臆病なビーズ刺繍

 臆病なビーズ刺繍にありにしも
 糸目ほつれて今朝の薔薇薔薇

今週の「朝日歌壇」から(12月26日掲載分・其のⅢ)書き込み中

2016年12月31日 | 今週の朝日歌壇から
[馬場あき子選]
○ 口閉ざしゐし蛤のやはらかき朝光にふとくちびる開けぬ (前橋市)荻原葉月

○ 真っ暗な殻にこもれる「すずめの担桶」刺蛾よ凍みる冬はこれから (岐阜県)棚橋久子

○ 白き山羊みどり少なき川べりに冬のごとくに立ちおるが見ゆ (岡山市)奥西健次郎

○ 水槽に入りゆくごとき美術館冬のアリアの低く流れて (福島市)美原凍子

○ へこんでも大学芋でよみがえる妹は強いそしてしなやか (富山市)松田梨子

○ 邪魔があることが恋だと悟りけり君と暮らして愛育めば (筑後市)近藤史紀

○ 大根はずぼんと抜けてほの暗い穴の底から気魂が昇る (蓮田市)斎藤哲也

○ まだ少し黒髪残る母の髪をボランティアさんがやさしくカットす (佐世保市)近藤福代

○ 柊の白く小さき花咲けり師走の香り濃く漂わせ (名古屋市)諏訪兼位

○ 今朝もまた小鳥集いて囀れり壊さずにある廃線の駅 (石川県)瀧上裕幸

○ 息白し一番ホームの蕎麦屋からようやく湯気が揺らぎ始める (秦野市)関美津子

○ あららぎの大樹にのぼりくれなゐの実をむさぼりて食ひゐし戦後 (埼玉県)酒井忠正

今週の「朝日歌壇」から(12月26日掲載分・其のⅡ)書き込み中

2016年12月30日 | 今週の朝日歌壇から
[高野公彦選]
○ 十一月三日日本晴れなり自由とは一人のドライブひとりのランチ (佐伯市)泥谷貞子

○ 来る年の日記帳求めひとわたり捲りて家族の記念日しるす (福岡県)城島和子

○ 整然たるデモに驚く感情の起伏はげしき民族なれば (大阪府)金 亀忠

○ 今日はもう起きたくないとおもう日の雨の中でも小鳥はうたう (丸亀市)金倉かおる

○ 出すことを今年でやめる年賀状に夫の描きたる南天の赤 (盛岡市)山内仁子

○ 藷の蔓末生り南瓜食べた獣いまはきつねのうどんをすする (八王子市)相原法則

○ マグカップの取っ手にひとさし指をかけすこし未来とゆびきりげんまん (神奈川県)九螺ささら

○ 雪吊りの景整ひて人夫らはいつ雪きてもといふ顔をする (福井市)甘蔗得子

○ トラクタの後追ひゆけりくちばしで深く掘り得ぬサギとセキレイ (宗像市)巻 桔梗

○ 何歳になっても男は自転車を選んでいるとき少年の顔 (東京都)上田結香

○ 3キロの仔ねこをいだきおもいだすあのひうまれたちいさなきみを (新潟県)熊木和仁

○ 道草でいつもとちがう帰り道とこやのうらにいっぱいタオル (東金市)矢口由依
   

今週の「朝日歌壇」から(12月26日掲載分・其のⅠ)書き込み中

2016年12月29日 | 今週の朝日歌壇から
[佐佐木幸綱選]
○ 秋深し日本農業新聞の広告に「罠」の字の多きこと (兵庫県)福本 都

○ じりじりと忍耐の糸が炙られる子よパンツはけ、こらズボンはけ (高崎市)笠井真理

○ フクシマの被災地のごみは除染し移染し果てしなき未来 (東京都)松崎哲夫

○ 窓口に「くじょうの会」と呼ばれたり十三年目の九条の会が (岡崎市)佐野都吾

○ 髪ゆらしキラキラネーム呼び合うてジャングルジムに冬日あまねし (横浜市)高橋嘉子

○ 杖をつき大型船の船底の事故死の現場に行きて経読む (三原市)岡田独甫

○ 老眼に丸き眼鏡をしてみても性根は四角と娘ら笑う (茅ヶ崎市)大川哲雄

○ 娘二十歳溢れる髪を後ろ手に編み込んでいる姿美しい (牛久市)久保田和佳子

○ 日暮どきのドライブたのし北狐、鹿、狸に出会うわが峡の村 (北海道)斉藤洋子

○ 冬の朝川から湯気の立つ中で鴨たちは食む浅瀬の草を (東久留米市)関沢由紀子

○ そのクエは歯磨き好きでお目当ての飼育員の前口を開け待つ (千葉市)鈴木一成

○ さまざまな赤や黄色に窓染まるバスに見ている君の横顔 (春日部市)五十嵐和子

○ 脚光を浴びたる人が又一人麻薬に溺れ年暮れるなり (前橋市)船戸菅男

今週の「朝日歌壇」から(12月19日掲載分・其のⅢ)書き込み中

2016年12月28日 | 今週の朝日歌壇から
[高野公彦選]
○ 成り立ちを知れば恐ろし民の上に网をかぶせて罠と読ませる (大和郡山市)四方 護

○ 青森より花咲く房総に越してきて冬に働く蜜蜂一億 (松戸市)猪野富子

○ 生きてるか死んでいるかも分からずに年賀状書く季節となれり (筑紫野市)二宮正博

○ パジャマ売場もう着る母はいないのにまた立ち止まる新柄を見て (宝塚市)河内香苗

○ 撒く塩が土俵の上に交叉して力士たたかう時近づけり (高松市)菰渕 昭

○ ガラス窓孫の手形の鮮やかに置きみやげとて拭かずそのまま (豊中市)佐々木綾子

○ 点滴のみ一0日間で七キロのダイエットになり罪もながせり (ホームレス)坪内政夫

○ 順繰りに鉢植えを覗き込んでゆく起き抜けの母はミツバチのよう (長野市)小山美由紀

○ 来て困る三日続けて来なければ案じる不思議猪の身のうえ (久留米市)塩山雅之

○ 朝を急ぐ快速列車 通過駅に警笛ふぉんと零してゆけり (熊本市)垣野俊一郎

○ 医者にしか行けぬ自分にぬくぬくの安価な赤いシャツ買いてみる (飯田市)草田礼子

○ 友や子にみかんを送る宛名書き今年も我の字が行く幸せ (磐田市)海山綾子

○ 駐車場が広く取れると過疎の地に移転を決める市立図書館 (上尾市)清水昇一


今週の「朝日歌壇」から(12月19日掲載分・其のⅡ)書き込み中

2016年12月27日 | 今週の朝日歌壇から
[佐佐木幸綱選]
○ 知里幸恵の書を呉れし人にこのところ逢はねば思ふエゾスカリユリ (川越市)小野長辰

○ ポケットに『地獄の季節』しのばせてまがりくねった未来見ていた (仙台市)古谷隆男

○ 愛されて憎まれたひとフィデル逝く「ぜんぶ、フィデルのせい」しか知らぬが (神戸市)田崎澄子

○ 露天湯の岩にはさまり星仰ぐ山椒魚は独りぼっち (チェコ)クロウスカー美莎子 

○ 一年に三時間だけ羽目はずす運動会は獄中祭 (ひたちなか市)十亀弘史

○ バスタブの月をこぼさず身を沈め湯は私分だけ流れ出す (筑後市)近藤史紀

○ うすれゆく記憶減らない放射能黙らぬ原発4基福島に (埼玉県)島村久夫

○ いくさ場となりて呼び名を変へられし血波川いま畑をうるほす (宗像市)巻 桔梗

○ ふる里の丘にて軍歌をうたふ子よ遥かなる日の吾等なるらし (海老名市)川上益男

○ 五番街トランプタワーの静まりて囲いの外より写メが賑わう (アメリカ)悦子ダンバー

○ 東京に雪が降るなり東京に降らねば雪もニュースにならず (登別市)松木 秀

○ 読んで寝てまた読んで寝て二時間半フェリーは夜の港に入る (佐渡市)藍原秋子

○ 温泉で暖房してる猫小屋の猫を追出し狸居座る (三郷市)木村義煕







 



































今週の「朝日歌壇」から(12月19日掲載分・其のⅠ)

2016年12月26日 | 今週の朝日歌壇から
[馬場あき子選]
○ 野心なき生つまらぬと子に語るわれにはありきありて潰えき (名古屋市)長尾幹也

 島流し同然に名古屋勤務を命じられ、ご家族との別居生活を強いられるとは、作者ご自身も予想だにしなかったのでありましょう。
 それにしても、我が子に向かって「野心なき生つまらぬ」なんて暴言を吐くとは、人間は何歳になっても馬鹿なことを言うものである!
 若き日の長尾幹也さんは、世に言う猛烈社員であったのでありましょうか?
 [反歌] そのかみの猛烈社員の成れの果て名古屋の屋台で焼け酒を飲む


○ 貝塚のわきに座りて牡蠣飯を食べつつおればルーツなつかし (静岡市)篠原三郎

 本作の作者・篠原三郎さんの「ルーツ」、即ち、遠いご先祖は丸太を刳り貫いた小舟に乗って、南の島から渡来したのでありましょうか?
 [反歌] 名も知らぬ遠き島より流れ来し篠原総家のご先祖様よ


○ 蕎麦を食ふ迫真の演技なし終へて箸は落語家の扇子に戻る (神奈川県)九螺ささら

 「落語家」が「扇子」を「箸」に見立てて「蕎麦」を食う場面を、彼の三遊亭小遊三師匠が演じたら、それこそはまさしく「迫真の芸」と言うべきでありましょう。
 だが、これを称して「演技」と表現するとは、本作の作者・九螺ささらさんの言葉音痴ぶりには首を傾げざるを得ません。
 [反歌] 文を書く迫真の芸やり終へて筆は小遊三の扇子に還る


○ 口笛を吹いて歩けば雪虫がいつしかわれの肩におりたり (仙台市)小室寿子

 「われの肩」は「雪虫」にとっての音楽鑑賞の為の格好な座席であったのでありましょう。
 [反歌] 雪虫を肩に背中に留まらせて小室寿子は晩秋を詠む


○ 独房に秋の蚊を打つほの白き壁に小さき血の跡残し (ひたちなか市)十亀弘史

 私・鳥羽省三は「独房」はおろか「雑居房」にさえも入った事がありませんから、獄舎の様子はよく分かりませんが、「ほの白き壁」が「秋」の「独房」らしき雰囲気を醸し出しているのではないかしら?
 でも、あの俳人・小林一茶にだって、「やれ打つな蠅が手をする足をする」という、無抵抗な小動物の命を憐れむ句がありますから、ひたちなか市の獄舎にお住まいの十亀弘史さんは、濫りに「秋の蚊」を打ち殺したりしてはなりません。
 [反歌] 独房の壁に縋れる秋の蚊に語り掛けたり「寒くなつた」と


○ 牛塚の小高く残る百頭の狂牛病の牛埋む跡に (所沢市)若山 巌

 二句切れである点に留意して鑑賞しなければなりません。


○ 電飾を勝手に巻かれし冬木らの哀しき貌が我が内に棲む (石川県)瀧上裕幸

 「勝手に」は一考を要す。


○ おろおろと生きてきたりし年月をええじゃないかと思うこのごろ (金沢市)前川久宜

 今更後悔したところで取り返しがつきませんからね!


○ 雪降る季節になりました季節は巡る君がいてもいなくても (秋田市)金澤 忍

 これが朝日歌壇の入選作でありましょうか?


○ 美ら海に亀甲墓に米軍の基地に降る降る雨は滂沱と

 沖縄の米軍基地問題を扱った作品としては、沖縄の葬送様式として知られる「亀甲墓」を詠み込むなど、やや目先が変わってはいるが、所詮、同工異曲のレベルでしかありません。 
 

○ すっかり葉を散らせし欅のうれに見ゆ蛹となりて冬越す蓑虫 (新潟県)山田昭義

 「散らせし」は、「四段活用の動詞〈散る〉の未然形〈散ら〉に使役の助動詞〈す〉の連用形の〈せ〉が接続し、更にその下に自己の経験の回想を表す助動詞〈き〉の連体形〈し〉が接続」したものであり、その意は「(過去に於いて欅自身が)散らした」となる。 
 それにしても、「欅のうれ」にぶら下がっている「蓑虫」の「蛹」が見えるとは、本作の作者の視力が、彼のサンコさん並みであることには吃驚仰天してしまいました。


○ 過労死の記事を見てより役所から子の帰宅せる時間を控ふ (三原市)岡田独甫

 昨今の檀家衆はお寺さんの期待通りに葬式や法事などを行わなくなり、お寺さん側としてはお布施などの身入りが少なくなってしまったから、住職の跡取り息子が教員になったり市役所の吏員になったりする場合が多い、とか?
 ところで、2009年3月30日付けの朝日新聞の朝刊に、当週の朝日歌壇の入選作の一つとして、「父さんは和尚のくせにと言いし子がわれと差もなき和尚となれる」という作品が掲載されていて、その作者は、掲出作品の作者と同一人物、即ち、三原市にお住まいの岡田独甫さんである。
 本作の作者・岡田独甫さんは、三原市内のさる寺院の前住職とのことでありますが、彼のご子息は、御父上・岡田独甫大和尚の跡を襲って、件の寺院の住職を勤めながら、市役所の吏員としてのお勤めもなさって居られるのでありましょうか?
 それにしても、世知辛い世の中になってものではありませんか!
 [反歌] 酔つ払ひが階段から落ちて死んだと言ふ独甫和尚よご注意されたし


○ 草食のオオハクチョウが首伸ばし潜りて獲りし鮒を呑みこむ (埼玉県)島村久夫

 「潜りて獲りし鮒を呑みこむ」と、「草食」動物のくせして、食欲旺盛かつ貪欲獰猛な「オオハクチョウ」の一挙手一動が具体的に表現されている作品である。
 [反歌] 正確に言へば雑食と言ふべしオオハクチョウの大食ひ野郎 
 























今週の「朝日歌壇」から(12月11日掲載分・其のⅣ)掲載遅延多謝!平身低頭!

2016年12月25日 | 今週の朝日歌壇から
[佐佐木幸綱選]
○ 白鷺が沼に戻ってくる夕べ静かな白い騒ぎとなれり (館林市)阿部芳夫

 「静かな白い騒ぎ」とは「白鷺」の鳴き声であり、それだけが手柄の一首である。
 とまで記しましたが、よくよく考えてみると、「白鷺」と呼ばれるのは「コサギ、チュウサギ、ダイサギ(チュウダイサギ、オオダイサギ)」であり、その裡の「オオダイサギ」だけが冬鳥であり、それ以外は留鳥か夏鳥ですから、「白鷺が沼に戻ってくる夕べ静かな白い騒ぎとなれり」という、本作の叙述に合致する「白鷺」は「オオダイサギ」だけということになりましょう。
 その点を含めて、作者の阿部芳夫から本作の成立事情に就いてお聞きしたいと思いますが、如何でありましょうか?
 [反歌] 留鳥がどうして戻って来るもんか白い騒ぎは白けた騒ぎ


○ 原発の不惑年齢変わるらし六十年に定年延びて (奥州市)及川和雄

 論語に曰く、「四十にして惑わず」と。
 自公連立政権のごり押しに依って再稼働が決まった、鹿児島県の川内原発や新潟県の柏崎刈羽原発などは、「四十にして惑わず」、定年時期を二十年後に先送りしたのでありましょう。
 [反歌] 原発は耳順はず六十になつても定年退職せず


○ 去る人の背中寂しく遠ざける銀杏並木の遠近法が (羽曳野市)玉田一成

 次に引用する記事は「TPOJ通信」なるホームページのに掲載されている。「TPOJカスタマーサポートの佐藤」さんと仰る方のお書きになったものである。
 どう記事は、掲出の玉田一成作の鑑賞に資する点が大なれば、ここに斯くして引用させていただく次第であります。
 筆者の〈TPOJカスタマーサポートの佐藤さん〉に於かれましては、宜しくご許容賜りたく篤く篤くお願い申し上げます。

 こんにちは、TPOJカスタマーサポートの佐藤です。/今年もいよいよこの季節がやってまいりました。/今週の木曜日、11月20日はボジョレー・ヌーボーの解禁日。/…と書くと、この日を心待ちにしているかのように聞こえるかもしれませんね。ですが、渋めの重口ワインが好きな佐藤は、じつはフレッシュなタイプのボジョレーはあまり飲みません。/ただ、何れ熟成することを思えば、その出来はやはり気になります。/何でも、天候に恵まれて味の良い葡萄が採れたことから、かなり期待ができるとの声が高い今年のボジョレー。前評判通りの味に仕上がっていることを願いつつ、解禁日を待ちたいと思います。/東京都心の紅葉スポットと聞いて、真っ先に思い浮かぶところといえば、明治神宮外苑のイチョウ並木でしょうか。/映画やテレビドラマのロケ地として使われることも多く、黄葉のイチョウが作り上げる見事な晩秋の風景は、どなたも一度は目にしたことがあるのではないかと思います。/そんな神宮外苑のイチョウ並木。その景観の美しさには、黄金色のイチョウのみならず、じつに工学的な理由が隠されておりました…。/◆◇◆◇ 計算して作られた都心の紅葉スポット◆◇◆◇/円錐形のイチョウがシンメトリーに並び、一枚の絵画のような美しさを繰り広げる明治神宮外苑のイチョウ並木。/約300mに及ぶ道沿いには左右それぞれに2列ずつ、計146本のイチョウが植えられているのですが、その植樹にあたって取り入れられた遠近法が、この並木道の美しさを生んだと言われています。/神宮外苑のイチョウ並木は、苑内にある聖徳記念絵画館を正面にして、青山通りという国道から真っ直ぐに外苑の中央へと伸びる道なのですが、その地盤は絵画館側に向かって1m程低くなっています。/このイチョウ並木を手がけた東京帝国大学(現・東大)の折下吉延博士は、ここに遠近法を活用し、道並みがきれいに見えるよう勾配に合わせて植える木の高さに高低差をつけたのだとか。/そんな巧みな計算が作り上げたのが、整然と並ぶイチョウと並木道の奥に覗く絵画館が調和した、見事な景観だったというわけですね。/黄金色に例えられるイチョウの葉の美しさに、遠近法という工学的なテクニックが加わったとなれば、まさに鬼に金棒。/都心で紅葉が楽しめる名所として、神宮外苑のイチョウ並木が毎年多くの人を魅了し続けるのも、もはや不思議はありません!(以上、引用終り)

 尚「この記事を書いた人」、即ち「TPOJカスタマーサポートの佐藤さん」という方は、「2009年入社。マーケティングチームでライティング業務を担当しています。浅草生まれの葛飾育ち! 下町エキスがたっぷりと染み込んだ江戸っ子です‼」とか。
 [反歌] 浅草で生まれ葛飾育ちの佐藤さん 気っぷのいいのは寅さん並みだ
      眼鏡こそ掛けてはいるが美人ですカスタマーサポートの佐藤さん
      来る人の背丈だんだん高くする銀杏並木の遠近法が


○ 戦争は合法的に準備され合法的に眼前に立つ (ひたちなか市)十亀弘史

 時代が時代であり、総理が総理ですから、ひたちなか市にお住まいの十亀弘史さんと言えども安閑とした気持ちでは居られませんね!
 [反歌] 翁長知事防衛相に直談判「オスプレイを撤去しろ」と


○ 亡くなった人の医療費計算す生きていたから病気になれた (大和市)林 有美

 「病気」になったから「亡くなった」とも申せましょうか?
 [反歌] 何のため他人の医療費計算す?大和市役所の職員ですか?


○ つかの間のパートの休止深呼吸フィナーレを待つホルンの奏者 (深谷市)時田 清

 オーケストラの構成員の中での「ホルンの奏者」の出番は、主旋律を奏でるバイオリンなどの弦楽器と比較した場合は勿論のこと、同じ管楽器でもフルートやクラリネットなどと比較した場合でも、それほど多いとは言えません。
 とは言え、「フィナーレ」を前にしての「休止」はそれなりに貴重な一刻であると思われ、そうした折りの「ホルンの奏者」が「深呼吸」している様子は、サントリーホールなどで私も何回か目にしたことがあります。
 [反歌] 束の間のパートの休息時間には給湯室で仲間の噂


○ 意思表示早くしろよといつも思う曲がりながらは表示いらない (西条市)眞鍋ユカリ

 仰りたい事は私にもよく解りますが、「意思表示早くしろよ」だとか、「曲がりながらは表示いらない」などと言われたって、反射神経の鈍い高齢者ドライバーには無理な注文でありませんか!
 [反歌] 車間距離十分に取って止まったらグズグズされても事故起こさない
 

○ 「吃逆」が読めてマスク貰ったのデイケア通いのひととの句会 (長崎市)竹井留美子

 「『吃逆』が読めてマスク」を貰えるのならば、「吃驚」が読めた場合は何を貰えるのでありましょうか?
 [反歌] 吃驚が読めてビックリされちゃった!介護士たちは教養不足!


○ 晩秋の西に傾く太陽はストンと落ちるナックルボール (川崎市)小島 敦

 「ナックルボール (Knuckleball)」とは、「野球に於ける球種の一つであり、限りなくボールの回転を抑えた形で投じられ、捕手に届くまでの間に不規則に変化しながら落ちる変化球」である。
 従って、「晩秋の西に傾く太陽」が「ストンと落ちる」有様の隠喩として「ナックルボール」を用いる事は、必ずしも適切とは言えません。
 [反歌] 山の端に傾き落ちる太陽の如し兆治のフォークボールは


○ 二センチのヒール鳴らして塾へ行く今日の私は二センチ大人 (仙台市)赤松みなみ

 「ヒール」が「二センチ」高くなれば「二センチ」分だけ躓き易くなりますから、その点には十分にご注意なさって「塾」通いをなさって下さいませ!
 [反歌] 偏差値が二ポイント下落してもなお次週を期して頑張るみなみ 

今週の「朝日歌壇」から(12月11日掲載分・其のⅢ)掲載遅延多謝!平身低頭!

2016年12月24日 | 今週の朝日歌壇から
[馬場あき子選]
○ 掬われるも掬われないも幸せは五分五分である池の金魚ら (大和郡山市)四方 護

 夜店の「金魚掬い」の金魚は、「元々はくず金魚〉と呼ばれ、〈ひと馬穴なんぼ〉という単位で売買され、金魚掬いの金魚として使われる他に、動物園で爬虫類などの獰猛な動物の餌として使われる」という話を何処かで聴いたことがあります。
 [反歌] 程々に長生きしなけりゃなりません介護施設は姥捨て山だ


○ 枯色の落ち葉を踏みて足早にもとの職場の前を通りぬ (広島市)熊谷 純

 ご本人としては、そんな気でなさっているのでは無いかも知れませんが、元の同僚から「彼は首になった腹いせに嫌がらせをしている」とも思われかねませんから、即急にお止しになった方が宜しいかと、私は思います。
 [反歌] 獰猛な犬の綱曳き髭立てて辞めた会社の前を闊歩せり


○ 隠居ゆえ死者出で途中で経を読むこともなければゆるり酒飲む (三原市)岡田独甫

 「この生臭坊主め、何を抜かすか!」といった感じの一首である。
 一般的な傾向として、私たち日本の庶民は、仏教寺院の経営者たる僧侶たちを聖職者として捉えがちでありますが、廿一世紀の今となっては、そうした固定観念から解放されなければならないのかも知れませんね?
 [反歌] 住職に隠居も糞もあるもんか!自分が死んだら自分で経読め!


○ 白鵬といえども勝ちはひとつずつ気力重ねてこし一千勝 (東京都)松本知子

 いま時、この日本に白鵬ファンがいらっしゃるとは存じ上げませんでした。
 [反歌] 「これ見たか!」って言わんばかりの面付きで懸賞金を受け取る白鵬


○ 外国人の群るる函館朝市に干物売り子の英語ロシア語 (前橋市)荻原葉月

 なにしろ、一億総大卒時代が到来しておりますから、「函館」の「朝市」に「英語」は勿論のこと「ロシア語」ぐらいは話せる「売り子」が居たって何の不思議もありません。
 それに、〈火事場の馬鹿力〉ちゅう言葉もありますから、いざとなったら、私だって「ロシア語」ぐらいは話せるのかも知れません。
 [反歌] ロシア語で「アベノミクス」は何と言う「目糞鼻糞耳糞歯糞」


○ 菊薫る日本庭園たたずめば異国の人の声のみ聞こゆ (神戸市)川村みつる

 国内旅行より海外旅行が割安でサービスも宜しき昨今ともなりますと「さもありなむ」!
 [反歌] どべ薫る汲み取り便所で用足せばお釣り貰って気持ちが悪い


○ 晩秋の殺風景に力湧きブータンルリマツリ紫に咲く (飯田市)草田礼子

 本作に接して、初めて「ブータンルリマツリ」という名称の花の存在を知りましたが、何の事は無く、我が家の前の石段通りを百段余り上がった先に在る、小公園の元の砂場の脇の崩れた石垣に這い蹲るようにして咲いている花が、件の「ブータンルリマツリ」でありました。
 インターネットで検索したところ、「ブータンルリマツリは、ヒマラヤ原産の低木です。ルリマツリモドキと同属で花が似ているので混同されることがあります。花は小さくやや地味な印象ですが、枝がまっすぐに伸び、樹高もルリマツリモドキよりは高くなります。栽培したところでは、耐寒性、耐暑性があり、育てやすい花木と言えます。」との、真に丁寧な解説が為されていて、大いに参考になりました。
 お書き込みなさった方には、篤く御礼申し上げます。
 [反歌] 熱くとも寒くとも咲く花ブータンルリマツリに永遠に幸あれ!
 なにしろ、原産地のヒマラヤは、某経済大国にさんざん蹂躙されておりますから、私としては「ブータンルリマツリに永遠に幸あれ!」と祈らずに居られない気持ちにもなるのです。


○ つつましき婦人の欠伸映りをり土俵桟敷は油断のならぬ (岩手県)山内義廣

 大相撲も本場所とは言え、名古屋場所や九州場所ともなりますと、十五日間、毎日、和服のお召し換えをなさったご高齢のご婦人や、明らかにその筋の方の奥様(第一か第二かは判然としませんが?)と思われるご婦人が砂被り席にお座りになられ、時には、負けて土俵から転げ落ちて来る力士に抱き着かれている、といったような光景が見られたりします。
 本作の場合は、そうしたご婦人方のお一方が、たまたま「欠伸」をなさったのを、意地の悪い某テレビ局のテレビカメラが捉えたのでありましょう。
 私としては、「真にお気の毒様」としか申し上げようがありませんけど!
 [反歌] 土俵下負けて転げた豪風に抱き着かれたのは博多芸者か


○ はなみずきの赤い実ついばむ四十雀しゅぴちゅぴつぴぴソプラノで鳴く (川崎市)中堀きみ子

 「四十雀」が「ソプラノで鳴く」のを擬音化すれば「しゅぴちゅぴつぴぴ」となるのかしら?
 本当のことかしら?
 [反歌] チュピチュピチュ、チュチュチュチュピチュピ、チュピチュピチュ、〈ダルビッシュ有がガムを噛んでる〉
      チュピチュピチュ、チュチュチュチュピチュピ、チュピチュピチュ、〈前田健太もガムを噛んでる〉
      チュピチュピチュ、チュチュチュチュピチュピ、チュピチュピチュ、〈マー君夫妻もガムを噛んでる〉
      チュピチュピチュ、チュチュチュチュピチュピ、チュピチュピチュ、〈イチロー選手はガムを噛まない〉
      チュピチュピチュ、チュチュチュチュピチュピ、チュピチュピチュ、〈上原投手は勿論噛まない〉

今週の「朝日歌壇」から(12月11日掲載分・其のⅡ)爆笑短歌鑑賞!乞う、拍手喝采!

2016年12月23日 | 今週の朝日歌壇から
[永田和宏選]
○ 小春日の空流れ行く蜘蛛の糸、雪むかへとはみちのくことば (蓮田市)斎藤哲哉

 「雪迎え(雪むかへ)」とは、「晩秋の小春日和に、上昇気流に乗って空高く伸びた糸にぶら下がった子蜘蛛が飛行する現象。快晴の空に銀色の糸が光って流れる。この後、雪の降る時候になるところから言う」とか。
 「雪むかへ」は、山形県の米沢盆地などでよく見られる現象であるので、作者の仰る通り「雪むかへとはみちのくことば」なのかも知れません。


○ どこからが私どこまでが私、雪虫ふわりふうわりふわり (福島市)美原凍子

 本作の作者は、現在は福島市にお住まいの美原凍子さんである。
 この作品の上の句にもある通り、人間というものは、時折り「どこからが私」で「どこまでが私」なのかさっぱり判らなくなる事がありますが、そうした場合の多くは、あちらこちらと際限も無く口出しをしたりする場合なのかも知れませんから、その点に就いては、お互いに留意して置かなければなりません。


○ 冬の蚊のうすき余白を生きるがにとぎれとぎれに澄みし翅音 (福島市)新妻順子

 そうです。
 前作の作者と同じ福島市にお住まいの新妻順子さんの仰る通りなのです。
 「とぎれとぎれに澄みし翅音」を立てながら辛うじて棲息しているのは「冬の蚊」であり、その「冬の蚊」は「うすき余白を生きる」が如くに棲息している訳でありますが、私たち後期高齢者も亦、「冬の蚊」が「うすき余白を生き」ているがの如くに「ぎれとぎれに澄みし翅音」を立てながら、余生を生きて行かなければならない存在なのかも知れません。
 ところで、「うすき余白を生き」ている「冬の蚊」が「とぎれとぎれに」に立てる「澄みし翅音」とは何ぞや?
 辛うじて「うすき余白を生き」ている、私たち後期高齢者が「とぎれとぎれに」に立てることを許されている「澄みし翅音」とは何ぞや?
 それは、例えば、本作の作者の新妻順子さんや、新妻順子さんと同じ福島市にお住まいの美原凍子さん、そして、私・鳥羽省三の場合は「短歌を詠む」ことでありましょう。
 同じ短歌と言ってもさまざまなものが在りますが、この場合の「短歌」は「うすき余白を生きる」「冬の蚊」が「とぎれとぎれに」立てる「澄みし翅音」の如き短歌でなければならないのでありますから、その内容は自ずから限定されましょう。
 即ち、被害者意識丸出しで声高に「アベノミクスは類い稀なる失政だ」などと言ったりする内容の短歌は「澄みし翅音」の如き短歌とは言えないのかも知れません。


○ 朝食にりんご夕食後にみかんセンター試験まで二か月を切る (富山市)松田梨子

 「りんご」を食べることの効用に就いては、「一日一個のりんごは医者を遠ざける」とも言われ、「りんごが赤くなると医者が青くなる」とも言われ、「みかん」を食べることの効用に就いても「りんご」の場合と同じようなことが言われておりますから、お風邪など召されませんように、「りんご」や「みかん」をどんどん食べましょうと、産地の農家の方々がおっしゃっています。


○ 孫子みなおばあちゃん家と親しめる戸主はわれなりじいちゃん家なり (長野県)千葉俊彦

 「戸主はわれなり」とは〈馬鹿丸出し〉であるが、でも、たまに訪れる「子」や「孫」たちの前で「戸主はわれなり」と言ったりして威張り散らしてみたいものですね!
 長野県の片田舎にお住まいの本作の作者・千葉俊彦さんのお気持ちは、私にもよく解りますよ!


○ 可口可楽を神無月の夜買いにゆくそこかしこに咲く可口可楽の花 (神奈川県)九螺ささら

 この寒い最中の「神無月の夜」に、「可口可楽」を「買い」に行ったりすると、狐に化かされることだってありますから、よくよく注意しなければなりません。


○ 人を殺さず殺されず来し信頼のわれらの兵士殺すかも知れぬ (天童市)鴨田希六

 いやしくも「兵士」たる者の本分は何処に在りや!
 そもそも、現憲法下の何処に「兵士」の在りや!
 [反歌] 自衛隊は軍にあらざれば隊員は兵士にあらず敵など持たず


○ 五能線に雪のふる頃さびしげな湯宿に地酒飲みたきものを (仙台市)沼沢 修

 斯く申す私は、「五能線」は嫌い!「雪のふる頃」も嫌い!「さびしげな湯宿」なんて大の嫌い!勿論「地酒」なんか大の大の嫌いなんです!
 こんなにも寒い時期にあんなにもつまらない所に行く者の気が知れません。
 [反歌] 四つ橋線玉出駅から徒歩五分「バロンドーラ」の海鮮料理


○ カンさんは竹かんむりのカンですか訊かれて微笑む私の名前 (神戸市)康 哲虎

 本作の作者・康哲虎(カン・チョルホ)さんは、かつては「神戸の虎」と呼ばれたプロボクサーでありました。
 その彼を掴まえて「カンさんは竹かんむりのカンですか」などと訊くなんて、ものを知らないのもいい所ではありませんか!
 訊いた本人としては、彼が在日三世であることを知らないで、「カンさん」と呼ばれる彼の苗字が〈菅元総理〉の〈菅〉でも〈寒寒カラスの勘三郎〉の〈寒〉でも無くて、〈土管〉の〈管〉かと思って訊いたのでありましょうが、訊かれた本人としては「微笑む」しか無かったのでありましょう。
 それにしても、お人柄の宜しい元プロボクサーであることよ!
 [反歌] 「キンさんは平均点のキンですか」〈IQ80〉の僕つかまへて 


○ 水槽にメダカ幾何売られゐて秋のカフェエに人声低き (徳島市)上田由美子

 一首の眼目は「メダカ幾何」の「幾何(いくばく)」に在り。
 即ち、件の「メダカ」は売れ残りのメダカなのでありましょう。
 [反歌] 水槽に琉金数匹揺られゐて入り日射し込む「眼鏡の山田」 

今週の「朝日歌壇」から(12月11日掲載分・其のⅠ)私事多忙に因り、掲載遅々として進まず!深謝!

2016年12月22日 | 今週の朝日歌壇から
[高野公彦選]
○ 覚めて食ひ歩いて詠んで飲んで寝るけふも日記は一行に足る (ひたちなか市)篠原克彦

 一見すると己が身のぐうたらさぶりを曝け出して見せているような一首でありますが、気儘とも思われる一日の日程の中に「詠んで」が、即ち〈短歌を詠む事〉がきちんと位置付けられている点に、朝日歌壇の入選者席の常連たる彼・ひたちなか市にお住まいの篠原克彦さんの面目躍如たるところが認められる作品である。
 また、作者の篠原克彦さんは、単に「覚めて食ひ」だけでは無くて、食べた後には「歩いて」いるなど、健康保持の為のご努力もなさって居られる点にも、私たち本作の鑑賞者としては、留意しなければなりません。
 [反歌] 酔つ払ひ、一昨日・昨日と午前様、女房怒つて朝飯食へぬ


○ 六十五で胃を除り現在九十五オリンピック見たしと日々養生す (四街道市)出浦章子

 件のトラブル続きの東京オリンピックなるお祭りに、恐れ多くも御年「九十五」歳になられる千葉県四街道市にお住まいの作者・出浦章子さんをしてご見学なさしめるに値する価値が在りや否や!
 其処が問題である?
 [反歌] クーベルタン伯スピリッツいま何処、IOCは利権絡みぞ
      参加することに意義などありませんメダル得てこそアスリートならむ


○ 刑務所の周辺に棲む鳩たちに負傷者多し鉄条網による (アメリカ)郷 隼人

 本作の作者・アメリカ合衆国にご滞在の郷隼人さんという方は、受刑者という不自由な状態に身を置かれながら、ご自身の身の周りの事象に就いてあれこれとお心遣いをなさる方であり、この度は、「刑務所の周辺に棲む鳩たちに負傷者」が多い事を心配なさり、その原因の一つとして、刑務所の周辺や敷地内に「鉄条網」が敷かれている点を上げているのである。
 私が思うに、だからとて、刑務所から全ての鉄条網を撤去する訳には行きませんよね!
 なにしろ、アメリカ合衆国の次期大統領に選ばれた方が、アメリカとメキシコとの国境にフェンスを敷設すると仰る世の中でありますからね!
 [反歌] アリゾナの刑務所には毒蛇もゐると言ふからご注意されたし


○ 申年の賀状見ながら酉年の賀状認む霜月二十日 (名古屋市)福田万里子

 彼の吉田兼好が作『徒然草』に、「九月廿日の比、ある人に誘はれ奉りて、明くるまで月見歩く事侍りしに、思し出づる所ありて、案内せさせて入り給ひぬ。荒れたる庭の露しげきに、わざとならぬ匂ひ、しめやかにうちかをりて、忍びたるけはひ、いとものあはれなり。よきほどにて出で給ひぬれど、なほ事ざまの優におぼえて、物のかくれよりしばし見ゐたるに、妻戸をいま少しおしあけて、月見る気色なり。やがてかけこもらましかば、口惜しからまし。あとまで見る人ありとは、いかでか知らん。かやうの事は、ただ朝夕の心づかひによるべし。その人、ほどなくうせにけりと聞き侍りし」とある。
 この文に見られる「九月廿日」には、「満月でもないが三日月でもなく、風情ある月が見られる時節」という意味が在り、作者の兼好としては、絶対に譲歩することが出来ない日付であると判断されますが、掲出の一首「申年の賀状見ながら酉年の賀状認む霜月二十日」の裡の「霜月二十日」には、それほどの意味はありません。
 思うに、掲出の一首の作者・福田万里子さんは、「申年の賀状見ながら酉年の賀状認む」という、この一首の四句目までを詠む事が出来たのではありましょうが、その後の五句目の七音の表現が思いつかず、我が国の短歌表現の常道の一つとされ、心ある人々から卑しめられている表現、即ち、「一首の末尾に季節や天候を表す言葉を置く」という、極めて安易な表現を採るに至ったのでありましょう。
 こうした遣り方は、落語や漫才などの題材とされて大衆を笑わせる短歌の詠み方、即ち、「三句目までに俳句紛いの〈五・七・五〉を置いて、その後に〈それに就けても金の欲しさよ〉とする遣り方」と同等な遣り方でありましょう。
 その一例を挙げますと「古池や蛙飛び込む水の音それに就けても金の欲しさよ」「青蛙おのれもペンキ ぬりたてかそれに就けても金の欲しさよ」等などである。
 [反歌] 申年の賀状みながら書く賀状それに就けても金の欲しさよ


○ 芭蕉なら何と詠みけん松島の雲間に出でしスーパームーン (仙台市)沼沢 修

 [反歌] 芭蕉なら空など見ずに寝たはずだ十一月十四日のスーパームーン


○ 煌々とコンビニ夜を賑わいて天心ちさきスーパームーン (福山市)武 暁

 今年の十一月十四日の「スーパームーン」を見る為には、殊更に「コンビニ」まで足を運ぶ必要はありません。
 当夜の「コンビニ」を賑わわせた連中は、恐らくは、友達が一人も居ない落語家・三遊亭円楽師匠みたいな奴らでありましょう。
 [反歌] 煌々とLEDの瞬きてファミリーマートおでんも熱し


○ イギリスの八日の旅に自販機をついぞ見かけず国美しき (川越市)吉川清子

 「自販機の無い国=美しき国」ではありません。
 また、僅か「八日」ぐらいイギリスを旅行したからと言って、イギリスに自販機が在るかどうかの判断は出来ませんよ!
 私の息子は今年の八月にイギリス留学から帰って来ましたが、彼の話すところに拠ると、「イギリスのヒースロー空港にコカ・コーラ社の自販機が確かに在った」と、いうことでありましたよ!
 [反歌] 大量に毛虫発生!英国のロンドン郊外路上蒼白!


○ 小春日に行きも帰りも同じ声ローカル線の声佳き車掌 (東京都)夏目たかし

 東京都中の「ローカル線」と言えば、JR東日本の「八高線、青梅線、五日市線」、及び私鉄の「東武大師線」がそれに当たると思われますが、果たして「行きも帰りも同じ」「声佳き車掌」さんに巡り会えるものやら?
 [反歌] 午前中川崎市内を散歩して「ナンバー1」の車に遇つた 


○ 心臓さん今日も元気で働らいて祈る気持で揉むふくろはぎ (茅ヶ崎市)和田光子

 [反歌] 晋三さん明日は風疹に騙されて吠え面掻くなふくろはぎ揉め


○ やってみてはじめてわかることがある自分がそれをしたいかどうか (堺市)一條智美

 [反歌] 遣つてみて初めて解ることが在る自分で掻いても気持ちがいいか?


古雑誌を読む(角川「短歌」1016年7月号)

2016年12月21日 | 古雑誌を読む
   「大学短歌会が行く!愛知淑徳大学短歌会」より


○ 骨壷が海に流され沈むころ祖母はボトルシップとなるか  久納美輝

 「海に流され」やがて「沈む」運命にある「骨壷」に収められた「祖母はボトルシップとなるか」との妄想は、あまりにも〈乙女チック〉である。
 本作の作者の故郷は、あの東日本大震災の被災地でありましょうか?
 「ボトルシップとなるか」とのロマンチックな想像は、今は亡き「祖母」へのせめてもの餞でありましょうか?
  [反歌] 骨壷を頭に被った大蛸が首都東京に襲来するぞ  鳥羽省三


○ 細長き黒を抱えたミサイルと死ぬためだけに生まれた蚕  本目詩織

 「黒」は不吉な色。
 故に「細長き黒を抱えたミサイル」とは、やがて我が国に襲来するかも知れない、某ワンマン青年に支配されている国から放たれた核ミサイルを積んだ○○号でありましょう。 
 その極めて邪悪な「ミサイル」と対比されている「死ぬためだけに生まれた蚕」とは、私たち日本の後期高齢者でありましょうか? 
 明治時代の我が国は「蚕」が吐き出す〈生糸〉を欧米各国に売却し、その利益で以て船舶や兵器などを欧米の先進国から買い求め、彼の二つの大戦をやらかして世界中から総スカンを食いました。
 未だ年若い、本作の作者・本目詩織さんに私から申し上げますが、過日の轍を踏み、世界中から総スカンを食うような国にならないように、我が国の横暴な政治家や経済人を厳重に見張れるような有権者になって下さい。
 [反歌] 細長き紐を引き摺り狗が行く脱北者には還る国無し  鳥羽省三  


○ ほろびると感じる我に風吹きてちるちるちるるちる音もなく  牧野ふみ

 「ちるちるちるるちる音もなく」とは、作者の性格とは別にあまりにも遊びに過ぎる表現でありましょう。
 それにしても、未だ大学生にして「ほろびると感じる」とは?
 本作の作者・牧野ふみさんは、就活戦線で内定を一個も貰えなかったのかも知れませんし、或いは、三年間お付き合いなさって居られた恋人に振られたのかも知れません。
 そのいずれにしろ、未だ二十歳を過ぎたばかりで「ほろびると感じる」とは、彼女の性格はあまりにも真面目で暗過ぎます。
 私の古い友人の娘のSは名古屋大学に在籍しているとの事ですが、おかちめんこのくせして〈名古屋嬢〉を自認して、日夜、名古屋市内の盛り場・錦界隈で遊び捲くっているとの噂です。
 牧野ふみさんはお名前からしてお淑やかなイメージですから、件の〈おかちめんこ〉の如き振る舞いは、例えご両親に頼まれてもなさらないかと思いますが、現代社会の都会に棲息する女性としては程々の〈遊び〉も必要です。
 何卒、残り少ない青春の日々を楽しくお過ごし下さい。
 [反歌] パン屑が散るちるミチル風に散る青い鳥には未だ逢へない  鳥羽省三

 
○ 卒業式終われば街に売りに行くこのセーラー服買ってください  松田菜々

 就職先に「セーラー服」姿で顔出しする訳にも行きませんから、用済みの「セーラー服」は「街に売りに行く」しか手が無いのでありましょうか?
 でも、まかり間違って変な小父さんの手に入ったとしたら、どんな事をされるかも知れませんから、お売りになる場合は、なるべくならば、大学構内で後輩の女子大生を売るようにしたら如何でありましょうか!
 それともう一点、昨今の大都市の盛り場には、女子高生や女子大生が身に付けた衣服を買おうとして徘徊する、一見紳士風のよからぬ熟年男性が存在する、との噂でありますから、その点にもよくよくご注意なさって青春を精一杯お楽しみ下さい。
 [反歌] 一本のマッチの燃ゆる束の間を吾は覗けりうら若き闇  鳥羽省三

今週の「朝日歌壇」から(12月5日掲載分・其のⅣ)本邦奔放初演!本日特出し大公開!乞う、日本国民皆読!

2016年12月20日 | 今週の朝日歌壇から
[馬場あき子選]
○ πと兀古代ギリシャと中国で生まれた文字は不思議な双子 (観音寺市)冨田高志

 例えば「『凹』は女陰(ほと)『凸』は男根(だんこん)交合は『凸』を『凸』に埋むる行為」といったような短歌を誰が詠んだとする。
 そんな短歌に対する朝日歌壇の選者諸氏の評価や如何?
 また、「妻(さい)と妾(しょう)たがひに性を同じくし嫉(そね)み妬(ねた)みて同棲不能」といったような短歌を私・鳥羽省三が詠んだとする。
 そして、そんな短歌を私が朝日歌壇に投稿したとしたら、果たして入選合格の運びと相成るのでありましょうか?
 文字の相似や篇(へん)や旁(つくり)を同じくする文字に関わる短歌は、これまでも一定の時期を隔てて新聞歌壇に再三投稿され、ある作品は入選作として紙面に掲載され、ある作品は没にされて闇から闇へとと葬られてしまったかと思われます。
 掲出の馬場あき子選の首席作品や、私・鳥羽省三が面白半分に即席で詠んだ前掲の淫靡な内容の二首などは、発想の奇抜さやアイデアだけが取り柄の作品だろうと思われるのであるが、新聞歌壇や結社誌の選者諸氏が、こうした作品の是非を判断する場合の基準はどの辺りにあるのでありましょうか?
 短歌というものは、必ずしも、国民大衆に愛国心や肉親愛や正義感や倫理道徳などを啓蒙し奨励する道具ではありません。
 だが、過去の一定の時期に於いて、短歌がそうした役割を果たしていた事は、今更隠しようも事実であるし、当、朝日歌壇の昨今の入選作の多くに見られる「反原発」、「反安保」、「反自衛隊の海外派兵」、「反トランプ」、「親憲法九条」、「親オバマ」、「親天皇制」といった傾向は、それと五十歩百歩の違いでしか無いと、私・鳥羽省三には思われるのである。
 昨晩の寝付きがあまり宜しくなかった所為なのかも知れませんが、ついうっかり、私の本音めかした冗談ごとを記してしまいましたが、かと言って、私には、前掲の二首の如き淫靡な内容の作品を当朝日歌壇に投稿して、親愛なる選者諸氏の短歌観を窺ってみようとする悪戯心などは、今のところ全く以てありませんから、選者諸氏に於かれましては、何卒、ご休心くださいませ。
 第一、初めから入選するはずのない即席の作品に、郵便葉書代金・五十二円を投資するほどの経済的な余裕は、年金暮らしの私にはありませんからね!
 [反歌] 机と椅子いつもセットで用ひられ「椅子」に「子」が付くことの不思議さ
      椅子の無い机は用を為さざるも机が無くても椅子は用為す
      斯く程に母に子供は必要で子供に母は必要でなし
 

○ 冬越しの注意など受けもらい来る友の「うちの子」メダカ十匹 (名古屋市)磯前睦子

 かつての或る秋の一日、東京二十三区内の何処かの墓地で「ミケちゃんの墓」なる墓標を目にした時、私は、それこそ目の玉が飛び出すほどにも吃驚仰天したものでありましたが、今となっては、それは私の認識不足の所為であったと、深く反省せざるを得ません。
 それにしても、たかが「メダカ」風情を「うちの子」とはね!
 私たち人間、特に日本人の増上慢も此処に至れりといった感じですね!
 [反歌] 天井裏もそもそ這へる青大将われらを守る屋敷神なる


○ 思い出は色なき風の中に住み秋深まると顔のぞかせる (東京都)青木公正

 今から六十年前に、北東北の田舎町生まれの私が初めて上京し、板橋区の志村橋を渡ろうとした時、私の新品の白いワイシャツを染めるような赤い色の風が吹いて来たのにはびっくりしました。
 あの頃の東京の川は、荒川にしろ、神田川にしろ、多摩川にしろ、濁りに濁っていたし、空気には気持ちの悪い化学薬品の匂いが混じっていたし、水道の水にはカルキ臭、東京も場末の板橋区内などでは、空吹く風にも赤や黄色の捺染工場の染め粉が混じっていたんですよ!
 本当の話ですよ!
 神に誓って私・鳥羽省三は嘘を言いません!
 まあ、こんな昔話をしてもキラキラネームの君たちは誰も信じたりはしないと思いますけれど!
 本作の作者の青木公正さんは、さる年の秋に二人目の恋人に振られたのでありましょうか?


○ 大阪の人はいつでも急いでるそんな活気だ地上も地下も (名古屋市)長尾幹也

 初めて大阪に行った時、私は地下鉄の車内の網棚に新聞が乗っていない事に気付きびっくりしましたが、本作の作者・長尾幹也さんは、単身赴任先の名古屋から大阪にご出張なさった折りに、「大阪の人はいつでも急いでる」のに気付き吃驚なさった、との事。
 でも、「大阪の人」が「いつでも」急ぎ足で歩いているのは、あれは、元禄の井原西鶴の頃からの伝統であり、何も今始まった事ではありません。
 で、もう一言申し添えますと、「大阪の人」が「いつでも急いでる」のは、あれは、〈大阪維新の会〉のお膝元の大阪の街が、特別に景気がいいからではありません。
 現実はむしろ逆で、今の大阪は東京からは離され、名古屋からは追い上げられて、不景気のどん底に陥ってるんですよ。
 その証拠として、こないだの朝日新聞の記事に拠ると、「関西電力の電気使用量があと半年も経つと中部電力のそれに追い越されてしまう」との事です。 
 そういう事ですから、本作の作者の長尾幹也さんも、「いずれ妻子の待っている大阪に帰ろう」などという気を起こさずに、名古屋嬢の蟹股足でも拝みながら、そのまま、名古屋市に住み着いてしまった方が賢明ですよ。


○ ノルウェーのサーモンのお寿司食べながら心の奥に雪が降ってる (神奈川県)九螺ささら

 「ノルウェーのサーモンのお寿司」を「食べ」たからといって「心の奥に雪が降ってる」とは、単純と言えば真に単純!
 私は、本作の作者の九螺ささらさんの事を、今まで、田螺の甲羅の如く、ひと曲がりもふた曲がりもしたご性格の女性だとばかり思って居りましたが、案外〈純情可憐な乙女〉なのかも知れませんね!
 私としたことが見損なってしまったわ! 


○ 大学は都会もいいなでも私雪景色が好き巣立ちの準備 (富山市)松田梨子

 大学入試も一時期の混乱状態から解放されて、松田梨子くらいの心掛けの宜しい受験者ならば、第一志望校に百発百中とまでは行かないけれども、かなりの確率で入れるようになりましたから、あと一ヶ月間じっくりと考えて、必ずしも地元の国立大学に拘らずに、ご自身の適性を活かせるような大学を選んで下さい。
 それともう一点申し添えますと、「大学入学=巣立ち」ではありません。
 ご両親や親戚の方々には、これからも迷惑を掛けるんですよ!


○ 難聴のゆゑの齟齬にて立ちつくす枯れ野にむごしわれの耳鳴り (浜松市)松井 恵

 「枯れ野にむごしわれの耳鳴り」とは!
 斯く申す、私も「難聴のゆゑの齟齬にて立ちつくす」場合が再三ですから、本作の作者の松井恵さんと私とは、「同病愛憐れむ」という間柄なんですね!


○ 捨て案山子あらぬ眼差しにあるものは農を捨てたる人の切なさ (東かがわ市)河野久之

 やや文意不明瞭な作品でありますが、一首の意は「刈り入れの終わった田圃で『捨て案山子』が『あらぬ』方向に『眼差し』を向けているが、彼の眼差しの彼方に『あるものは農を捨てたる人の切なさ』」といったところでありましょうか?

今週の「朝日歌壇」から(12月5日掲載分・其のⅢ)北方四島以南、本日堂々特出し大公開!乞う、ご期待!

2016年12月19日 | 今週の朝日歌壇から
[永田和宏選]
○ 映画鑑て踏み出す夜の歌舞伎町大統領はトランプだった (東京都)千葉迅太

 「桐一葉落ちて天下の秋を知る」ならぬ「映画鑑て踏み出す夜の歌舞伎町大統領はトランプだった」なのでありましょうか。
 「映画鑑て踏み出す夜の歌舞伎町」と、この度、米国の大統領に選ばれた「トランプ」氏とは、何となく通い合うところがありますから、本作は、近代短歌のOSで以てしても十分に読み解くことが可能な作品である。


○ 勝利宣言するトランプ氏の直ぐ横に一度も笑わぬ少年が居た (近江八幡市)寺下吉則

 選評に「少年には私も気づいた。不思議な雰囲気だった」とありますが、斯く申す私・鳥羽省三だって、あの異様な雰囲気を醸し出しいる少年の存在には気づいて居りました。
 選者の永田和宏氏は、こんなことを、自慢たらしくもよくも書いたものです!


○ トランプの当選の報駆ける朝可燃と不燃のゴミを出しおり (アメリカ)西岡徳江

 例え、アメリカの大統領にサイボーグが当選したって、ルーティンワークは確実にこなして行かなければなりません。
 ましてや、「トランプ」如きが「当選」したぐらいで、「可燃と不燃のゴミを出し」損なったりすれば、立ちどころにキッチンがパンクしてしまいましょう。


○ トランプを勝たせたものはなんだろうドア付近だけ混み合う車内 (熊本市)垣野俊一郎

 人間というものは、なかんずくアメリカ人というものは、そんなにも立派な考えを持っている訳ではありませんから、究極のところ、彼「トランプを勝たせたもの」は、人間の体内に巣食うありとあらゆる欲望でありましょう。
 本作の「ドア付近だけ混み合う車内」という下の句が、いみじくもそれを実証しておりましょう。


○ アメリカが憧れだったあの頃に学んだ英語は輝いていた (丸亀市)金倉かおる

 「アメリカが憧れだった」日本人は何処にも居て、私の教員時代の同僚だった英語教師のNK先生も亦、本作の作者と同じように「アメリカが憧れ」である事を、生徒を前にしてしきりに語って居りました。
 彼・NK先生は、T大付属高校から東京外大の英語英文科にストレートで入った事を誇りにし、生徒を前にして臆面もなく自慢しておりましたが、その所為かどうかは定かではありませんが、生涯独身で終わった、との専らの巷の噂であります。
 それにもう一言付け加えて申し上げますと、「あの頃に学んだ英語」に限らず、「あの頃」というものは万事につけ「輝い」ているものであります。
 これを逆にして言うと、「あの頃」が輝いているからこそ、私はさっぱり輝いていない昨今を生きて居られるのであります。


○ ざざぶりの白神山地のブナの木に樹間水とう流れを見たり (川崎市)大平真理子

 「樹間水とう流れ」とは?
 「樹間水筒流れ」なのか?
 それとも「〈樹間水〉と言う〈流れ〉」なのか? 
 自慢して言う訳ではありませんが、斯く申す、私が解らなければ、日本の人口のほぼ九割方が解らないものと判断されます。
 更に申し添えますと、「私・鳥羽省三にも解らないような書くな」ってことでもあります。


○ コンビニが取り壊されて駐車場白線だけが凩のなか (霧島市)久野茂樹

 「コンビニ」も焼肉定食ならぬ「弱肉強食」状態に陥ってしばし、立地条件が悪く売上の思わしくない店舗は、開店休業の状態ならまだしも、日本全国至るところの店舗が善戦虚しく閉店に追い込まれている、との事であります。
 下に示す一覧表は、2016年の日本全国のコンビニの各チェーンごとの店舗数の順位とその増減(昨年度との比較)の有様を示したのありますが、私たち本作の読者は既に熟知している事ではありますが、今の我が国のコンビニ業界は、大手三社と呼ばれる「セブンイレブン・ファミリーマート・ローソン」の三社の独占状態に置かれていて、中堅以下の各社のチェーン店の店舗数は、合計しても大手三社中の第三位のローソンの店舗数の半分にも満たない状態であり、しかもその多くは、売上不振などのもろもろの事情に因って、日を経るに従って店舗閉鎖の已む無きに至っているとの事であります。
 本作は、日本全国各地に数多ある「コンビニ」の中の一店舗が「取り壊されて」、その跡地に、かつての「駐車場」を偲ばせる「白線だけ」が虚しくも残って居て、それが、折からの「凩」に曝されている光景を詠んだものでありますが、こうした無残な光景は、ひとり本作の作者・久野茂樹さんがお住まいの鹿児島県霧島市のみならず、日本全国至る所で見られる光景でありましょう。

順位 チェーン   軒数  前年比
1 セブンイレブン   18650軒    6.6%増
2 ファミリーマート  18240軒   61.8%増
3 ローソン   12397軒    6.8%増
4 ミニストップ    2227軒 3.9%増
5 デイリーヤマザキ 1464軒 6.6%減
6 セイコーマート 1178軒 1.4%増
7 ポプラ 473軒 4.4%減
8 スリーエフ 539軒 4.2減
9 セーブオン 500軒 17.3%増
-- 合計 55699軒 3.2%増


○ ドイツでは一階の下にE階ありインゲといつも遊んだところ (京都市)中尾素子

 「インゲ」なる具体を登場させたのが手柄の一首である。


○ 万が一、千に一つの幸運を夢みて蝶にマーキングする (東京都)大村森美

 「蝶にマーキング」すれば、何かの幸運が齎されるのでありましょうか?
 其処の辺りの事情を、私は、私の友達の友達のまたの友達の、今は亡き大物衆議院議員の鳩山邦夫氏にお訊ねしたかったのである。


○ 遺しくれし通帳手続き済みたれば穴開けられて愈々死にぬ (水戸市)檜山佳与子

 いくら何でも「穴」まで開けて下さるとはね!
 銀行さんもご丁寧なものです!   

今週の「朝日歌壇」から(12月5日掲載分・其のⅡ)北方四島以南、本日堂々特出し大公開!乞う、ご期待!

2016年12月18日 | 今週の朝日歌壇から
[高野公彦選]
○ 初めての町にいつものコンビニがあっていつもの弁当を買う (長崎市)牧野弘志

 山陰のどこかの県が「スタバの無い県」として有名になっていたのでありましたが、この頃はその評判を聞かなくなりましたから、あのどうしようも無い「スタバ」さえも日本全国に行き渡ってしまったのでありましょう。
 そういう次第で、「初めての町」にだって「いつものコンビニがあって」「いつもの弁当を買う」事が可能です。
 今は〈坂の街・長崎〉にお住まいの牧野弘志さんよ、御地のコンビニ弁当のお味は如何でしたか?
 [反歌] 初めての女にも必ず何が在りいつも通りになになにするね


○ 暇なのか忙しいのか歩きつつスマホをなぞる街の人たち (神戸市)康 哲虎

 今更、かつての鉄腕ボクサーの康哲虎さんがお詠みにならなくても宜しいような、極めて有り触れた光景を詠んだ極めて月並みな作品である。
 選者の高野公彦氏は、作者の鉄腕に恐れをなしてやむを得ず、斯かる凡作を入選作となさったのでありましょうか?
 [反歌] 兆なのか億なのかは知らねどもオリンピック施設は金かかるもんだ


○ いのこずち誰が袖につくどんぐりの不作に泣きし熊の背に付く (東京都)松本知子

 「不作に泣きし熊」に疑義有り。
 本作の作者・松本知子さんは、件の「熊」が「どんぐりの不作に泣」いていた現場を実見した上で、この過去のご自身の実見に基づく回想作品をお詠みになったのでありましょうか?
 もしもそうでなかったならば「いのこずち誰が袖につくどんぐりの不作に泣いた熊の背に付く」となさった方が宜しいかと存じます。
[反歌] いのこづち誰の背に付くプーチンにおちょくられた安倍の背に付く


○ 誕生日十二月八日兵士等の餓死を悼んで断食をせむ (三郷市)木村義煕

 何を今更、彼の女性防衛大臣顔負けの斯かる武張った作品をお詠みになる必要があるのでありましょうか!
 第一に、飽食時代と呼ばれる現代日本社会に於いては、一日や二日、断食した程度では「兵士等の餓死を悼ん」だ事にはなりませんぞ!
 そこの辺りのところをよくよく注意して掛かれよ!
 三郷市にお住まいの木村義煕さん!
 [反歌] 開戦日十二月八日真珠湾の犠牲者悼んで食べる海鮮丼


○ 毎日が日曜だからこそわかる眠りに落ちる時の恍惚 (東京都)青木公正

 今は亡き城山三郎氏に『毎日が日曜日』というタイトルの極めて有名な小説があります。 
 そうした小説が既に書かれ、今も文庫本として売られて以上は、作中に「毎日が日曜」というフレーズを含む作品を詠む事は、法律で禁止されてはいないものの、作者としては、ある種の禁忌を犯しているような震えを感じるのではありませんか?
 それはそれとして、「眠りに落ちる時の恍惚」感を一度や二度経験した事の無い歌詠みは、この世の中で皆無だろうと私は推測している次第であります。
 [反歌] 日曜が週に三日も在るならば塾経営も採算取れる


○ ふるさとの海鳴りの音懐かしむ友より塩賜われば (碧南市)島谷春枝

 倒置法という極めて古典的な手法に成るこの作品の上の句と下の句とを逆転させて読めば、「友より塩賜われば」「ふるさとの海鳴りの音懐かしむ」となりますが、斯くしてみると、この作品の作者の島谷春枝さんは、なんだか、歌詠みでありながらの〈功利主義者〉のようにも思われます。 
 いえ、いえ、決して、決して、「功利主義」を体系化した、イギリスの哲学者学〈ジェレミ・ベンサム氏〉の謂うところの学問的な「功利主義」では無くて、もっともっと卑近で吝嗇な「功利主義」、即ち、「粟島から薩摩芋が送られて来たから一時だけ粟島の喜多さんを懐かしむ」式、「秋田からハタハタが送られて来たから一晩だけ秋田を懐かしむ」式の、あの極めて世俗的な「功利主義」なんですよ!
 [反歌] 功利主義とはよくも名付けたり!塩を送ればひとまづ休戦


○ 洞窟の蝙蝠のごと両肘を畳みてそっと収まるB席 (可児市)前川泰信

 一口に「B席」と言ってもさまざまであり、例えば、私のよく行く東京ドームにも「B席」なる名称の席が在り、その裡の「三塁側B席エリア」は「巨人応援席」となっているがゆえに、あまりにも騒々しくて、私は絶えてその席に座った事がありません。
 だが、私と同様に野球好きな若葉台の峰松さんの話に依りますと、例え「B席」と言えども、その面積は他の席と同等の広さであり、「洞窟の蝙蝠のごと両肘を畳みてそっと収まる」といった事は無い、との事であります。
 可児市にお住まいの前川泰信さんの仰る「B席」なる席は、一体全体、如何なる交通機関、或いは公共施設の「B席」なのでありましょうか? 
 [反歌] 洞窟に閉じ込められた山椒魚さへ時来れば娑婆に戻れる


○ 今年また蕾のこさず咲きくれし庭の小菊にとぎ汁ふるまふ (羽村市)草間暁男

 「今年また蕾のこさず咲きくれし庭の小菊」に「とぎ汁」を「ふるまふ」とは、何と亦、豪盛かつ古典的な〈お礼肥〉でありましょうか?
 「とぎ汁」一つで咲いたり咲かなかったりするとは、羽村市にお住まいの草間暁男さんのお庭の「小菊」も亦、なかなかの〈功利主義者〉である。
 [反歌] とぎ汁を振る舞へばこそ花も咲く庭の小菊に下肥やらむ 

今週の「朝日歌壇」から(12月5日掲載・そのⅠ)本日特出し大公開!乞う、ご期待!

2016年12月17日 | 今週の朝日歌壇から
[佐佐木幸綱選]
○ 寝息たてソファヘに寝る娘胸の上赤子が同じ顔して眠る (静岡市)菅沼美代子

 本作の作者の菅沼美代子さんは、作中の「娘」の母にして「赤子」の祖母なれば、三代続きの「同じ顔」をしみじみと眺めているのでありましょう。


○ バナナ・柿・みかんに昨日の芋そえてほとんどゴリラのわれの朝食 (東京都)松本知子

 上野動物園の「ゴリラ」は、「バナナ」などの果物の他に〈ゆで卵・ヨーグルト・プトトマト・レーズン・落花生・煮干し」なども食べる、とのこと。
 ならば、本作の作者・松本知子さんの「朝食」のメニューはゴリラ以下ではありませんか!


○ 戦争の授業はたった四時間で戦後へ走る高校日本史 (西条市)村上敏之

 「高校」の「日本史」の「授業」では、大学入試問題などとの絡みも在って、ごく最近になって近・現代史まで教えるようになりましたが、以前はせいぜい明治維新止まりでした。
 「たった四時間」だけでも太平洋戦争に就いて教え、「戦後へ走る」のはかなり進度が早い授業です。
 そもそも、高等学校学習指導要領で定められた日本史の授業時間配当は〈日本史A〉が二単位、〈日本史B〉が四単位である。
 四単位とは、四十分授業が週当たり四時間であるが、この程度の時間配当で戦後史まで教えるのは、マラソンを百メートル競争並みのタイムで走らなければならない事になるのです。


○ お日様が時計がわりの日々でしたふるさとの村谷あいの家 (静岡市)安藤勝志

 「谷あいの家」ともなれば、「お日様」が昇るのが午前8時過ぎ、沈むのが午後4時頃なのかも知れません。
 だとしたら、安藤勝志さんの「ふるさとの村」の一日は物凄く短かったんですね!


○ 冬用のセーラー服に着替えた日風も私もキリッとしてる (富山市)松田わこ

 本作の作者の松田わこさんは、素顔からして元々「キリッとしてる」んですよ!


○ 背伸びして暖簾を掛ける媼居てシャッター通りの昼が始まる (横浜市)毛涯明子

 「昼が始まる」が一首の眼目である。
 また、「背伸びして」もなかなか含蓄が深い表現である。
 「媼」だから腰が曲がっている。
 だから「暖簾を掛ける」のに「背伸び」する必要があるのか?
 また、「シャッター通り」だからお客が来るはずがないのに開店するのを「背伸びして」と言ってるのか?


○ 代替のバスの待合室となりし駅舎を飾るクレヨンの顔 (長野市)原田浩生

 「代替のバスの待合室となりし駅舎を飾るクレヨンの顔」には、いちいち「パパのかお」「ママのかお」「バアバのかお」「ジイジのかお」「へんなおじさんの顔」などとの説明書きが付けられています。


○ 何思うと話したくなる、かたわらに寝そべるねこに陽ざしがまるい (神戸市)松田成美

 「陽ざしがまるい」としたところがなかなか宜しい。
 そんな「猫」を目にしたら、誰だって「何思う」と話し掛けたくなりますよ!


○ 献燈を軒に吊して川越しのみこし太鼓の音を聞きをり (豊後大野市)三代英輔

 本作の題材となっているのは、豊後大野市緒方地区の「緒方三社川越しまつり」である。
 毎年十一月半ばの土曜日から日曜日に掛けて行われるこの祭典では「松明が明々と燃える中、犢鼻褌姿の勇壮な若者たちに担がれた神輿が川に立つ鳥居を潜って対岸のお宮まで渡る。源平時代の武将、緒方三郎惟栄にまつわるもので、厳寒の時期だけに多くの見物客で賑わいます」とのこと。
 因みに、明年度は、「平成28年11月12日(土曜日)~13日(日曜日)・川越しは19時から行われる予定」とのこと。


○ 君の中の銀河の中の地球の中の私の中のあのひと (茅ヶ崎市)川島向日葵

 演出過剰。
 創り過ぎです。
 そんなに大事な「ひと」であったならば、真綿で包んで置きなさい。
 第一に、この無限大とも言える宇宙の中の一人の男の存在なんか、それこそ〈インフルエンザウイルスの国〉の〈ゴミ置き場のゴミ〉みたいなものでありましょう。