時空を超えて Beyond Time and Space

人生の断片から Fragmentary Notes in My Life 
   桑原靖夫のブログ

トランプも勝つことがある

2017年06月27日 | 移民政策を追って

 


新たな混乱の始まりか
 アメリカのトランプ大統領が去る1月に出した中東、アフリカなどからの人の入国を制限する大統領令は、州最高裁、控訴裁などの判決で、全米で執行が停止されてきたが、連邦最高裁判所は6月26日、政権側の申し立てを部分的に認め、一定の条件を満たす人を対象から除いたうえで執行されることになった。人の移動の自由が一時的とはいえ制限されている現状は、「アメリカの国益が損なわれる」などを理由として、政権側の申し立てを部分的に認めることになった。

アメリカに家族が住む人や大学への入学を許可された人、アメリカ企業に雇用された人など、アメリカと「真正な関係」bona fide relationship があるとされた人を入国制限の対象から除いたうえで、大統領令が執行されることになった。また、連邦最高裁判所は口頭だが、大統領令の憲法上の問題は、今年秋に改めて全面的に審理するとしている。

トランプ大統領は、就任直後の本年1月下旬、テロ対策を強化し、入国審査を厳格化するためとして、シリア、イラク、イラン、スーダン、リビア、ソマリア、イエメンの7か国の人の入国を90日間、一時的に禁止し、すべての国からの難民の受け入れも120日間停止する大統領令に署名した。
しかし、入国禁止の措置はイスラム教徒をねらったもので、差別的だという批判や反発が国内外で広がったうえ、事前の予告がなく大統領令が執行されたこともあり、アメリカ各地の空港に到着した人が入国を拒否されたり、入管当局に拘束されたりして混乱も起きた。

トランプ大統領は声明を出し、「国の安全保障にとって明らかな勝利だ。私の第一の責任は国民の安全を確保することであり、今回の判断によって国を守るための重要な手段を使うことができる」と強調した。

アメリカの連邦最高裁判所は、去年2月、9人の判事のうちの1人スカリア氏が死去したあと欠員が生じていたが、トランプ大統領が指名した保守派の判事がことし4月、議会で承認されたことで、現在は判事の過半数を保守派が占めている。今回も9人が基本線で賛同した。

なお、今回、連邦最高裁判所は、トランプ大統領が指名したナイル・ゴーサッチ氏など3人の判事は今回の判断に賛同しながらも、大統領令の全面的な執行を認めるべきだと主張したことも明らかにした。

アメリカが大統領令として、大きな権限を認めてきた背景には、冷戦の最中、共産主義への恐れを反映し1952年に成立した連邦法、the Immigration and Nationality Act の歴史的影響が大きい。共産主義への脅威が、イスラムを背景とするテロリズムに転換したともいえる。今回の連邦最高裁の裁定も、移民政策の根底にある問題を解決するものではないため、トランプ政権による入国管理規制が実施されると、新たな混乱や衝突が再燃、拡大する可能性は極めて高い。勝負はまだまだ序の口だ。最後の勝ちを手中にするものは誰だろう。 

 

✳︎ アメリカ移民制度の主要問題点については、「終わりなき旅:混迷するアメリカ移民制度改革」なども参照いただきたい。
 
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