臆病なビーズ刺繍

 臆病なビーズ刺繍にありにしも
 糸目ほつれて今朝の薔薇薔薇

一首を切り裂く(021:仲・其のⅠ)

2013年08月31日 | 題詠blog短歌
(葉月きらら)
キスをする仲ではないし髪の毛を撫でられただけそれだけの事

 「髪の毛を撫でられただけそれだけの事」とは仰いますが、あなたと彼との関係は、必ずしも浅い関係とは言えません。
 私は学童の頃に、家族の者に隠れて、二階の納戸で婦人雑誌を読む事を専らにしておりましたが、その頃に読んだ『主婦と生活』という婦人月刊雑誌のピンクの頁に、「髪の毛は女性の性感帯の一つであるから、好きな女性と深い関係になることを希望していながら、それを果たせないでいる気の弱い男性は、何気無い所作で彼女の毛髪に触ってみなさい。その効果たるや、......」と書いてあったの読み、その時に味わったショックの大きさを今でも忘れることができません。
 〔返〕  彼女とはB段階に達したがCからDに一挙に行きたい   鳥羽省三


(珠弾)
「結婚し子を産み育てたとしても仲が良いとはかぎらないワン」

 珠弾さんはしばらくお会いしない間にワン公になってしまったのかしらん?
 〔返〕  野合して児を産み育てたとしても結局野犬と言われるだけさ   鳥羽省三 


(お気楽堂)
意に染まぬ手錠のせいで手をつなぎ仲よく逃げてまたゲイ疑惑

 スタンリー・クレイマー(1913・9・29~2001・2・19)と言えば、往年の名画『セールスマンの死』(1951)、『真昼の決闘』(1952)、『ケイン号の叛乱』(1954)などの製作に当たったアメリカ合衆国の著名な映画人である。
 その彼が1958年に製作・監督に当たった作品に『手錠のままの脱走』というサスペンス・アクション映画の秀作が在る。
 本作は、そのパロディーとして鑑賞するにはあまりにもふざけた内容であり、作者の胸中には、恐らくは、そうした意識がほんの欠片程も無かったに違いありません。
 〔返〕  意に染まぬ寄席の舞台に乗せられて挙句の果ては夫婦万歳   鳥羽省三


(守宮やもり)
仲良しがおてて繋いで帰り道 ふみちゃんの手は花を摘んでる

 「ふみちゃんの手は花を摘んでる」という下の句の存在に因って、かろうじて短歌としての体裁が保たれているのである。
 〔返〕  仲良しがスカンポ摘み摘み帰る道モーテルの看板見て赤くなる   鳥羽省三


(はぼき)
青白い灯に守られて新旧の路面電車は仲良く眠る

 我が国で、現在、路面電車が走っている都市は、三ノ輪橋から早稲田までの荒川線を残すだけに過ぎない、東京を含めて僅かに二十都市であるが、東京二十三区内を隈なく都電が走っていた昭和四十年代は、「路面電車」の全盛時代であり、日本全国六十五都市で路面電車が意気揚々として走行しておりました。
 然るに、その後、「高度経済成長・モータリゼーション社会」が到来すると、路面電車は「渋滞の元凶」、「時代遅れの乗り物」などと言われ、相次いで姿を消してしまいました。
 そうした中に在って、「広島電鉄市内線」は廃止になった全国の路面電車の車両を、今でも現役の市内交通手段として走らせていて、「動く路面電車の博物館」とも呼ばれております。
 本作は、広島電鉄市内線などの操車場(乃至は車庫)に於いて、新型の電車と旧型の電車が蛍光灯の「青白い灯に守られて」、恰も「仲良く眠」っているが如くに明日の出番に備えている光景をスケッチしたものでありましょう。
 「青白い灯に守られて」、「新旧」二台の「路面電車」が「仲良く眠る」光景とは、何と懐かしく郷愁を感じさせる光景でありましょうか。
 まるで、昭和四十年代の卒業アルバム(白黒)の中の一ページを見ているような気がします。
 〔返〕  蒼白き蛍光灯に照らされて妻と我が子が眠っているよ   鳥羽省三


(五十嵐きよみ)
ボエームの仲間だったら哲学者コッリーネと語り明かしてみたい

 『ラ・ボエーム』(La Bohème)は、ジャコモ・プッチーニの作曲した四幕のオペラで、現在、世界中の歌劇団に拠って、最も多く演奏されているイタリアオペラの人気作品である。
 作中の「哲学者コッリーネ」とは、オペラ『ラ・ボエーム』の第一幕及び第二幕、第四幕に登場する人物であり、彼・コッリーネに扮する歌手(バス)が歌う「外套の歌」は、このオペラの聴きどころの一つとして数々の音楽ファンに愛されているのである。
 〔返〕  背嚢を枕に外套被り居れば背中の温みで雪溶けかかる   鳥羽省三
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一首を切り裂く(022:梨)

2013年08月31日 | 題詠blog短歌
(中村成志)
みずからを散らさなければ梨の花実を結べずに朽ち落ちるのみ   


(津野桂)
母の住む家の門扉は軽すぎて硬い花梨は実りて落ちる


(大島幸子)
梨園の奥様なんて呼ばれてた果樹農家の人お元気かしら


(山本左足)
梨の木に梨の実が生る自然さで彼女は彼に嫁いでいった


(五十嵐きよみ)
洋梨によく似たかたちの楽器から甘い音色が滴り落ちる


(諏訪淑美)
伝統の梨園に嫁ぎ根付きたるアイドル今では母の貫禄


(佐藤紀子)
梨棚に枝を休ませひつそりと春風を待つ伊万里幸水


(光本博)
山梨の大月へ帰る人もゐる二十一時の新宿支店


(芳立)
たのめやる人はあるらむ梨のはな春のうたげにおくれ咲くとも


(原田 町)
マスカット二十世紀梨あこがれの果物だった頃もありしよ


(円)
定冠詞ラであることも知らぬまま西洋梨に憧れた日々


(矢野理々座)
梨狩りにバッグ持ち込み疑われ怒るモデルは「梨花おかんむり」


(はこべ)
たとうれば梨花の冠正しても摘んでみたきは佐藤にしきを


(西中眞二郎)
北杜市が生まれるまでは「杜(と)」の文字に「山梨」の意があるを知らざり


(みずき)
するすると梨剥く指も俯ける姿態の影へ消えて雨なる


(鳥羽省三)
到来の初物梨の皮を剥く汁の滴る梨の皮剥く
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「題詠2013」投稿作品集(鳥羽省三)

2013年08月29日 | 題詠blog短歌
001:新
この街の新参われにサンクスの深蒸し煎茶はあまりに苦し

002:甘
スタバにてカフェラテを喫むこの真昼ささやき甘し剛力彩芽

003:各
各々がサッポロビールのゼッケンを胸に走った箱根駅伝

004:やがて
魚やがてんびん棒を振り回し破落戸どもと大立ち回り

005:叫
沈む陽に凍れる空は血で染まり峡湾は阿鼻叫喚の刻

006:券
華麗なる熟女の恥部に喰ひ付いた券売機の件は一笑に付せ!

007:別
『サニー・サイド・アップ』別して言へば<目玉焼き・加藤治郎の第一歌集>

008:瞬
法華津瞬 我が青春を彩りて三十路で逝きしよか男の名

009:テーブル
テーブルマウンテン(標高1086m) ケープタウンを眼下に置き平らかに佇つ

010:賞
精勤賞だけは貰へた弟の少し淋しき少年時代

011:習
十年に一度ぐらいの割合で学習指導要領改訂する謎

012:わずか
円安と言えどわずかに1、2円笑むに足らぬぞトヨタの社長

013:極
究極の駄目男とは彼のこと澤村拓一河豚にぞ似たる

014:更
更迭せよ。官房長官を更迭せよ。テレビ映りが宜しくないぞ。

015:吐
『嘔吐』など今更誰も讀まないぜ!實存主義は壹塲の夢!

016:仕事
江戸城の御金蔵破りは大仕事 霞の富蔵首尾良く成就

017:彼
彼岸より視れば徒しき事ならむ猛暑の今日は写経にて果つ

018:闘
「闘魂を大臣ばらに示さむ」と猪木議員は猛々しく云ふ

019:同じ
あの夏と同じ思ひで蝉を聴く猛暑果てなき終戦記念日

020:嘆
嘆かへばものみな哀し我が肌を夕べ刺しつる蚊の命さへ

021:仲
始まりはお金が故の仲違ひ今は泥沼全てが嫌ひ

022:梨
到来の初物梨の皮を剥く汁の滴る梨の皮剥く

023:不思議
不思議なる夢をば見つる天平の琵琶を奏づる乙女の夢を

024:妙
いま我はヴィオロンとなり故郷に妙なる音と風を送らむ

025:滅
罪障を滅消せむとてせしなれど泥鰌逃がして妻に叱らる

026:期
挺身以て敵陣を撃滅せむ生ら固より生還を期せず

027:コメント
コメントが固まる頃を見計らい型枠外しに取り掛からねば

028:幾
幾たびも雪の深さを尋ねられ菊女は遂に顔赤らめつ

029:逃
里人のあらかた逃散してしまひ代官様は困惑の態

030:財
またぞろの失言放言し放題 財務大臣麻生太郎氏

031:はずれ
東京のはずれの街の赤羽で拾った恋です自棄っぱちです

032:猛
「新村猛(昭和12年11月、治安維持法違反で逮捕)」

033:夏
紺碧のみくりが池に影映し室堂平の夏に我立つ

034:勢
心技体三個揃へば綱が見ゆ心を鍛へよ稀勢の里関

035:後悔
敗けた後悔いても無駄だ稀勢の里こころ鍛えて再度チャレンジ

036:少
「香炉峰の雪いかならん」と仰すれば清少納言は御簾を巻き上ぐ

037:恨
恨むなら美貌うらめと太閤は淀の御方を二度も組み敷く

038:イエス
荒野往くイエスの如き眼差しで打者のイチロー睨む岩隈

039:銃
放銃の初めや伊根の四暗刻 一夜泊りの舟屋麻雀

040:誇
自が功を誇示する如く声荒げ財務大臣失言糊塗す

041:カステラ
「カステラは何がなんでも福砂屋」と言ってはみたが中村屋のも貰う

042:若
若過ぎて深夜便には似合わぬが森田美由紀は声も大好き

043:慣
薄味の関西風に慣らされて血圧どうたら言ってる馬鹿め

044:日本
富士山は日本一の山だから世界遺産に登録された

045:喋
信頼の根源はあの喋り方?お国訛りで長官談話!

046:間
盗られては間尺に合わぬ!北方の四島返せ!毛蟹食べたい!

047:繋
繋がれて鞭で打たれて啜り泣き伊藤晴雨の縛り絵の中

048:アルプス
今日明日は準決勝と決勝だ!アルプススタンド埋め尽くす白!

049:括
「括弧書き」多用するのは問題だ!三十一文字に記号は邪道!

050:互
お互いに譲り合ってのこの始末?チャリンコどうし道でガチャリンコ!

051:般
一般に大雪山と呼んでるが正しく言えば大雪山系

052:ダブル
ダブルスでもシングルスでも勝ってたがウィリアムズ姉妹の全盛期はや!

053:受
大受とふ四股名の力士持ち前の寄り身に徹し大関の座に

054:商
古代史に「商王朝」の名隠れ無き「夏」を滅ぼして「周」に敗れる

055:駄目
駄目元と茸狩りへと出掛けしも季節外れの熊に襲はる

056:善
さいたまに善前と謂ふ地の在りて吾ら一年塞ぎ居りにき

057:衰
冬は来ぬ水衰へぬ機は熟すいざや出でなむ女族(アマゾン)狩りに

058:秀
秀でずも時には慈悲か汝が生の埋もれしままをまるごと愛す

059:永遠
歳時記に岸と謂ふ語の無きことを哀しと詠みき君よ永遠なれ

060:何
「幾何学に王道無し」と言ふよりも「学問全てに王道無し」

061:獣
柔道は獣道ならむ?昨今の全柔連に不祥事絶えず!

062:氏
藤原の氏の長者の道長の紫式部に振られた噂

063:以上
穂村未満枡野以上は歌人ちゃん枡野未満は只のお遊び

064:刑
「刑部が詰め腹切れば済む事」と鬼の平蔵ひそかに思ふ

065:投
「投身に拠る自死か否かは不明?」との新宿署からの灰色報道

066:きれい
あなたから「きれいだね!」って言われたら私を全部捧げちゃうかも

067:闇
怨歌史の闇に華やぐ藤圭子 西新宿で投身自殺

068:兄弟
珠由良ブラザーズ≪正真正銘オカマの三兄弟≫新宿にてニューハーフクラブを営む

069:視
勲二等大警視川路利良霊位青山墓地に埋葬

070:柿
柿の実の半ば捥がぬに冬に入る捥ぎし半ばの皮を剥き居り

071:得意
得意げにお手を捧げて待つクロの性(さが)厭はしく餌を与へず

072:産
産業道路沿いに建ってる家だった俄か造りの平屋であった

073:史
「希臘史が好きさ!」と言えば俺様のインテリジェンスが認められるかも?

074:ワルツ
ワルツ好き!ルンバは嫌い!土俗的音楽趣味の奴ら大嫌い!

075:良
選良と謂う語も既に死語となり国会議事堂不良の巣窟

076:納
お馴染みのお納所坊主の慶安がぞろり笑って下帯を解く

077:うっすら
うっすらと頭の上に霜を置き八千草薫は春の陽を浴ぶ

078:師
東武にも京急にも在る大師線 終着駅にはお大師様が

079:悪
勝新も田宮二郎も今は亡く『悪名』にのみ其の名を残す

080:修
世良修蔵 悪逆無道の名を取りて阿武隈川原で斬首されたり

081:自分
曝すべし!自分史の闇!抉剔せよ!青春の恥部そして涙を!

082:柔
柔弱な青春野郎をぶっ飛ばせ!七十路を意気稜々と往け!

083:霞
辿り来し徳本峠の霧の晴れ霞沢岳に虹の立つ見つ

084:左
景鄂院紫陵日輝居士贈正四位橋本左内諱綱紀       

085:歯
朴歯履き弊衣破帽の青年が明智小五郎とされていた頃

086:ぼんやり
ぼんやりと頬杖突いているだけで考える人と言われる辛さ

087:餅
「正月は餅こをずっぱり搗きてえな」爺さまと婆っぱと寝物語する

088:弱
弱法師梅の匂ひを通はせて七日施行の闇に顕はる

089:出口
出口無きアベノミクスの行く末や?一億二千の民の喪亡!

090:唯
唯円の聴き書きならむ?『歎異抄』、「善人なほもて往生を遂ぐ」!

091:鯨
鯨飲と呼ぶには少し大袈裟か?久保田の萬寿一気飲みせり!

092:局
「美人局」ツツモタセではありません。局長さんほか局員みな美女。

093:ドア
国蝶のオオムラサキの軍団が回転ドアを潜ろうとした

094:衆
五月晴れ 衆人環視のお堀端 カルガモ親子が無事に引っ越し

095:例
例題の数値を替えて出題す満点続出化学のテスト

096:季節
季節柄雨が多くて蒸し暑し圓楽師匠の下顎に黴

097:証
証文に五両三分と記したり身体を質に入れたる代価

098:濁
湧水の濁ることなき真心に君と誓はむ永久の愛

099:文
文化庁初代長官今日出海天台院住職今東光の愚弟

100:止
止めど無く溢るる詩魂うたごころ題詠百首只今完走

完走報告
沢水の汲めど尽きせぬ歌ごころ題詠百首此処に完詠
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完走報告(鳥羽省三)

2013年08月29日 | 題詠blog短歌
沢水の汲めど尽きせぬ歌ごころ題詠百首此処に完詠
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100:止(鳥羽省三)

2013年08月29日 | 題詠blog短歌
止めど無く溢るる詩魂うたごころ題詠百首只今完走
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099:文(鳥羽省三)

2013年08月29日 | 題詠blog短歌
文化庁初代長官今日出海天台院住職今東光の愚弟
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098:濁(鳥羽省三)

2013年08月29日 | 題詠blog短歌
湧水の濁ることなき真心に君と誓はむ永久の愛
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097:証(鳥羽省三)

2013年08月29日 | 題詠blog短歌
証文に五両三分と記したり身体を質に入れたる代価
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096:季節(鳥羽省三)

2013年08月29日 | 題詠blog短歌
季節柄雨が多くて蒸し暑し圓楽師匠の下顎に黴
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095:例(鳥羽省三)再投稿

2013年08月28日 | 題詠blog短歌
例題の数値を替えて出題す満点続出化学のテスト
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095:例(鳥羽省三)

2013年08月28日 | 題詠blog短歌
例題の数値を変えて出題す 満点続出数Ⅱのテスト
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一首を切り裂く(020:嘆・其のⅢ)

2013年08月28日 | 題詠blog短歌
(西村湯呑)
「ネバーエンディング素通り」ウォウウォウと入りの悪さを嘆く店長

 作中の「ネバーエンディング素通り」とは、「ネバーエンディング・ストーリー」の捩り句である。
 本作の題材となっているのは、東京上野公園の花見時、カップル喫茶の店長さんが「『ネバーエンディング素通り』ウォウウォウ」と、映画『ネバーエンディング・ストーリー』のタイトルを捩った鼻歌を口遊みながら、お客様の「入りの悪さ」を嘆いている図柄でありましょう。
 〔返〕 「ネバーエンディング素通り」ウォウウォウと外れ馬券を引き裂く君よ   鳥羽省三


(理宇)
内情は隠しておこう僕たちは悲しみにさえ感嘆符打つ!

 本作の作者は、作品の叙述を通じて、自ら作中の「悲しみ」の内容(=内情)及び、その「内情」を「隠して」おかなければならない理由を述べようとしているのである。 
 ところで、フリー百科辞典『ウィキペディア』の解説するところに拠ると、「『感嘆符』とは、約物のひとつで、『!』と書き表される。‘雨垂れ’、または俗に‘ビックリマーク’とも呼ばれる。また英語表記に由来した呼称『エクスクラメーション・マーク (exclamation mark)』と呼ばれることもある。強調を表し、強調を表す対象の後に置かれる。英語では『エクスクラメーション・ポイント (exclamation point)』ともいい、俗に『バン (bang)』や『スクリーマー (screamer)』などとも呼ばれる。視覚的な表現として、注意や危険であることを表現するために用いられる」とのことである。
 したがって、本作の作者(或いは、作中の‘僕たち’)が、「悲しみにさえ感嘆符」を打ったとしても、格別珍しい事ではありません。
 察するに、「感嘆符」とは、物や事柄に接して何らかの意味で心が動いた時、その心の動きを視覚的かつ象徴的に表す為の記号の一つでありましょう。
 だとすれば、本作の作者(或いは、作中の‘僕たち’)の云う、「内情」を「隠して」おかなければならない「悲しみ」とは、作者(或いは、作中の‘僕たち’)の心を大きく動かした現象、例えば「飼い猫バンビの死」といった事柄でありましょう。
 〔返〕 君たちは心の底を明かさずに悲しい時も微笑んでいる   鳥羽省三


(はこべ)
嘆きつつ独り寝る夜に湯たんぽは 黙っていてもただやさしくて

 作中の「湯たんぽ」は漢字表記すると「湯湯婆」であり、中国唐代の「湯婆(tangpo)」に由来する、床中で用いる金属製又は陶磁器製の暖房器具である。
 中国唐代のそれ、即ち「湯婆」の「婆」は「妻」を表す語であり、何かの事情に因って妻を抱けない男性が、床中で妻を抱く代わりに「湯婆」を抱いたことに因り、やがては暖房器具を表す言葉となったのである。
 だとすれば、中国唐代の男性は、妻という存在を単なる暖房器具として扱っていたことにもなり、中国という極端な男尊女卑社会のシンボルとして、私たち日本人は、この言葉を記憶に止めておく必要がありましょうか?
 それはそうとして、本作は、彼の右大将道綱母の傑作「嘆きつつ独り寝る夜の明くる間はいかに久しきものとかは知る」(『小倉百人一首』)を本歌とした「本歌取りの歌」とも言えましょう。
 作者のはこべさんは、本作のご投稿を通じて、ご自身の学識有るところをお示しになられようとなさって居られるのでありましょうか?
 事の序でに、この機会に、先人の詠んだ和歌(短歌)の中の語句を自作短歌の中に取り入れた短歌作品を、単なる「模倣歌(乃至は‘捩り歌’)」と看做すべきか?「本歌取りの歌」と看做すべきか?の判断の基準となる点について一言述べさせていただきますと、凡そ次の三点が挙げられましょう。

 ① 本歌とする作品が人口に膾炙した名作であること。
 ② 引用する語句は二句から三句までの一続きの語句であること。
 ③ 例えば、作品の部立が四季の歌ならば春を夏に変え、夏を冬に変えるといったように、恋の歌ならば、それを「離別・羈旅・物名・哀傷・雑歌」に変える、といったように趣向を凝らす必要があること。

 以上三点が、判定の基準となる要点ではありますが、上記・三点の条件を全てパスしていたとしても、その作品が短歌作品と言えるような作品でなければ、それを「本歌取りの歌」として看做すことが出来ないことは申し上げる迄もないことである。
 したがって、上掲の‘はこべさん’の御作を、「本歌取りの歌」と看做すか否かの判断の最も大事なところは、判定を下すべき評者の短歌観に拠るのである。
 〔返〕  湯湯婆は金も掛からず手間要らず一人寝る夜のお供にすべし  鳥羽省三   


(西中眞二郎) 
幕開けば舞台は花の盛りにて嘆声低く客席に満つ

 本作の題材になったのは、歌舞伎舞踊の名作中の名作として知られる『京鹿子娘道成寺』の幕開けの場面でありましょう。
 新装成った歌舞伎座
 松尾敏男氏描く緞帳『朝光富士』が静々と上がり、それに続いて紅白のだんだら幕が上がると、舞台は一面の桜の花盛りであり、やがて、三味線太鼓の出囃子の中を、彼の有名な詞章「花の外には松ばかり/花の外には松ばかり/暮れ染めて鐘や響くらん/鐘に恨みは数々ござる初夜の鐘を撞時は/諸行無常と響くなり/後夜の鐘を撞く時は是生滅法と響くなり/晨朝の響きは生滅滅巳/入相は寂滅為楽と響くなり聞いて驚く人もなし/我も五障の雲晴れて/真如の月を眺め明かさん」が、場内一面に朗々と響き渡るのである。
 主役の清姫に扮するは当代随一の名女形・坂東玉三郎丈である。
 〔返〕  わたくしは金に怨みは数あるが鉦や鐘には怨みは持たぬ   鳥羽省三


(シュンイチ)
「先発がいない」と今年も嘆いてるぼくら永遠にベイスターズファン

 「横浜DeNAベイスターズ」の先発投手と言えば、三浦大輔に藤井秀悟にソトに高崎健太郎に井納翔一に小杉陽太に三嶋一輝と、一応は六枚も七枚も列挙することが可能ではある。
 しかしながら、それはあくまでも取らぬ狸の皮算用、即ち紙上の空論であり、現在のところ、勝利数五勝以上の投手は、八勝十敗の三浦大輔を先頭に、六勝五敗の藤井秀悟及び五勝七敗の三嶋一輝と、僅かに三人を数えるに過ぎず、しかもそれら三投手とも揃って負け越しているのである。
 したがって、「永遠」の「ベイスターズファン」でも何でも無い、私・鳥羽省三としても、「横浜DeNAベイスターズは先発が五枚も六枚も不足だから、我が読売ジャイアンツは今年も安泰!」と安心していることが出来るのである。
 〔返〕  先発が揃って実力相応の活躍したら負けずに済むか?  鳥羽省三  


(鳥羽省三)
嘆かへばものみな哀し我が肌を夕べ刺しつる蚊の命さへ

 他所の国や地方の食習慣を無視して、鯨や海豚や鰻や鮪を食用に資することを禁止ないしは制限せんとする動きがあることは、読者諸氏に於かれましては先刻ご承知のことと存じ上げますが、そうした動物愛護の精神が「我が肌を夕べ刺しつる蚊の命」にさえも及ばんとしたら、それはそれで大問題である。
 〔返〕  残酷な料理は泥鰌の地獄鍋 豆腐目掛けて一心不乱   鳥羽省三
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094:衆(鳥羽省三)

2013年08月28日 | 題詠blog短歌
五月晴れ 衆人環視のお堀端 カルガモ親子が無事に引っ越し
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093:ドア(鳥羽省三)

2013年08月28日 | 題詠blog短歌
国蝶のオオムラサキの軍団が回転ドアを潜ろうとした
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092:局(鳥羽省三)

2013年08月26日 | 題詠blog短歌
「美人局」ツツモタセではありません。局長さんほか局員みな美女。
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