世界はキラキラおもちゃ箱・2

わたしはてんこ。少々自閉傾向のある詩人です。わたしの仕事は、神様が世界中に隠した、キラキラおもちゃを探すこと。

ヴィーナスとクピド

2018-12-21 04:11:39 | 青空の神話


ジョヴァンニ・アントニオ・ペレグリーニ


ヴィーナスはさまざまな男との間に子供を生んだが、エロスことクピドは、マルスとの間に生まれた子であった。翼をもつ若い男性の姿をし、手に弓矢を持つ。金の矢で射られたものは見たものに激しく恋し、鉛の矢で射られたものは、激しく嫌悪するという。美の女神ヴィーナスの忠実なしもべでもある。どんなすばらしい神も、彼の愛の矢にはひざまずかざるを得ないという。



愛の神エロスはもとはガイアが産んだ原初の神のひとりでしたが、のちにヴィーナスとマルスの子供になりました。もっと後には赤子のようなとてもかわいい姿になった。それは恋というものがみごとにそういうものだからでしょう。どんな立派な人も恋の前には子供のように愚かになる。あきれるほど馬鹿なこともしてしまう。そういう人間のさまをたくさん見てきた人間が、恋の神にそういう姿を与えたのかもしれません。愛と結婚というものを人は一段低いものとみがちだが、それを侮っていると、手痛い反撃を受けることがある。ヴィーナスの息子であることには、重い意味があります。





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ハルピュイア

2018-12-20 04:11:15 | 青空の神話


ギュスターヴ・ドレ


黄泉の国の王ハデスまたはゼウスの手下。老婆のような顔、胸には乳房があり、そこから下は鳥になっている。はげわしのつばさ、鷲のかぎ爪を持つ女の怪物。食欲旺盛で、食べものを見ると意地汚く貪り食う上、食い散らかしたあとに汚物を撒き散らして去っていくという、この上なく不潔で下品な怪物。



下品な女性の隠喩です。女性の徳も愛も学んでいない動物的段階にいまだにいる女性は、このように集団に自我を溶かしてとても品のない存在になることがある。汚いことも間違っていることも、集団になれば何でもできると思っている節がある。獰猛で下品な存在。こういう女性が時に恐ろしい害を引き起こすことがある。





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ラミア

2018-12-19 04:11:25 | 青空の神話


ハーバート・ジェイムズ・ドレイパー


ベーロスとリミュエの娘。リビアの女王であったが、ゼウスに目をつけられてヘラに妬まれ、ゼウスとの間に生まれた子供をすべて殺され、自身も怪物に変えられてしまった。ラミアは悲しみのあまり、子供がいる他人をうらやんで、子供を食う怪物になってしまった。
吸血鬼の一種とも言われる。



ひどい話ですが、こういうことはかなりあります。人はあまりに悲しい目にあいすぎると、狂うことがある。自分以外のすべてを攻撃する、魔のようなものになってしまうことがあるのです。やたらと人を不幸に突き落とし、それに愉悦さえ感じるようになってしまう。だから人間の魂をさいなみすぎてはならない。何につけても、限界があるということを考え、バランスをとらねばなりません。





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リリス

2018-12-18 04:12:00 | 青空の神話


ダンテ・ゲイブリル・ロセッティ


リリスはアダムの最初の妻と言われる。しかしアダムに従うことに反発し、悪魔と姦淫を重ねてアダムの元を出ていった。アダムはリリスを神に訴え、神はそれを受け入れてリリスの子を殺すと脅した。リリスはそれに絶望して紅海に身を投げて死んだ。その後に、イヴが創られた。



夜の魔女と言われるリリスの伝説です。貞節なイヴに対するもの。女性のネガティヴな面の表現と言えましょう。男性に従うことが女性の徳とは言いません。だが男性を尊敬できない女性というのは問題がある。いやらしいことしかしない馬鹿だと、男を頭から考えているような女は痛いものだ。男は女とは違い、強い骨も筋肉も持っている。それゆえの可能性は女性とは違う。その真価を、女性は認めねばならない。貞節を誓うことは、その男性の心を尊ぶことなのです。





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ヘラクレスとオムパレ

2018-12-17 04:11:12 | 青空の神話


フランソワーズ・ルモワーヌ


リュディアの王妃オムパレは、神託によって奴隷となったヘラクレスを買った。オムパレはヘラクレスに傲慢にふるまい、衣装を変え、自分はヘラクレスの毛皮とこん棒をまとい、たくましいヘラクレスには女装をさせ、糸紬のような女の仕事をさせてからかったと言われる。しかしある時森から奇襲を受けたオムパレを、ヘラクレスがその剛力で助けたので、彼女は彼を夫にし、三人の子を産んだと言われる。



ヘラに妬まれていたヘラクレスは試練の多い英雄でした。オムパレは男をからかうようなところから、あまりかしこい女性とは思えない。そういう女性に奴隷として仕えねばならないというのは、男にとっては激しい屈辱でしょう。しかしそういう屈辱にも、鋼の忍耐力で耐えられるのが、真の英雄というものだ。
ヘラクレスが魅力的なのは、こういう、木の葉の下をくぐらねばならないような、痛い試練もくぐりぬけているからです。





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楽園からの追放

2018-12-16 04:11:23 | 青空の神話


ルーカス・ファン・レイデン


へびに騙されて知恵の木の実を食べたアダムとイヴは、自分たちが裸であることに気付き、慌てて無花果の葉で隠した。それを見た神は、アダムとイヴが禁を破ったことを知った。そして彼らを楽園エデンから追い出し、エデンの東にケルビムと炎の剣を起き、命の木の道を守らせた。



楽園喪失の神話は、子供から大人への脱皮の時期に現れる人間の苦悩がモデルとなっていると思われます。子供はいつまでも親に甘えて楽をしようとするが、親はそれを許さない。ある程度大きくなったら、自分で耕して稼いで暮らせと言われるのです。イヴが得る産みの苦しみも、アダムが得る労働の苦しみも、大人の苦労だと言えましょう。もう子供ではなくなったのだから、親のひざであるエデンから出ていき、自分で生きていかねばならない。
それは成長していく人間にとって、たびたび味わわねばならない、成長苦と申せましょう。だれも、子供のころの楽園には、二度と戻れない。





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タイタニック号の沈没

2018-12-15 04:11:16 | 青空の神話


ヴィリー・シュテーヴァー

決して沈まないと言われた豪華客船タイタニック号は、1912年イギリスのサウサンプトンを出港し、その四日後、北大西洋で氷山に衝突して沈没した。



タイタニックというのはタイタンからきています。ギリシア神話にある巨神族ティターンのことです。要するにこれは、人間の傲慢の象徴と言えましょう。ティターンはオリンポスの神々の前世代の神々でした。巨大な体を持っていたとされる。しかし彼らはことごとく次の世代であるオリンポスの神々に敗れ去った。それは、自分のことを巨人の様に大きいと思っていた人間たちを、そうではなくほどほどなのだとわかるようになったあたらしい世代が滅ぼしたのだとも言えるのです。船にタイタニックと名付けたのは、人類が文明を誇り、その傲慢が鼻持ちならないほど痛いものになったということでしょう。その隙をつくかのように、氷山が現れる。人間はいつもこういう過ちを繰り返している。そのたびに痛い目にあい、自分というものを思い知らされてきたのです。





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クレオパトラの死

2018-12-14 04:12:50 | 青空の神話


ルイ・ジャン・フランソワ・ラグルネ


ローマの最高権力者カエサルにとりいり、エジプトを取り戻したクレオパトラはカエサルの死後マルクス・アントニウスの心をひき、権力の維持を図る。だがアントニウスがあっけなく死んだあと、絶望し、毒蛇に乳房を咬ませて死んだという。



絶世の美女の代名詞として伝わる美女の名前です。数々の男を魅了した女性は、実際は絶世の美女というより知性高く話術の巧みな魅力的な女性であったらしい。権力への欲望をメインとして生きたが、最後には愛する男とともに葬られることを望んで死んだという。
アントニウスは平凡な男だったが、一番彼女を一途に愛した男だったそうです。





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アリオン

2018-12-13 04:11:20 | 青空の神話


フランソワ・ブーシェ


あるとき優れた詩人であるアリオンはシチリア島の音楽界に参加して優勝した。それから故郷に帰る途上の船の中で、彼の持っている賞金に目が眩んだ船乗りたちに殺されそうになった。最期を悟ったアリオンはせめても美しい歌を歌った。するとそれに引かれて海にいるかが集まってきた。海に落とされたアリオンはいるかの背にのり、無事にコリントスの岬にたどりついた。



ご承知のとおり、ムジカはいるか座の18番星です。全天で目立たない小さな星座の中の、また目立たない星。そういう星が今、この活動の中で重要な仕事をしています。
アリオンを助けたイルカのように、殺されそうになっている本当の詩人を助けたいと。
今は馬鹿ばかりが栄えて嘘の歌ばかり吹いている時代ですから、あまりに生きることが難しい。だが、生き残っている歌はある。ムジカと名乗る星は、そういう本当の詩人たちを助けたいのです。
わたしたちが自分の名前として採用している星の名前にもそれぞれ意味があります。
アンゲテナルは「川の曲がり角」という意味のエリダヌス座の星です。





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クー・フーリン

2018-12-12 04:11:08 | 青空の神話


ジョセフ・クリスティアン・レイエンデッカー


セタンタは五歳のときに、クランという男が飼っていた、十人の戦士がかかっても倒せない犬を倒したため、クランの番犬すなわちクー・フーリンと呼ばれるようになった。クー・フーリンは激情的に敵を倒し続け、武術を磨き、常に勝利者の側にあった。だがその彼にも死ぬときが来た。ある日森で三人の一つ目の老婆が犬の肉を焼いているのにクー・フーリンは出会った。老婆たちはクー・フーリンに肉を食べて行けと誘った。彼は下の身分の者からの食事の誘いは断らないという誓約を持っていたが、同時に自分の名前にちなんで犬の肉も食べないと誓っていた。クー・フーリンが誘いを断れずに犬の肉を食べると、誓いに反したために彼は体がしびれ、敵の槍に打たれて死んだ。



どんな英雄も、最後には負けます。負けすなわち死だ。男の戦いとはそういうものです。どこかで、負けるということを経験しない限り、男は真の英雄にはなれません。勝ち続けていれば、その男は馬鹿になってきて、いずれは世界に害をなす魔になるからです。痛いところで引くことを勉強しない限り、男はバランス感覚というものが身につかない。負け方を教える神話は重要だ。このように、どうしようもない条件を飲まねばならない時、自ら滅ぶことを選択することも、男はできねばなりません。





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