世界はキラキラおもちゃ箱・2

わたしはてんこ。少々自閉傾向のある詩人です。わたしの仕事は、神様が世界中に隠した、キラキラおもちゃを探すこと。

ナルキッソス

2018-12-30 04:11:31 | 青空の神話


ニコラ・プッサン


ナルキッソスは美しい少年だったが、心冷たく、思いを寄せる娘たちを振り向きもしなかった。ニンフのエコーも思いを寄せたが相手にもしてもらえない。その苦しさからエコーは失敗をし、それをとがめられて女神に呪いをかけられ、人の言ったことを繰り返すことしかできなくなった。それでもエコーはナルキッソスを追いかけたが、ナルキッソスはおまえにつかまるくらいなら死んだ方がましだと言って去っていった。悲しんだエコーはやせ細り、ついには声だけになってしまった。そんなナルキッソスの冷たい心を見た復讐の女神ネメシスは言った。「心の冷たいものは自分自身を愛するがいい」するとナルキッソスは水に映った自分を見てそれを好きになった。だがどんなに愛しても水に映った影はこたえてはくれない。悲しみにくれたナルキッソスは水辺で死んでしまい、その後には美しい花が咲いた。その花はナルキッソスと呼ばれるようになった。



ナルシシズムの語源となった神話ですが、自分を愛するということには高いものと低いものがあります。低いものは動物的エゴで自分を守るというもので、自分のことしか考えず人を傷つけても何とも思わないような人を説明するのによく使われます。未熟な人たちにこういう者は多い。だが高い自己愛というものは、真実の自分に対する絶対信頼を意味します。金剛石のように硬く自分を信じ、愛のためにすべてをやっていく自分の美しさを愛するのです。
水に映った自分などは幻だ。形だけに過ぎない。本当の自分は愛する自分なのです。愛でなにもかもをやっていく、美しい自分の存在そのものを認めそれを愛するとき、人は永遠に幸福なのです。





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