徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

ドイツ情報、ヨーロッパ旅行記、書評、その他「心にうつりゆくよしなし事」

書評:天藤真著、『大誘拐』(創元推理文庫)~第32回日本推理作家協会賞受賞

2019年09月30日 | 書評ー小説:作者サ・タ・ナ行
文藝春秋の2012年版〈東西ミステリーベスト100〉第7位の、この『大誘拐』は誰も死なないし、最初から犯人が刑務所で知り合った3人組と分かっているため、典型的な推理小説のパターンからはかなり逸脱しているのですが、誘拐の被害者であるはずの紀伊半島の大規模な山林を所有する大富豪・柳川家の女主人(82)が誘拐犯たちの計画の穴をついてアドバイスしたり、身代金は100億じゃないと沽券にかかわると言い出したり、途中から警察との知恵比べに関する主導権を握り、誘拐犯3人組を完全に手なづけてしまうところがユーモラスです。結局おばあちゃんの一人勝ちのようなストーリー展開です。

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書評:Ostfried Preußler著、『Krabat』(Thienemann)

2019年09月29日 | 書評ー小説:作者ハ・マ行
この前読んだ『Das kleine Gespenst(小さなゆうれい)』に続いて、1972年度ドイツ青少年図書賞(Deutscher Jugendbuchpreis)を始めとする様々な文学賞を獲得した作品『Krabat』を読んでみました。ハードカバーで256ページの長編で、August der Starke アウグスト強健王として知られるザクセン選帝侯アウグスト1世兼ポーランド国王アウグスト2世の治世(1694~1763年)の時代の話のため、今では使わなくなった言葉やザクセン方言・スラブ語の要素が混じり(Kantorka = KantorinやFöhre = Kiefer「松」など)、調べることが多く、自分のドイツ語の語彙力が乏しいのではないかと疑いましたが、中にはドイツ人のダンナも首をかしげるものがあって(dritthalb = zweiundeinhalb 「2½」、Scholta = Schulze 「町長」など)、ちょっと安心しました😅 児童文学と侮るなかれ、ですね。

両親を亡くした後乞食として暮らしていた14歳の Krabat クラーバットが夢のお告げ(?)に従い、好奇心から Koselbruch コーゼルブルッフにある水車小屋に行き、そこで製粉マイスターの弟子入りします。1年目、2年目、3年目と3章にわたって水車小屋での出来事、友情と死別の悲しみ、そして秘めた恋が語られます。
クラーバットは最初、嫌になったらやめて出て行けばいいと軽い気持ちで弟子入りしましたが、実はマイスターは魔法使いで一度弟子入りした者はマイスターの命じる用事で以外で敷地を出ることができないと判明します。1年で Lehrling 弟子から Geselle 職人となったクラーバットはその日から毎週金曜日の夜にカラスに変身して仲間たちと一緒にマイスターの魔法の授業を受けることになります。年末が近づくと仲間たちみんながナーバスになり、クラーバットの世話をしてきた Tonda トンダは「みんな怖がっているのだ。理由はいずれ分かる」と説明しますが、当のトンダが大晦日の日に死んでしまいます。彼の埋葬が終わるころ、新しい弟子が入ってきます。そして、その翌年も Michal ミヒャルという仲間が同じように唐突に死亡します。その後に同じように新しい弟子が入ってきます。このおどろおどろしいミステリーが1つの魅力です。もう1つはクラーバットの秘めた恋の話です。トンダが「好きになった女の子の名前を仲間の誰にも、ましてやマイスターに知られてはならない」と警告されていたこともあり、クラーバットは彼女の本名を尋ねることなく Kantorka カントルカ(先唱者)と呼びます。知らなければ秘密を洩らしようがないからですが、結局最後まで彼女の本名が明かされないのはどうなんでしょうね😒 
なにはともあれ、どうやってクラーバットがマイスターから解放されるのか、そこに至る命がけのサスペンスが読みどころです。

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書評:Ostfried Preußler著、『Das kleine Gespenst(小さなゆうれい)』(Thienemann-Esslinger)



スペイン・アンダルシア旅行記 IV(2)カルモナ

2019年09月28日 | 旅行

9月3日にセビリアを出て、カルモナには2泊しました。宿泊先は憧れのParador De Carmona Hotel。2泊朝食付きで285.60ユーロ。さすがに4つ星ホテルで豪華朝食ビュッフェはお値段が張りますね😅
古いお城を改装したホテルなので独特の中性的な雰囲気がありますが、バスルームはモダンです。高台なので窓からの見晴らしもいいです。
   
レセプションが3階で部屋が一階というのも変な感じがしますが、斜面に建っているので入り口が高い方にあり、部屋は斜面を降りたところにあるわけです。
プールに行くには1階から出てさらに外の階段を降ります。
 

カルモナは小さい街なので観光もそこそこにこのプールを堪能させてもらいました。😊 9月とは言えずっと33~35℃だったのでプールがありがたく感じられましたね~。

ホテルのレストラン
 
2日間の朝食。1日目。
   
2日目。

パティオもすてきです。昼間は真ん中の噴水でハトがたくさん水浴びをしていましたが…


カルモナ概要
カルモナはセビリアから北東に43kmのところにある、Guadalquivir川沿いの人口3万人に満たない小さな街です。高台にあり、周囲を見渡せる戦略的に重要な地形のため、先史時代から間断なく人が住み、古代では商都として栄えました。カルタゴの植民地としてKar-Hammonと名付けられたのがCarmonaの語源です。ローマ帝国時代はCarmoと呼ばれていました。ローマ時代の名残としてセビリア門、橋、ネクロポリス(死者の街)、円形劇場が残っています。セビリア門とコルドバ門を結ぶラインにローマ時代の道路の名残があり、途中の円形広場もForumの名残です。ローマ帝国崩壊後西ゴート族がスペインに「民族移動」し、西ゴート王国を打ち建てたことは世界史で習いましたが、カルモナにも西ゴート族の遺跡が発見されています。しかし、観光名所になるようなものは残されていません。
8世紀以降のモーロ人支配下で城壁や城が造成され、今日のカルモナの基礎ができました。
1247年にカスティリャ王フェルディナンド3世がカルモナを落とし、ドン・ペドロ残酷王が王城 Alcázar de la Puerta de Marchena を拡張し、好んでそこに滞在しました。カルモナは1630年に都市特権を獲得しました。

カルモナ観光
カルモナではガイド付きツアーに参加しました。セビリア門 Puerta de Sevilla のところにあるツーリストオフィスがセビリア門の入場料2ユーロだけで門の他に教会や市庁舎(中にローマ時代のモザイクがある)なども案内してくれます。
セビリア門は、門だけでなくAlcazarが併設されているのでなかなか規模の大きな建物です。
       

城壁の中核をなすのはイスラム様式ですが、ローマ時代の古い層も残っており、キリスト教王による拡張部分も併せて3層となっています。城壁で囲まれた中庭のような広い敷地にはローマ時代の神殿跡が発掘されています。


塔の上からカルモナが一望できます。たまたま運悪く曇りの日にあたってしまって残念でしたが眺めは良かったです。
 

パノラマ撮影。中央に写っている塔は Parroquia San Bartolomé de Carmona のものです。


セビリア門からこれとは逆方向に Calle Prim という商店街を通って上って旧市街の中心に向かいます。

この通りを上りきると Plaza San Fernando という元ローマ時代のフォーラムだった円形広場に出ます。


この広場にはルネサンス様式のファサードを持つ旧市庁舎があります。

レストランやカフェもたくさんあります。ツアーではここを通り抜けて聖マリア教会 Iglesia de Santa Maria というモスクの跡に建てられた教会へ行きました。この教会にはモスクだった頃のパティオがそのまま残されています。
 
教会の中は普通にキンキラキンです。😅 とはいえ、主祭壇はお祭り用に赤い布が張られていてキンキラはその後ろに隠れてしまっていたのですが。
 
こちらはチャペル。
 
側廊にも祭壇が。
聖マリア教会の向かいにある修道院。
カルモナは小さい街なのに、教会が7つもあるそうです。人口3000人当たりに1つの教会という割合(?)。
教会見学の後は Plaza San Fernando の方に戻って新市庁舎の中に入りました。ここの中庭には道路工事の際に発掘された大きなローマ時代のモザイクが保管されています。
 
小さめのモザイクは会議場に飾られています。
   
カルモナはちょっと掘るとすぐにゴロゴロと遺跡が出てくるような土地柄で、出土品はすべて市が引き取るそうです。市役所に飾れない分は市の博物館に保管されるそうです。

この後市場として建てられたスクエア型の広場 Plaza de Abastos (Mercado) へ。残念ながら市場としては失敗作で、テナント不足にあえいでいるようです。
 
数件入っているレストランが閉まっている時間ということもありますが、シャッターが下りていて人気があまりないのが残念ですね。白いアーチの回廊はすてきだと思うのですが。
ここでガイド付きツアーは終了しました。
この後暑い中ネクロポリスへ向かいました。城壁の外の街並み。
 
ネクロポリスの敷地はかなりの広さなのですが、私たちが着いたのは閉館1時間弱前だったので全部は見ることができませんでした。もっとも墓穴ばかり見てもあまり面白くはないと思いますけど。😅
入り口近くには古墳のような墳墓があります。
ここのハイライトは裕福な家族の墓所と考えられている「La Tumba del Elefante 象の墓」です。儀式を行う場所でもあったらしく、貯水池の他台所や食堂と思われる場所もあります。写真で左側に岩を掘ったエリアがあり、そこの入り口に象の彫像があったらしく、それがこの墓所の名称になっています。
 
紀元前1世紀から紀元後2世紀までに作られた墓穴群の一部は屋根付きで説明パネルがあります。
  
ローマ時代の神殿跡もあります。
 
ネクロポリスの隣は円形劇場の発掘現場です。発掘中のため、一般公開されていませんし、外から見たところそれっぽい形跡がちょっと見えるだけです。

ネクロポリス見学終了後、暑い中またてくてく歩いてランチを食べられるところを探しました。結局ネクロポリスとセビリア門の間にはろくなレストランがなかったため、セビリア門まで戻ってしまいました。そこで L'Antiqva Bodega Abaceria というレストランを見つけ、ちょっと遅いランチをいただきました。タパスの種類が多くて選ぶのが楽しかったです。😀
Melva canutera con pimentá + Mojama de atún + Ensaladilla 真ん中のマグロの燻製はこの地域の特産物らしいです。お皿じゃなくてただシートに載せてサーブする辺りが面白いですね。
Pulpo a l'Antiqva タコは美味しかったですが、ちょっと辛すぎな感じでした。
Berenjenas gratinadas con jamón y gambas 茄子のグラタンが激うまでした。

タパスでお腹いっぱいで満足した後はホテルに戻ってプールサイドでゴロゴロしながら読書しました。もちろんちょっとくらいは泳ぎましたけどね😏
日没後、9時過ぎくらいにホテルを出てレストラン探し。昼間見た市場の Plaza de Abastos のレストランの1つで手を打ちました。TripAdvisorに載ってないようなところですが、やはりタパスが安くて美味しかったです。
Alino de tomates con vinagre de Jerez へレスのお酢とはシェリー酢のことでしょうね。シンプルですが美味しいトマトサラダ。
 
Alcachofas con jamón アーティチョークとハムはちょっと脂っこかったですがスペインらしい味がしました。
 
Chipirón braseado con migas extremenas 小さいイカとミガスというパンくずの揚げ物。これも美味しかったです。
 
Solomillo de cerdo ibérico al whisky イベリコ豚ヒレのウイスキー焼きも美味。
 
Tarta de manzana リンゴケーキはどちらかというと素朴な味でした。
 
これだけ食べてチップ込みで20ユーロ!安くて種類がたくさんあって美味しいというのが一番満足感がありますね😃

翌日9月5日はホテルのチェックアウトを済ませてから隣接する王城跡 Alcazar del Rey Pedro へ。入場料2ユーロ。陰になるところがほとんどないので小さな日傘を貸してくれたのですが、あまり役に立ったとは思えませんね…😅
     
Puerta de la Piedad 「慈悲の門」ってどこらへんが?という感じですが…
 
向こう側はパラドールホテルの敷地。
 
塔の上から撮影。真ん中の塔が貯水塔、その右手がバルコニーの間、その手前の平らな部分が噴水の庭だったそうですが…😶
 
深く掘ってある部分は Aljibe と呼ばれる水槽跡。
 
パラドールホテル
下のはどこの門を撮影したのかよく分かりません。
このペドロ王城跡はカルモナで最も高い所に立っています。元はマウリヤ朝時代の要塞でしたが、14世紀、ペドロ残酷王で知られるペドロ1世が拡張し、新しい住居エリアを作りました。セビリアの美しいイスラム建築で知られるアルカサルは残っているのに、カルモナのアルカサルはパラドールホテルとして改装された部分を除いてただの城址になってしまっているのが残念ですね。15・16世紀にはカスティリャ王国女王イザベラとアラゴン王国の王フェルディナンドのレコンキスタを完成させた有名カップルがまたこの城を建て増しし、王の間やバルコニーの間などを作ったそうです。もう見る影もありませんが。
1942年にはナチス軍が駐屯していたらしいです。スペインは中立だったとはいえフランコはヒトラーシンパだったからですかね。

王城見学の後は Museo de la ciudad 市の博物館へ。入場料は2.50ユーロ。16世紀の貴族の屋敷を改装した建物で、パティオが素敵です。1階に先史時代からローマ時代・西ゴート王国時代あたりまでの出土品やカルモナの歴史をまとめたビデオがあり、2階は中世の道具類や近世の絵画などが展示されています。
              
コルドバ門のモデル

元馬小屋はレストラン Abaceria Museo Restaurante になっています。博物館が開いている時しか営業してないせいか割高です。
 
Variado de Croquetas チキンコロッケとほうれん草+鱈のコロッケのセット。ほうれん草+鱈の組み合わせが絶妙でした。
Tomates con Aguacate y Anchoas トマトとアボカドとアンチョビ。盛り付けからしてちょっと高級レストランぽいですね。
このちょびっとと飲み物で27ユーロでした。😨 美味しかったですが、量が少ないので割高感が半端ないですね。
食後にまた博物館見学をして、ダンナの気が済んだところで博物館を出てコルドバ門を見に行きました。
  
Puerta de Cordoba
コルドバ門を出たところから見た風景

なんか、日影がないですねー。😅
このコルドバ門をもってカルモナ観光を終了しました。

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スペイン

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日本

松本でお正月(2019)

葛飾八幡宮と八幡の藪知らず(千葉県市川市)


書評:松岡圭祐著、『高校事変Ⅲ』(角川文庫)

2019年09月23日 | 書評ー小説:作者ハ・マ行
『高校事変』シリーズの第3弾がもう書き下ろされて著者の執筆スピードに驚嘆するばかりです。😲 
犯罪史に残る凶悪な半グレ連合リーダーを父に持つ優莉結衣を全寮制の矯正施設・塚越学園への転入を薦めるために同施設のトップが訪ねてきますが、見学に出発した未明、突如として武装集団の襲撃に遭い、結衣の記憶はそこで途切れて、ふたたび目覚めたときには熱帯林の奥地にある奇妙な<学校村落>の建物の一室に寝かされていました。前巻の最後に登場した結衣の妹もそこに収容されていました。同じく日本から来た少年少女ら700人が生活しながら通学する、要塞化された校舎の謎。その構造はISやボコハラムに倣った恐怖支配で、すでに処刑された生徒も何人かいました。結衣は状況把握のために様々なことを試みますが、監視がきつい上に相手が結衣の手口を知り尽くしており、監視要員も元軍人であるため、隙をつくこともまともに張り合うこともかなわず絶体絶命の危機に陥ってしまいます。結衣は誘拐された少年少女らとともに脱出することができるのか!?とハラハラします。
これまで結衣が直面してきた課題よりさらにレベルアップしています。これに対処するために結衣は孤高の存在を貫かず、仲間を作り、彼女と脱出劇で活躍する仲間たちが一種の人間的成長を見せるところが読みどころですね。


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スペイン・アンダルシア旅行記 IV(1)セビリア

2019年09月22日 | 旅行


2019年秋のアンダルシア旅行は8月31日~9月14日の2週間でした。
セビリア滞在は最初の3泊だけで、前回見逃した Museo de Bellas artes と Plaza España を見学した以外は適当に歩いていて偶然見つけた Palacio de las Duenas がハイライトでした。
ホテルは1つ星のZaida。小さなパティオがあり、なかなかアンダルシアらしい雰囲気のところ。ダブルルーム3泊素泊まりで228ユーロ。


部屋はやや小さめ。

 
チェックイン後部屋で持ってきたお弁当(サンドイッチ、サラダ、果物)を食べてから散歩がてらGuadalquivir川へ。セビリアの象徴ともいえる黄金の塔Torre d'oroが見える範囲で移動しました。
Puente de Isabella II から見た Torre d'oro

対岸から見た Torre d'oro
 
そしてTorre d'oroを眺めながら夜のデザート。

9月1日の朝食は近所のパン屋兼カフェSantagloriaで。

安い朝食セット(コーヒー&トーストで2.50ユーロ)では物足りないのでサンドイッチ、ジュース、コーヒーを頼んだらホテルの朝食より割高になってしまいました。まあでも、食べたいものを選んだという満足感は得られましたが。

朝食の後はお目当てのMuseo de Bellas artes へ。ホテルから徒歩3分。美術館前の広場では絵がたくさん売られてました。



この下の横長の海と空の絵が素敵なブルーで気に入りました。荷物になるので買いはしませんでしたが。


この美術館は元はConvento de la Merced Calzadaという修道院だったところです。1612年に完成した建物です。美術館の中は3つのパティオと小さな回廊のない中庭を囲む2階建てギャラリーと元は教会だった天井の高い建物があり、特に元教会のバロック様式の丸天井が見ものです。

入り口から入ってすぐのところにあるパティオPatio del Aljibe

回廊のない中庭

その隣のパティオClaustro Mayor。

階段室の天井もバロックですね。

階段室を通り抜けた、少し隠れたところにあるパティオClaustro de los Bojes。回廊はトスカーナ様式のアーチだそうです。高い木がないからなのか、他のパティオに比べると1~2度暑いと感じました。


元教会の丸天井。この美術館のハイライト


この天井をよく見るために真下のベンチに転がるダンナ😆 

元教会の部分はこの円天井と祭壇部分を除いて改装中で見れませんでした。まあ宗教画にはあんまり興味はないので別にいいのですが。
ギャラリーの2階は絵画が多くあまり興味を持てるものがなかったのですが、2つだけ印象に残った絵がありました。海女さんとおしゃまなイレーネの絵です。

特にこの、こまっしゃくれたちょっと小賢しい感じの少女の内面がにじみ出ているのが印象的です。
 
美術館のあとはすぐ近くのお店Pikislabis Sevillaでランチ。変わったメニューだけど美味しかったです。😋 
 

Risotto Iberico イベリコハムとミルク入りリゾット

Tabule con frutas y vinagreta de kikos これもなんかリゾットみたいでしたが、ライスではなくクスクスとフルーツのサラダです。

Duo de Tacos con sus 2 salsas チキンのタコス。

この後ホテルでシエスタして、それからまた街中をぶらぶらしました。2年前にうろうろしたアルカサルや大聖堂がある辺りまでホテルから徒歩で15分ほどでしたが、まっすぐにそこへ向かったわけではないので半時間以上かかったかと思います。
         

アルカサルのそばを通り過ぎてさらに15分くらいてくてくと歩いて前回行けなかったPlaza de Espanaに辿り着きました。

広々としてすてきなところですね。😍 さすがにボートに乗るのはベタ過ぎるのでやめましたけど。😅 

お城の正面から撮影

左右にある塔の1つから反対側の塔を撮影

この、陶器だと思うのですが、柵が素敵です。

広場をぐるっと囲むように都市名を冠したタイルのベンチ(棚付き)がユニークです。

この区画に登場する都市の一覧がタイルで記されていました。


フラメンコのグループが居たのでかなり長いこと見物してました。

階段の上から撮影

最後の記念写真。

動画も撮影しました。

お金を集めに来た人に10ユーロあげたのですが、もっとあげてもいいくらい楽しませてもらいました。
パフォーマンスが終わったのは9時ごろでしたが、まだ明るく、ボートに乗っている人も。

ランチが遅かったため9時過ぎてもまだそれほどお腹が空いてなかったので、このスペイン広場に隣接する公園Parque María Luisaを少し散歩しました。池があるところには水鳥がいるものですね。
  

すてきなパビリオンも。Isleta de los Patos

日没後てくてく歩いてアルカサルのある方へ向かい、レストランを探しました。さすがに22時を過ぎていたのでまだ温かい食事を出すレストランの数は少なくなっていて、飲み屋ばかりで少々手間取りましたが、大聖堂を過ぎたあたりのところで急に看板にぶつかり、そこに決めました。Taberna El Papelonというところです。
夜の定番、サングリア。
 
メニュー
 

ステーキプレートがお手ごろな値段だったので、それだけを頼むつもりだったのですが、ウエイターにハムの盛り合わせを勧められてダンナが断り切れなくなってそれも頼むことに。イベリコ豚の生ハムはやはり美味しいですね。かなり脂っこいですが。

がっつりステーキ。ポテトも山盛り。

私は食べきれませんでしたが、ダンナが綺麗に残飯処理してくれました😅 

9月2日の朝も前日同様ホテル近くのSantagloriaでの朝食でスタート。ちょっと豪華にイベリコハムとチーズのトースト。

この日は特にこれといった目的はなく、ショッピングでもしようかと街をぶらぶらしました。

このモダンな(変な)広場の下に市場があるので覗いてみたのですが、まるで日本の小都市の駅前商店街のようにシャッターが閉まってる所ばかりで残念な感じでした。

ここから歩いて6~7分のところにPalacio de Las Dueñasというすてきスポットがあることが判明したので行って見ることにしました。入場料は10ユーロでお安くはないのですが、町の喧騒を忘れてパティオで憩いの時を過ごしたり、貴族のお屋敷の豪華調度を見学できたりするのでお勧めです。調度の方は王宮ほどの豪華さはありませんけど、ゆっくりじっくり見ても誰も文句を言わないのがいいですね。
入り口

案内板

前庭に面した馬車寄せ


側面の庭





中央のパティオ

パティオの回廊

お屋敷の中






裏庭


裏庭に面したテラス

白い椅子に座ってみました。

本当はもっとお庭でゆっくりしていたかったのですが、お腹がすいてきたので仕方なく出ることにしました。Soportales Tapasという近くのレストランでMenu del dia(ランチメニュー)。
前菜のサラダ

前菜のガスパチョ


メインのタラ入りシチュー papas con bacalao


メインのグーラッシュのような肉料理 carne en salsa


コーヒー付き

この後またショッピング。ダンナはなんと靴を三足も買いました。二足買うと50%引きになるとかで、調子に乗って。スペインの靴は質が良くて割安のものが多いらしいので、ドイツで買うよりはいいかと思いますけど。
私は念願の安物ではない扇子を買いました。

セビリア最後のディナーは El Picoteo de Plaza Nueva というタパスレストランで。あまりの安さ(2.20~3ユーロ)につい調子に乗って頼み、残飯処理の得意なダンナもさすがに全部は食べられなかったほど😆 
種類が多いとついついいろいろと試したくなって欲張ってしまいますよね。😅 

おなじみのサングリア。ここのは軽くて飲みやすく、お酒に弱い私でも酔いませんでした。


Croquetasスペイン風コロッケ。クロケタはお店によって味の差がかなり出る代物ですね。すっごくおいしい所もあれば、中がねちょねちょでまずい所もあります。ここのは合格点でした。
 

Ensalada de pimentos asados y tronco de Bonito(これが一番高くて6.50ユーロ)。炒めたピーマンとカツオのサラダ。


Tiras de berenjenas fritas 茄子の揚げ物というと黒いハチミツがかけてあることが多いのですが、ここのは違うソースでした。これはこれで美味しかったです。


Setas con iberico a la carbonalaキノコとイベリコハムのカルボナーラ和え、
Atun a la manchaマグロステーキ

Enchilada de pollo ラザニアのようにチーズをのせてオーブンで焼いたもの。鶏肉入り。

Enchilada de verduras 野菜バージョン。

これだけ食べて(食べきれませんでしたが)たったの36.90ユーロでした。チップをはずんで40ユーロ払いましたが、それでもお得感・満足感、半端なかったです。😊 😍 

セビリア最後の朝食はホテルから繁華街へやや歩いたところにあったFlores Gourmet(だと思うのですが)というお店のテラス席でモーニングセット(desayuno)を頂きました。二人分、チップ込みで10ユーロでした。

朝食後ホテルを引き払ってセビリア駅に向かい、そこでレンタカーを借りました。前もってネットから予約しておいた方が安く済んだとは思いますが、ダンナが現地で現物を見て選びたいといったので。。。12日間のレンタルで460ユーロはかなり割高な感じがしますが、他のEuropecarなどでは小型車がなくて7人乗りのバスを780ユーロでどうかなんて言われたりして腹が立ったのでGoldcarの460ユーロに決めました。
ダンナの希望でセビリア郊外の非常に現代的な太陽光発電所を近くから見学してからカルモナへ向かいました。その高速道路沿いのサービスエリアにあるレストランVenta Pazoでランチにしました。
プレート2つ、パン、飲み物、デザートがセットになったMenu del díaランチセットでまたがっつりと食べました。
前菜にガスパチョとサラダ
 
メインにチキン+ポテトと
 
魚フライのミックス(いわしとイカ&セピアが入ってたのは分かりましたが、他はなんの魚なのか不明)。
デザートはサンマルコという名前のケーキと
 
チーズケーキ
セットには含まれていない食後のコーヒーも頼んで、2人でチップ込みで27ユーロ。ボリュームに見合うお値段ですね。お味の方も合格点でした。😊 

カルモナへ続く...

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書評:松岡圭祐著、『高校事変』1&2(角川文庫)

2019年09月16日 | 書評ー小説:作者ハ・マ行

松岡圭祐の令和に入ってからの新シリーズ『高校事変』は、久々に若い特殊能力を持つ女性キャラが主人公となっていますが、17歳の少女である点と、純粋に正義の味方的なヒロインでないところがこれまでと違って新鮮です。

 

商品説明より:優莉結衣(ゆうり・ゆい)は、平成最大のテロ事件を起こし死刑となった男の娘。事件当時、彼女は9歳で犯罪集団と関わりがあった証拠はない。今は武蔵小杉高校の2年生。この学校に支持率向上を狙った総理大臣が訪問することになった。総理がSPとともに校舎を訪れ生徒や教員らとの懇親が始まるが、突如武装勢力が侵入。総理が人質にとられそうになる。別の教室で自習を申し渡されていた結衣は、逃げ惑う総理ら一行と遭遇。次々と襲ってくる武装勢力を化学や銃器のたぐいまれなる知識や機転で次々と撃退していく。一方、高校を占拠した武装勢力は具体的な要求を伝えてこない。真の要求は? そして事件の裏に潜む驚愕の真実とは? 人質になった生徒たちと共に、あなたは日本のすべてを知る! 

上の説明では言及されていませんが、武装勢力の侵入により生徒たちのほぼ半数と抵抗したSPたちが瞬く間に殺される凄惨を極めた事変であり、それに対抗するヒロイン優莉結衣も総理や他の人質となっている生徒を助けるために動いてはいるものの、父から仕込まれたあらゆる武器の製造・使用法や殺人の技術を活かして暴力をふるうこと自体に喜びを感じている面もあり、「敵」と見なした者たちに対する情け容赦しない冷徹さと17歳という若さに戸惑いと新鮮味を感じます。公安の監視と人権派の保護の狭間で自分の自由と生き方を探る結衣の立ち位置は、偏見の塊の大人を代表する公安とその偏見と闘う人権派のどちらからも正しく理解されず、そのこと自体が一種の社会風刺となっている一方で、結衣の特殊性と孤独を浮き彫りにします。

自分の立場をよく理解している結衣は、それを利用して自分の殺人行為をうまくカモフラージュし、絶対に罪に問われないように立ち回りますが、彼女に助けられた人たちと深い関係にならないように事変後は転校し、施設も変わることになります。

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IIでは「武蔵小杉高校事変」から2か月後、新たな高校と施設で公安の監視下大人しく過ごしていました。結衣と同じ養護施設に暮らす奈々未が行方不明になり、また、多数の女子高生が失踪していたことも判明します。結衣は奈々未の妹理恵に懇願され調査に乗り出すことになりますが、1巻のように混乱のさなかというわけではないため、公安の監視の目をくぐり抜け、様々なアリバイ工作をしながらの行動となります。JKビジネスの業者も買う側のモラルのなさに対する義憤を彼女の特殊能力を使って思いっきり敵にぶつけていくため、理恵と奈々未を救うまでに死体の山を築くことになります。

交通事故で人命を奪ったにもかかわらず逮捕もされなかった「特権階級」などタイムリーな話題が盛り込まれ、そうした社会の闇にダークヒロイン結衣の鉄槌が下されるのは、ある意味溜飲が下がりますが、結衣の行いは違法であることはもちろん、相手がどうあれ殺人であるため、単純にカタルシスを感じることもできません。そのあたりの苦々しさがこのシリーズの特徴なのかもしれません。

最後に学校・施設を奈々未が高校卒業するまで変えないことを約束するところが前回とは違う展開になっています。

また、彼女の異母妹が登場したところで終わっているので、次巻では彼女の過去がこの妹関連でもう少し詳しく判明するのかなと期待しています。

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2019年09月15日 | 書評ー小説:作者ハ・マ行
松岡圭祐は文庫化された作品も改訂する作家で、この『マジシャン』『イリュージョン』の連作も2002年の単行本発行、2003年文庫化、2008年再文庫化「完全版」を経た「最終版」とのことです。たまたま合本版でセールになっていたので買い置きしておいたのをスペインでのバカンス中に読み終えました。
『マジシャン 最終版』では、「金が倍になる」という奇妙な噂の事件性を疑う舛城刑事が、両親を失い里親は詐欺事件で逮捕されたために施設で育ったプロマジシャンを目指す里見沙希(15)の協力を得て詐欺師のトリックを暴いて事件を解決するというマジック関連の探偵ものですが、同時に里見沙希の成長物語でもあり、舛城刑事の学びの物語でもあります。マジックの専門的な考察の他、里見沙希の生い立ちや孤独感が掘り下げられており、ただの探偵ものには終わらない感動的な作品となっています。
続編である『イリュージョン 最終版』の時間軸は『マジシャン』の1年後になっており、両親に絶望した少年・椎橋彬が、趣味のマジックの知識を使い万引きGメンとして脚光を浴びるようになる一方、自らもマジックを駆使し、万引きGメンとして得られた信頼を悪用しながら万引きをし、ついに舛城刑事に追われることになりますが、証拠が不十分なために逮捕もままならずに逃走に成功します。舛城刑事は惟橋のトリックを見破るために里見沙希に協力を要請します。彼女は最初は協力を拒否したものの心境の変化から結局協力することになります。
椎橋彬の生い立ちから家出して年を偽り警備員の仕事に就き、万引きGメンとして脚光を浴びるまでの経緯や彼の心情、社会の理不尽さに対する怒りや親の愛情に対する飢え、マジシャンとしての驕りなどが深く掘り下げられています。
舛城刑事と里見沙希は椎橋彬は彼の犯罪を暴き、彼を追い詰めはしますが、同時に彼に対する深い理解を示し、彼の心からの反省を引き出すところが魅力的です。
 

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