間」(るい痩)、(j)吃音症、(k)「鳥女クークー」(ゼッケル症候群)(Minnie Woolsey)等々。
《感想2》「人並み」の身体・知的能力を持たないとされる人間は、「見世物」にされたり(他人の儲けのため)、あるいは(自分の生計のため)「見世物」になったりした。また彼らは、いじめ・虐待・あざけり・いたぶりの対象となった。
《感想2-2》彼らは生きねばならないので、この映画に出演した。つまり(自分がカネを得るため)「見世物」の対象にみずからなった。
(3)
小人症の男性ハンスと小人症の女性フリーダは婚約していた。ところがハンスが、空中ブランコの花形・クレオパトラ(クレオ)の華やかさに惹かれ、彼女を愛するようになる。クレオはハンスを利用し、カネや高価なネックレスなどを要求し手に入れた。フリーダがハンスに、「あなたは騙されている」と忠告するが、ハンスは聞かない。
《感想3》「恋は盲目」だ。かくて小人症のハンスは、コンプレックスから「障害のない、かつ美人で一座の花形・クレオパトラ(クレオ)」に容易に騙される。(もちろん彼はわかっている。だがむしろ自ら「騙された」のかもしれない。)
(4)
ところが、クレオは「ハンスが親戚から莫大な資産を相続した」ことを知る。クレオは、「金目当てにハンスと結婚しその後、毒殺し財産を自分が相続する」ことを計画する。クレオの企みを知らないまま、ハンスは彼女と結婚した。フリーダは、婚約者を奪われ悲嘆にくれる。彼女を、一座の仲間フロゾとビーナスが心配し慰める。
《感想4》 クレオによる遺産相続目当ての結婚。凶悪な結婚詐欺。
(5)
クレオは一座の怪力男ヘラクレスを情夫としている。結婚式後の祝宴で、クレオは酔って本音を言い放ち、ハンスと一座の見世物(障害者)仲間を侮辱する。「お前たちは、汚らしくて気味の悪い怪物だ!ハンスと結婚したからといって、お前たちの仲間になるわけじゃない!」彼女の真意を知ったハンスは悔恨する。クレオは、ハンスに弁解する。だが同時に、ハンスの毒殺計画を進める。
《感想5》『怪物団』FREAKSというこの映画の題は、「クレオの立場」に立つことを示す。「差別」的ですさまじい題だ。
(6)
ハンスは「自分がクレオに毒殺される」ことに気づき、クレオに反撃する。毒殺計画を知った一座の仲間たちがハンスを助ける。一座の障害者の仲間たちは、激怒しており、逃げるクレオを追い詰め、罰を下す。クレオへの罰は、恐るべきものだった。彼らはナイフでクレオの手足を切断し、クレオは手足のない「怪物」(FREAK)として「見世物」にされた。
《感想6》復讐が実現される。ただしクレオは殺されない。ハンスが殺されていないからだ。だが侮辱した分だけの侮辱を、クレオは受けることとなった。「目には目を歯には歯を」だ。(同一の加害によって報復を行う、同害報復だ。)
(7)
相続財産で大金持ちになったハンスはサーカス一座を離れ、今や豪邸に住む。しかしフリーダへの罪の意識から沈鬱な生活を送っていた。そんなある日、結婚したフロゾとビーナスに付き添われ、フリーダがハンスを訪れた。ハンスは戸惑う。フリーダはハンスを赦し、二人は結婚する。
《感想7》映画はしかし、ハッピー・エンドでない。クレオがアンハッピー・エンドだ。
《感想8》障害者・奇形者を「見世物」にする「差別」的映画だ。公開当時は世間に大変なショックを与え、全米各州で上映禁止となった。また監督ブラウニングは本作以降、仕事に恵まれなかった。
《感想8-2》日本公開は1932年で、初公開時のタイトルが『怪物團』だった。

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