臆病なビーズ刺繍

 臆病なビーズ刺繍にありにしも
 糸目ほつれて今朝の薔薇薔薇

今週の「朝日歌壇」から(11月13日掲載分・其のⅠ)北方四島以南、本日大公開!乞う、ご一読賛嘆!

2016年11月20日 | 今週の朝日俳壇から
[高野公彦選]
○ 千万を超える孤食の輪の中で今朝も元気に納豆食らう (宇都宮市)鈴木孝男

 宇都宮市にお住まいの鈴木孝男さんは、「千万を超える孤食の輪の中で今朝も元気に納豆食らう」などと能天気なことをおっしゃいますが、「千万を超える孤食」は、決して、決して「輪」を為すこと無く「てんでんこ」なるが故の「孤食」ではありませんか?


○ 山登り競争がないスポーツと言った彼女の言葉が愛しい (本宮市)加藤美紀

 お名前が「美紀」ですから、私はてっきり、本作の作者を女性であるばかりに思っていたのでありましたが、作中の「彼女」に着目すると、福島県本宮市にお住まいの加藤美紀さんはどうやら男性らしい?
 否、誤解の無いように申し上げますが、仮に、女性である加藤美紀さんが同性の「彼女の言葉が愛しい」と仰ったとしても、格別に不思議な事ではありませんけど!


○ 蟷螂を愛玩動物代わりに飼っている餌やる度に身構える奴を (アメリカ)郷 隼人

 作中の「蟷螂」に「マンテイス」と、「愛玩動物」「ペット」とのルビ在り。
 「郷隼人作の短歌の極意は、漢字書きの名詞にカタカナの振り仮名を施す点に在り」と私は得心して居りますが、たまには極意離れをなさったら如何でありましょうか!
 飼われて居ながらも「餌やる度に身構える」のは、斯く申す私・鳥羽省三や郷隼人さんを含めた動物の常でありましょう。


○ 死は必然生は偶然と夫説く胃の全摘で変わる人生 (飯塚市)春 春代

 「胃の全摘で変わる人生」とありますが、「変わる」のは人生観でありまして、決して、決して「人生」そのものではありません。
 何故ならば、飯塚市にお住まいの作者・春春代さんのご夫君殿が、この時点で「胃の全摘」手術を受ける事は、既に彼の「人生」の中に織り込まれていたのでありますから!
 それにしても「死は必然生は偶然」などと、奥様にお説きになられるとは、春春代さんのご夫君殿の何と達観なさって居られますことよ!


○ 期限切れの仲間がうろつく期限切れの弁当狙って深夜二時です (ホームレス)坪内政夫

 「期限切れの仲間がうろつく」とありますから、ホームレスの坪内政夫さんは、自らをも「期限切れ」の人間であると達観なさって居られるのでありましょうが、それはあまりにも手前勝手な達観でありましょう。
 何故ならば、私たち人間というものは、生まれたら最期「期限切れ」無しに働いて、生きて行かなければならない存在でありますから!
 それなのにも関わらず、「深夜二時」に「期限切れの弁当」を「狙って」、コンビニのゴミ箱漁りをするとは、何たる心掛けでありましょう! 


○ 悴みし指でひたすら葉書かく坪内さんの街に冬来る (男鹿市)天野美奈子

 入選狙い見え見えの作品ではありますが、私たち朝日歌壇の読者にとってのホームレスの坪内政夫さんは、あくまでも所在地不明、消息不明の人物である事を忘れてはいけません。
 それなのにも関わらず、そのホームレスの坪内政夫さんが「悴みし指でひたすら葉書かく」とか、「坪内さんの街に冬来る」とかと仰るとは、是、即ち、憶測もいいところではありませんか!


○ チベットからヒマラヤを越えてインドまで群飛のアネハヅル時に落つ (川越市)小野長辰

 「群飛のアネハヅル時に落つ」とありますが、それにしても思い出されるのは、耐震強度偽装事件の被疑者・姉歯秀次なる人物のその後の消息である。
 私の耳にしたところに拠ると、「件の一件が発覚した当時、震度5か6でパターンと倒れると報道された姉歯元1級建築士が設計したマンションは、今のところただの一棟として地震の被害に遭っていないとか?そもそも、国土交通省の定める耐震強度があまりにも強すぎる設定になっているだけで、姉歯氏の計算通り、1000年に1度の地震が来ても、彼らの物件やマンションはビクともしなかったのだ」とか?


○ 涼しげなガラス細工は灼熱の工房で作る。苦こそ美を生む (東京都)上田結香

 「苦こそ美を生む」とは、必ずしも限りません。
 疑う者は、斯く申す私・鳥羽省三の手になるブログ「臆病なビーズ刺繍」を一見せよ!
 艱難辛苦に耐えながら記しているこのブログの何処に「美」が在りや!



○ 重たげな稲穂を風に預けつつ金波の中にかくれる案山子 (大阪市)波々伯部宮三子

 私たち本作の読者は、作中の「稲穂」が、作中の「金波」と同一である点に留意しなければなりません。
 即ち、本作は「本来は稲穂を押し寄せる雀どもの被害から守らなければ役目を帯びた案山子が、折からの風に煽られて明滅する稲穂の黄金の波に、我が身を隠して与えられた役目を怠っている」という趣旨の作品なのである。


○ わが脳の海馬海を恋ひ呆とあるらし人の名を忘る (三鷹市)柴田典子

 作中の「海馬」に「タツノオトシゴ」というルビ在り。
 一首の意は、「『わが脳の海馬』が生まれ故郷の『海を恋ひ』呆然としているらしいが、その為に、私は親しい『人の名』さえも忘れてしまった」といったところでありましょうか?
    


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