亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

南ア電力供給障害でプラチナ上昇・・・だが

2019年12月11日 23時30分47秒 | 金融市場の話題
10日の市場で上昇が比較的目立ったプラチナ(白金)。世界シェアで70%強を占める最大産地の南アフリカにて電力障害が発生し、複数の鉱山会社が採掘活動を一時中止する方針を明らかにしたことが、買い材料となった。具体的には国営電力公社エスコムの一部発電所が、豪雨による鉄砲水の被害にあい発電が止まり、同公社が計画停電を行う方針を通達(最大6000メガワット消失の見込み)。大手鉱山会社インパラ・プラチナム、シバニー・スティルウォーター、ハーモニー・ゴールドなどの生産が止まることになったとされる。金も同じだがプラチナも電力消費量が大きく、電気が止まることがそのまま操業停止ということになる。

2010年に南アはルステンブルクにあるアングロ・プラチナムの鉱山の1つに入れてもらったことがある。もちろんヘルメットから防塵マスク、同眼鏡、安全靴などなどフル装備で地下に潜った後に、掘り出した鉱石の前処理のプラントも見せてもらった。特にプラントは鉱石を砕いて薬品処理しプラチナその他の金属を選別し、ドーレと呼ばれる精製度の低い地金を取り出す工程まで、そのいわゆる鉱山がある場所でやる。この工程が電力を食うもので、掘るのも、その後の処理もとにかく電気が必要となる。電力供給は生命線と言えるもの。これは金鉱山も同じ。

南アでは2008年にも同じように洪水による電力障害が起き、広範囲で鉱山生産が止まったことがある。やはり豪雨による洪水で、火力発電所の石炭貯蔵所が水浸しになり発電が止まったことが、そのまま鉱山生産をストップさせた。この時は中国など新興国の成長が加速した時期でもあり、投機マネーがコモディティ全般に入っていた(特に金以外に)ことから、生産障害を材料にプラチナが暴騰し、過去最高値を更新し2300ドル近くまで暴騰することになった経緯がある(9月にはリーマンショックが発生、11月には800ドル割れに暴落)。

今回発生したエスコムの被害は規模的には小さいとみられる。シバニー・スティルウォーター社は深度の深い鉱区を月曜日に一時中断したものの再開見通しと伝えられている。とはいえ詳しい内容は不明。もともと国営電力公社エスコムは、不正会計や汚職など杜撰(ずさん)な管理により経営危機が伝えられてきた経緯がある。汚職の果てに巨額の使途不明金が判明し、経営危機に陥り、インフラ事業ということで公的資金を投入しなんとか操業している状態にある。昨年まで続いたズマ前政権は汚職や縁故主義で非常に評判が悪く、この国有企業を食いものにしたとみられる。いわば問題会社なのだった。にわかに計画停電がプラチナの買い材料となったようだが、これまでも計画停電は頻発している。ただし(GDPに対するシェアは落ちているものの基幹産業でもある)鉱山への供給は優先されてきたと思われる。

さて、どうなるか。2008年の再来はないと思われるが、プラチナが目立って上がる材料は、生産障害が材料とここまで何度もセミナーでは話してきたが、今回のエスコムの被害状況によることになる。

13日のセミナーでは、こんなことになったので予定していない南アの話も少し入れることにしましょうかね。


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