今週の朝日歌壇から(３月24日掲載・其のⅣ)

[佐佐木幸綱選]

(高松市・菰渕昭)
〇　　税理士の終幕として自らの確定申告書きさらぎに書く

(富山市・松田わこ)
〇　　卒業式明るく弾こう私より先にピアノが泣かないように

(市川市・小田優子)
〇　　男子らが卒業証書振りかざし「さらばじゃ」「さらば」と交わす駅前

(高槻市・荻野直樹)
〇　　本当はフィギュアスケートはキライだと言い出しにくい宴会の席

(防府市・重田正一)
〇　　ひと住むは二軒となりし山里に税申告の広報車鳴る　　

(北海道・斉藤洋子)
〇　　森林が96パーセントのわが村にコンビニ2店深夜まで開く

(三郷市・木村義煕)
〇　　かわひらこ蝶の古名は透き通り歴史の中に消えていくなり

(川越市・小野長辰)
〇　　あなぐまやからすが来てる川原にて春のすすきは亀を隠せり

(西条市・亀井克礼)
〇　　柳鮠のさ走る影もすばやくて三月の川は光りて流る

(横浜市・江連夏帆)
〇　　今日もまた短歌を作る美しい見えない何かが消えないうち