(月原真幸)
〇 跡形もなく消したくて一流の清掃会社に電話をかける
「一流の」がとても宜しい。
本作の作者の月原真幸さんは中古一戸建て住宅を世間相場の三分の一ぐらいの価格で買ったのでありましょう。
ところが、予め覚悟していたこととは言え、家中の至る所に滲み付いている前住者の生活の跡が耐え難く、その痕跡を「跡形もなく消したくて一流の清掃会社に電話」を掛けて、ハウスクリーニングの見積もり依頼をしたのでありましょう。
〔返〕 梅干しも一流会社の品が好し中国産は結局損だ 鳥羽省三
(鮎美)
〇 吐瀉物におがくず撒きて掃き寄する駅員のゐてクリスマス・イヴ
「クリスマス・イヴ」についての対処法にもさまざまなスタイルが在り、「吐瀉物におがくず撒きて掃き寄する」のも、京浜急行電鉄の「駅員」さんらしい対処法と思われます。
〔返〕 ワン公がウンチ垂れても気にせずに散歩させてるさいたま市民 鳥羽省三
(眞露)
〇 うずをまき白砂掃かれた石庭に 秋風すずし堂の縁側
作中の「堂」とは、京都紫野の「龍寶山・大徳寺」の塔頭の一つである「瑞峯院」を指して言うのであり、「うずをまき白砂掃かれた石庭」とは、その方丈の前庭を指して言うのである。
瑞峯院建立の施主は、あの戦国のキリシタン大名の大友宗麟である。
彼・大友宗麟は、あの戦乱に明け暮れていた時代に在って、我が大友家の先祖代々の菩提を祈って建立した瑞峯院の「縁側」に寝転んで前庭を眺めることを宿願としていながら、豊臣秀吉の島津征伐軍の幕下の一将として参戦し、その最中にチフスに罹患して五十八歳で亡くなったのである。
したがって、本作は、作者の眞露さんが、大友宗麟になったつもりで詠んだのでありましょう。
〔返〕 夢に吹く秋風涼し瑞峯院 渦巻く如き宗麟の一世 鳥羽省三
(村田馨)
〇 豪徳寺、代官屋敷は碧濃く掃部頭は眠りたりけり
十数年前のことですが、東急田園都市線を三軒茶屋駅で下車し、「三軒茶屋駅→最勝寺→松陰神社→世田谷代官屋敷→勝光院→世田谷城址公園→世田谷八幡宮→豪徳寺駅」といったお散歩コースを、一日がかりで盲滅法に歩き回ったことがあります。
地図を片手にしただけで、方位磁石もコンパスも持たないままの出鱈目極まりない歩行でありましたが、何とか暗くなる前に、東急電鉄・世田谷線の豪徳寺駅まで辿り着くことが出来、駅付近の蕎麦屋で特上の天麩羅蕎麦を食べて空きっ腹を満腹させた後、豪徳寺駅から世田谷線に乗ったら、あっと言う間も無く元の三軒茶屋駅に到着しました。
世田谷のボロ市に出掛けて「代官屋敷」に雨宿りしたのは、それよりも十年以上も前のことです。
〔返〕 ボロ市で雨宿りした世田谷区豪徳寺在代官屋敷 鳥羽省三
(鳥羽省三)
〇 「トイレ掃除させて下さい」との触れ声の一燈園の今は何処に
便所掃除でお馴染みの「一燈園」をご存じで無い方ばかりが多くなった時代を生き抜いて行かなければならないことは、むかし人の私にとっては、何かと不都合なことであり、寂しいことでもあります。
何しろ、あの佐賀市ご在住の女流歌人さんが『トイレの神様』を題材にした駄作をお詠みになって澄ましていらっしゃる世の中ですからね。
〔返〕 トイレのもLEDに替えましたエコ政策に協力してます 鳥羽省三
〇 跡形もなく消したくて一流の清掃会社に電話をかける
「一流の」がとても宜しい。
本作の作者の月原真幸さんは中古一戸建て住宅を世間相場の三分の一ぐらいの価格で買ったのでありましょう。
ところが、予め覚悟していたこととは言え、家中の至る所に滲み付いている前住者の生活の跡が耐え難く、その痕跡を「跡形もなく消したくて一流の清掃会社に電話」を掛けて、ハウスクリーニングの見積もり依頼をしたのでありましょう。
〔返〕 梅干しも一流会社の品が好し中国産は結局損だ 鳥羽省三
(鮎美)
〇 吐瀉物におがくず撒きて掃き寄する駅員のゐてクリスマス・イヴ
「クリスマス・イヴ」についての対処法にもさまざまなスタイルが在り、「吐瀉物におがくず撒きて掃き寄する」のも、京浜急行電鉄の「駅員」さんらしい対処法と思われます。
〔返〕 ワン公がウンチ垂れても気にせずに散歩させてるさいたま市民 鳥羽省三
(眞露)
〇 うずをまき白砂掃かれた石庭に 秋風すずし堂の縁側
作中の「堂」とは、京都紫野の「龍寶山・大徳寺」の塔頭の一つである「瑞峯院」を指して言うのであり、「うずをまき白砂掃かれた石庭」とは、その方丈の前庭を指して言うのである。
瑞峯院建立の施主は、あの戦国のキリシタン大名の大友宗麟である。
彼・大友宗麟は、あの戦乱に明け暮れていた時代に在って、我が大友家の先祖代々の菩提を祈って建立した瑞峯院の「縁側」に寝転んで前庭を眺めることを宿願としていながら、豊臣秀吉の島津征伐軍の幕下の一将として参戦し、その最中にチフスに罹患して五十八歳で亡くなったのである。
したがって、本作は、作者の眞露さんが、大友宗麟になったつもりで詠んだのでありましょう。
〔返〕 夢に吹く秋風涼し瑞峯院 渦巻く如き宗麟の一世 鳥羽省三
(村田馨)
〇 豪徳寺、代官屋敷は碧濃く掃部頭は眠りたりけり
十数年前のことですが、東急田園都市線を三軒茶屋駅で下車し、「三軒茶屋駅→最勝寺→松陰神社→世田谷代官屋敷→勝光院→世田谷城址公園→世田谷八幡宮→豪徳寺駅」といったお散歩コースを、一日がかりで盲滅法に歩き回ったことがあります。
地図を片手にしただけで、方位磁石もコンパスも持たないままの出鱈目極まりない歩行でありましたが、何とか暗くなる前に、東急電鉄・世田谷線の豪徳寺駅まで辿り着くことが出来、駅付近の蕎麦屋で特上の天麩羅蕎麦を食べて空きっ腹を満腹させた後、豪徳寺駅から世田谷線に乗ったら、あっと言う間も無く元の三軒茶屋駅に到着しました。
世田谷のボロ市に出掛けて「代官屋敷」に雨宿りしたのは、それよりも十年以上も前のことです。
〔返〕 ボロ市で雨宿りした世田谷区豪徳寺在代官屋敷 鳥羽省三
(鳥羽省三)
〇 「トイレ掃除させて下さい」との触れ声の一燈園の今は何処に
便所掃除でお馴染みの「一燈園」をご存じで無い方ばかりが多くなった時代を生き抜いて行かなければならないことは、むかし人の私にとっては、何かと不都合なことであり、寂しいことでもあります。
何しろ、あの佐賀市ご在住の女流歌人さんが『トイレの神様』を題材にした駄作をお詠みになって澄ましていらっしゃる世の中ですからね。
〔返〕 トイレのもLEDに替えましたエコ政策に協力してます 鳥羽省三