子曰、君子有三戒、少之時、血気未定、戒之在色、及其壮也、血気方剛、戒之在闘、及其老也、戒之在得 論語第八巻 季氏篇より
子曰く、君子に三戒有り。少(わか)き時は血気未だ定まらず。之を戒めること色に在り。其の壮なるに及んでは、血気方(まさ)に剛なり。之を戒めること闘に在り。其の老に及んでは、血気既に衰えたり、之を戒めること得に在り。
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貝塚茂樹先生の解釈ではここはこうなっている。
「君子には守るべき三つの戒めがある。年少の時代は血気がまだ安定していない、戒めは異性関係にある。壮年になると血気が盛んになる、戒めは闘争好きにある。老年になると血気は既に衰える、戒めは欲張りにある」
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わたしは老爺だから三番目。欲張りに注意することだ。もうこれまでにもらいすぎるくらいにもらって来たから、もらう分は過ぎている。よって、欲張るのを注意しなければならない。すなわち満足を覚えていなければならないだろう。お礼のこころをこそ横溢しておかねばなるまい。出来うる範囲でいいから、報恩を心掛けておかねばなるまい。
血気の横溢する若い頃をも通り過ぎてきた。やはり不安定だった。誇るところがなく、女性にもてるということもなかった。血気盛んな壮年時代も過ごした。力が弱いわたしは人と争うにも争えないところがあって惨めだった。やっと老いた。血気も衰えた。惨めさも軽くしてすむようになった。戒めは我が物顔をしないこと、少しずつわが所有と解してきた考えを解き放っていくことだろう。
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血気盛んは健康でいい。健康でいいが、それで振り回されるところがある。見た目もいい。輝いている。脂ぎっている。その分の華やかな収獲を気にするところが出て来て、苦しい目にも会う。称賛を期待する。期待に届かなくて意気消沈もする。やっと老人になった、血気がひとりでに衰えている。しめしめというところだ。安定しやすくなってきた。多くを願わず、欲張らず、おだやかにして過ごしたいものだ。