臆病なビーズ刺繍

 臆病なビーズ刺繍にありにしも
 糸目ほつれて今朝の薔薇薔薇

「小中英之歌集『過客』」の鑑賞

2017年11月04日 | 諸歌集鑑賞
   小中英之歌集『過客』より

芹つむを夢にとどめて黙ふかく疾みつつ春の過客なるべし

嗟嘆にはことわりあらず月明の連翹一株ひたすら黄なり

ランタナの花衰へてゆくときをいろ濃くなりし罪の匂いす

蘭を売る店には寄らず帰りしがわがひとりごと蘭花のごとし

佐美雄死後秋立つ朝の桔梗のふたたび咲きてつねより白し

ぎんなんの散らばりてゐん革命をいへば必ず広場のありて

いろいろと木の実を置きてながむればわが感情も銀河のごとし 

椿には椿のいのちくれなゐのふかきに耐えて孤独なりけり 

海よりのひびきあつめて咲くやうな椿に逢へば合掌したし

山茱萸の花明るくて相聞歌ふさはしき花水ぬるみたり

そのうちに来るものとしてよろこばん柊の花は死のにほひして


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