世界はキラキラおもちゃ箱・2

わたしはてんこ。少々自閉傾向のある詩人です。わたしの仕事は、神様が世界中に隠した、キラキラおもちゃを探すこと。

スザンナと長老たち

2018-12-31 04:11:40 | 青空の神話


ジョゼフ・マリー・ヴィアン


庭で水浴をしていた貞淑な人妻スザンナの姿を、影からふたりの長老が覗いていた。そして長老たちはスザンナを、われわれと関係しなければ庭で浮気していたと告発するぞと脅した。スザンナはそれを断ったので、逮捕され処刑されそうになったが、告発者の虚偽が明白になり、スザンナの無実が証明された。



裸の女性につめよるふたりの老人の姿が実にいやらしい。男性というものは品なく老いるとこういうことをするようになります。年をとっても若い女性への欲望を抑えることができない。そして思いを遂げるために実に嫌なことをする。こういう人はでたらめを言っても平気なのです。昔からこういうことはよくありました。覗きも噓も冤罪も、たくさんありました。





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ナルキッソス

2018-12-30 04:11:31 | 青空の神話


ニコラ・プッサン


ナルキッソスは美しい少年だったが、心冷たく、思いを寄せる娘たちを振り向きもしなかった。ニンフのエコーも思いを寄せたが相手にもしてもらえない。その苦しさからエコーは失敗をし、それをとがめられて女神に呪いをかけられ、人の言ったことを繰り返すことしかできなくなった。それでもエコーはナルキッソスを追いかけたが、ナルキッソスはおまえにつかまるくらいなら死んだ方がましだと言って去っていった。悲しんだエコーはやせ細り、ついには声だけになってしまった。そんなナルキッソスの冷たい心を見た復讐の女神ネメシスは言った。「心の冷たいものは自分自身を愛するがいい」するとナルキッソスは水に映った自分を見てそれを好きになった。だがどんなに愛しても水に映った影はこたえてはくれない。悲しみにくれたナルキッソスは水辺で死んでしまい、その後には美しい花が咲いた。その花はナルキッソスと呼ばれるようになった。



ナルシシズムの語源となった神話ですが、自分を愛するということには高いものと低いものがあります。低いものは動物的エゴで自分を守るというもので、自分のことしか考えず人を傷つけても何とも思わないような人を説明するのによく使われます。未熟な人たちにこういう者は多い。だが高い自己愛というものは、真実の自分に対する絶対信頼を意味します。金剛石のように硬く自分を信じ、愛のためにすべてをやっていく自分の美しさを愛するのです。
水に映った自分などは幻だ。形だけに過ぎない。本当の自分は愛する自分なのです。愛でなにもかもをやっていく、美しい自分の存在そのものを認めそれを愛するとき、人は永遠に幸福なのです。





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バベルの塔

2018-12-29 04:11:48 | 青空の神話


トビアス・フェルハークト


人々は煉瓦とアスファルトで、天にも届く塔を建てようとした。それをごらんになった神は、人々の言語を混乱させた。言葉が通じなくなった人々は塔を建てられなくなり、各地に散っていった。



天にも届く塔というのは事実上不可能ですが、人間は高い建物を建てたがりますね。都会のビル群など見てもそう思う。だがあれはいつか痛いものになるでしょう。空調がなければ、高いビルは居住域として役に立たない。つまりは空調が滅びればビル群のそそり立つ都市は滅ぶのです。神は人間の言語を乱すように、空調を滅ぼすこともおできになる。人間の傲慢が目に余るものと神の目に映れば、神はそうなさるかもしれません。





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アラクネ

2018-12-28 04:11:20 | 青空の神話


ルカ・ジョルダーノ


アラクネは優れた織り女だった。その腕はアテナ女神をも凌ぐと豪語するほどだった。これを聞き留めたアテナはアラクネと勝負することにした。アラクネの技は豪語するほどもあり女神にも劣らないほど素晴らしいものだった。これに怒ったアテナはアラクネの織り上げた布を引き裂き、アラクネを打ち据えた。恥じたアラクネは首をくくって死んだ。ここにおいて後悔した女神は、トリカブトの水を遺体に振りかけて、彼女を蜘蛛にしてやったという。



何にしろ奢りというものは身を亡ぼすものです。いかにすばらしい技術者であってもそれを神の前に誇ってはなりません。この神話にはほかのヴァージョンもあって、それでは見事にアラクネのほうが負けています。神の技の方がずっとすばらしかったのです。この世界に神にかなう者はいません。自分自身も含めて、すべては神が創ってくださったものだからです。進化の途上にある者はその自分を深く知り、神に真面目に学んでいかねばなりません。





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フローラとゼフュロス

2018-12-27 04:11:29 | 青空の神話


ヤコポ・アミゴーニ


西風の神ゼフュロスはある日ニンフのクロリスを見初めて強引に思いを遂げた。だが悲嘆にくれるクロリスの姿を見ているうちに後悔し、彼女を女神にしてやった。こうしてクロリスは花の女神フローラとなった。フローラはゼフュロスとの間に果実の神カルポスを産んだという。



女性にこういう苦しみを与えたことのない男性はいません。未熟な男性は人の気持ちなどわかりませんから、なんでも自分の思い通りにしようとして、人を傷つけてしまうことがあります。だがいつまでもそれを放っておいてはいけない。ちゃんと女性の心の傷をなんとかするべく、何かをしてあげねばなりません。それは男性の義務です。






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ダヴィデとゴリアテ

2018-12-26 04:11:28 | 青空の神話


ドメニコ・フェッティ


ペリシテ人とイスラエル人が敵対していた時、ペリシテ側の巨人ゴリアテが、一騎打ちをしようと提案してきた。しかしイスラエル側にはこれに応えられるものがいなかった。そのとき少年ダヴィデが現れ、投石器で石をゴリアテの額に命中させて倒し、ゴリアテの剣を抜いてその首を落とした。



小さなものが大きなものを倒す神話というのはおもしろいものだ。まだ弱さをかこちがちな小さい人間たちは、わくわくしながらそんな話を聞きます。ダヴィデがゴリアテを倒したことは史実ですが、これが何千年もの間伝わっていくほど、それは印象的な出来事だったのです。実際、小さいものが大きいものに勝てることなどめったにない。それをダヴィデはやった。皆に目をつけられるのは当然のことでした。彼はこののち急速に人々の人気を集め、イスラエルの王になってゆくのです。





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地獄の門からケルベロスを動かすヘラクレス

2018-12-25 04:11:10 | 青空の神話


ヨハン・ケラー


ヘラクレスの最後の試練は、冥界に行ってその門の番犬ケルベロスを連れてくることだった。ケルベロスは頭が三つある獰猛な番犬だ。それを聞いた時さすがのヘラクレスも青くなったが、彼は神に導かれながら冥界に向かった。ステュクスの渡し守カロンを脅しつけ、様々な死者の亡霊と出会いながら、ヘラクレスは冥界を進み、やっとハデスの御殿についた。そこでハデスにケルベロスを貸してくれるようにたのんだ。するとハデスは「武器を使わずに奴に勝てたら貸してもよい」といった。早速ヘラクレスはケルベロスにいどみ、それを腕でしめつけて降参させた。こうしてヘラクレスは最後の試練も乗り超えた。



勇猛な英雄が最後に戦うものと言えばやはり、死でしょう。歴史上、これと闘おうとした男はかなりいますが、勝てたものはいません。どんな英雄も最後には死の軍門に下り死んでゆく。だがこの神話は、その死すらも従えてしまいそうなほどに、すごい男の姿というものを語っています。いかにも、最盛期の男というものは、死も従えてしまいそうなほど雄々しく見えるのだ。それもまた男というものです。絶対的にそれに逆らえない時期がある。勇猛というものは、盛り上がっていく苦しいエネルギーの最頂点というものを知っている。実にそれがいい。何もかもがいずれは終わることだとは知っているが、それを実にうまく活用できるのが男というものです。





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ヨセフとポテパルの妻

2018-12-24 04:11:13 | 青空の神話


ロドヴィコ・チゴリ


兄たちによって奴隷としてエジプトの隊商に売られたヨセフは、エジプトで軍隊長ポテパルのところに買われた。ヨセフはポテパルの家の中をとりしきったが、ある日ポテパルが留守であった時、その妻に誘惑された。ヨセフがそれを断ると、ポテパルの妻はヨセフが自分を襲おうとしたと主人に言いつけた。怒ったポテパルはヨセフを監獄に入れた。



女性が男性を性的に誘惑することは滅多にありません。美しい男性を欲しいと思うことはあっても、たいていの女性は自分からは誘いません。自分から誘えば男に軽く見られるし、断られたときの恥ずかしさは激しいものだからです。ですからこの神話は嘘でしょう。女の方から誘ってもらいたいと思っている男が考えたものでしょうね。





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ノアの箱舟

2018-12-23 04:11:54 | 青空の神話


ヤコポ・バッサーノ


神は地上の人間の堕落を見てこれを滅ぼそうと思われた。そこで正しい人ノアに語り掛け、箱舟を作らせた。ノアは人々に嘲笑されながらも神に従い、箱舟を建設し、そこに家族とあらゆる動物たちのつがいを招き入れた。やがて洪水がおき、それは40日の間続いて、地上の人々を滅ぼした。箱舟に乗ったノアとその家族たちは生き残り、それより後の人類の祖先となった。



洪水神話は世界各地に見られます。川は文明を産む滋養をもたらしますが、同時に時に氾濫して人類社会に大量死をもたらしました。その経験がこういう神話を産んだものでしょう。人間の大量死はまた新たな発展の種でもありました。生きのこったものがつくる新たな社会はそれまでと確実に違っていた。文明が堕落に染まる時、自然の神が水でそれを洗うということは多々あったのです。そしてそのたびに、人間は新たによみがえってきたのでした。





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ヴィーナスとニンフたち

2018-12-22 04:12:01 | 青空の神話


ルイ・ジャン・フランソワ・ラグルネ


クロノスが大鎌でウラノスの男根を切り落とした時、それが海に落ちて現れた泡の中から生まれたのが、愛と美の女神ヴィーナス(アフロディテ)だという。美しいかのじょに魅惑されないものはおらず、かのじょがいなければ世界に喜びはないと言われた。鳩がかのじょの使いであり、三美神カリテスはかのじょの侍女である。



この美しい女神は、男性の性器から出た泡から生まれたというのはおもしろい話です。見事に、見るものすべてを魅了し心を支配していくかに見える女神は、どこか男性的だ。男はこの女神にかなわない。神話では夫ウルカヌスを裏切って様々な男と恋をし、子供を生んでいますが、それは男の願望から生まれた神話です。このような女性は奔放であってほしいのです。それであわよくば自分の相手もしてほしい。だが、本当のヴィーナスは、じつはとても貞淑なのです。
夫を裏切ったりなどしない。だから美しいのです。





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