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腎臓病「偽陽性」 中高生で後絶たず

2016年04月26日 08時39分48秒 | 医療情報
腎臓病「偽陽性」 中高生で後絶たず
2016年4月25日 (月)配信神戸新聞

 子どもの腎臓病を早期発見するため、国が小中高校に義務づけている「学校検尿」。早期の治療を可能にし、腎不全になる子どもを激減させた。一方で、採尿の知識不足などにより、異常がないのに陽性になるケースが後を絶たず、再検査の費用と手間が自治体財政や児童生徒の負担となっている。小児科医らは「正しい方法で検尿を」と呼び掛けている。

 腎臓はおへその少し上辺りに左右1対あり、動脈から流れ込む血液の老廃物を除き、尿をつくる。尿にタンパク質や血液が混じる場合は、腎臓病の恐れがある。

 学校検尿は1974年、腎臓病や糖尿病の早期発見を目指し、全国の学校で始まった。腎臓病関連ではタンパク質の検査が義務づけられているが、神戸市などのように潜血を追加する自治体がほとんどだ。

 家庭で採取した尿が2回連続で陽性だった場合、2次精密検査を行い、さらに腎臓の組織検査などを経て確定する。治療が必要な腎臓病と最終的に診断されるのは千人に1人程度という。

 神戸市の2015年度学校検尿で、家庭での採取による1次検尿の陽性率は、中学女子、高校女子で1割近くに上る。中学男子も約3%、高校男子は約2%で、小学生より高かった=表。2次検尿を経ても、中学、高校の女子は約2%が陽性だった。

 神戸大医学部小児科の野津寛大(のづかんだい)准教授(43)は「中高生は尿に生理の血や精液が混入することが多く、偽陽性の割合が跳ね上がる」と指摘する。

 偽陽性による再検査を避けるためには、家庭での採尿を正しく行う必要がある。各自治体が周知を図るが、前夜に排尿する▽出始めの尿は捨て中間尿を採取する―の2点が守られないケースが目立つという。

 子どもの腎臓病には、腎臓の糸球体(しきゅうたい)にタンパク質が沈着し機能低下する「IgA腎症」、血中のタンパク質が減り全身がむくむ「ネフローゼ症候群」、腎臓に球状の袋が多発し機能を妨げる「多発性嚢胞(のうほう)腎」などがある。

 いずれも有力な治療法が開発され、学校検尿と相まって、腎不全を起こし人工透析が必要になるケースは激減した。「以前は腎臓病の疑いがある子どもは厳しく運動を制限したが、現在は限定的になった」と野津准教授。

 神戸大小児科では、飯島一誠(かずもと)教授(59)らが中心になって、IgA腎症に対し複数の薬を併用する「カクテル療法」や、ネフローゼ症候群へのリツキシマブによる薬剤治療の確立に貢献してきた。飯島教授は「IgA腎症で腎不全になる子どもは昔は多かったが、今はほとんどいない」と振り返る。

 家庭での採取による1次検尿、2次検尿が陽性になった場合、神戸市などでは学校が取りまとめて2次精密検査を行っているが、保護者に受診を委ねる市町も多い。

 野津准教授は「腎臓病は症状が出る前に治療を始めれば、治したり進行を遅らせたりできる。1次検査が陽性の場合はなるべく早く受診を」と話す。

<家での採尿の注意点>

□前日夕からビタミンC入りの薬やスポーツ飲料を飲まない→潜血反応の偽陽性を防ぐ

□前日、寝る前に必ず排尿する→運動後は健康な人も尿にタンパク質が混じるため

□朝起きてすぐの尿を採取する。ただし出始めの尿は捨て、中間尿を取る→生理の血や精液の混入を防ぐ

<学校検尿>

1973年の法令改正で健康診断の項目に加えられ、翌年から全国の小中高校で実施。尿中のタンパク質と糖分の検査が必須で、潜血検査も望ましいとされる。家庭で採取した尿が2回連続陽性だった場合、学校で取りまとめて精密検査を行うA方式と、家庭に受診を促すB方式がある。学校検尿は韓国や中国でも一部行われている。

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