目が覚めてしまった。そりゃそうだろう、宵の口からお布団にお世話になっていたんだもの。4時間は経っている。ダムも満水した。怠け者はお風呂に入って暖まるとすぐに目蓋が閉じて来る。それだから、深夜に及ぶとこうして目がさえてしまう。そういう必然をもたらす。で、仕方がないから、枕元の本を取る。これにしばらくお守りをしてもらうことになる。
大抵は仏教の本だ。仏さまの声を聞く。耳を立てる。ああそうだなあ、そうだったんだなあと思い知らされる。何にも知らずにきたんだなあと恥じる。甘ったれてばかりだったんだなあと詫びる。忝くなる。嬉しくなる。元気をもらう。しみじみとなる。するうちにまた睡魔が訪ねてくる。この繰り返しだ。
ときおりあの人のことこの人のことが思い出されてくる。わたしの人生の舞台に登場をしてきた人たちだ。静かに思いを致す。頭を垂れる。恥じる。詫びる。温まる。懐かしさでいっぱいになる。よくしてもらったなあと思う。それにしてはお礼をして来なかったなあとも思う。すまなさで溢れる。己の厚顔さが情けなくなる。