徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

ドイツ情報、ヨーロッパ旅行記、書評、その他「心にうつりゆくよしなし事」

レビュー:大今良時著、『不滅のあなたへ 』全15巻(講談社)

2021年06月08日 | マンガレビュー


『不滅のあなたへ 』はアニメが今話題になって気になっているのですが、ネットフリックスなどを見ていないのでひとまず原作を読むことにしました。
1巻2巻がKindleで無料で読めるので試しに読んでみたら、その幻想的な世界観に惹き込まれ、現在出ている全15巻を大人買いして一気読みしてしまいました。
物語は1つの球体が地上に投げ込まれることから始まります。この球は、ありとあらゆるものの姿を映しとり、変化することができます。これがオオカミになって意識を獲得し、あてどなく歩いているうちに少年に出会い、その少年が死ぬとその姿を映しとって人間になります。この姿で人間社会に入っていくまでには少々時間がかかりますが、しばらくしてマーチという少女に会い、彼女に「フシ(不死)」の名前をもらい、人間としての行動と言葉を獲得していきます。不死身であることと変身できるという特性から人間社会の様々なことに巻き込まれていきますが、そのうちに優しい人間性を身につけて行くところが魅力的ですね。「痛いのが嫌」というのと、近くの生き物の痛みや感情をわがことのように感じ取ってしまうのが理由ですが。
巻を追うとフシの元の球を投げ込んだ謎の黒い人物が登場し、さらに彼の世界を保存するという計画を阻止しようとしているらしいフシを狙う(フシが獲得してきたもの・記憶を奪う)敵も登場し、永遠に終わらない戦いが展開していきます。この敵(後に「ノッカー」と命名)が地中に潜んで静かに成長し、いきなり出て来るというホラー設定なのと、主人公が人間の形も取れる時間を超えた存在なのとで全体的にホラーファンタジーという感じですが、時の流れが人間のそれではない悠久の世界の中で展開する様々な出会いがドラマチックで面白いです。

15巻セット(紙書籍)をAmazonで購入する

レビュー:大谷アキラ著、『正直不動産』全11巻

2021年05月16日 | マンガレビュー

登坂不動産のエース営業マン・永瀬財地は嘘を厭わぬ口八丁で売り上げNO.1を叩き出す凄腕だったのですが、とある地鎮祭で石碑を壊して以来、嘘がつけなくなってしまうという奇妙な設定なのですが、この珍〈正直者〉が千三つ(千の言葉に三つの真実)と言われる海千山千の不動産業界の裏側を暴露しながらストーリーが進行します。
この業界曝露がこの作品の一番の魅力で勉強になるところですが、巻が進むにつれてライバルが増えて展開するドラマが面白いです。あんまり面白くて、全11巻大人買いして一気読みしたばかりでなく、二度読みまでしてしまいました。

また、登坂不動産の社長も一見悪人面なのですが、なかなか懐の深い人情家でいい味出してます。他のキャラも味わい深いです。

11巻完結ではなく、ライバル社が登坂不動産と永瀬を潰すために、永瀬の過去に悪徳商法で売った物件を利用してちょっかい出してきてるところなので、それをどうやって乗り切るのか気になって仕方がないです。

巻末にはエッセイや不動産関係者との対談が掲載されており、本編で扱われたテーマ(例えば「地面師」「建築条件付土地売買」「瑕疵担保責任」「告知義務」「あんこ業者」等々)が改めて説明されているので、そちらも大変勉強になります。

『正直不動産』全11巻をAmazonで購入する(日本のみ)。
海外在住の場合、Amazon Kindle版は著作権の関係で購入できませんが、Hontoでは購入できます

レビュー:吉田秋生著、レビュー『YASHA』全12巻&『イヴの眠り』全5巻

2020年08月29日 | マンガレビュー


吉田秋生の『YASHA』全12巻とその次世代編である『イヴの眠り』全5巻を一気読みしちゃいました。ちょっと現実逃避気味です。本当は割と大きな仕事を抱えているのですが。。。日曜日返上で仕上げることになりそうですね。


さて、『YASHA 夜叉』は遺伝子操作によって生まれてきた子ども有末静(ありすえセイ) が自分を生み出した研究所やその関係者たちに反旗を翻し、その中で一卵性双生児の弟と敵味方に分かれた戦うストーリーです。彼を代理母として生んだヒサコは研究所から静をさらって沖縄の離島に彼を隠して育てたのですが、ついに2つの敵--1つは元婚約者だという製薬会社などを持つ雨宮ともう1つはアメリカの静を作り出した研究所--に見つかってしまい、静を逃そうとしたために米軍人に射殺されてしまいます。その結果、静はアメリカの研究所に収容され、英才教育を受けてウイルス学を研究し、18歳で博士号を取得。研究所の創設者の1人であり、静のメンターでもあった教授の助言で静は研究所を抜け出して日本へ帰国し、闘いの日々がスタートします。人類の大半を滅亡に追い込むような途方もない陰謀を目論む雨宮とその息子として育てられた静の双子の弟は静を仲間に引き入れようとしますが、引き入れられないと分かると力づくで手に入れようとあれこれ画策し、闘いのスケールがどんどん大きくなっていく感じは『Banana Fish』によく似ています。『Banana Fish』でチャイニーズのストリートキッズのトップだったシンがこの作品ではチャイニーズマフィアの大物として登場します。
パターンが似ているとはいえ、一度読みだしたら決着がつく最終巻まで息つく暇もなく一気に読んでしまいますね。すごいテンポと牽引力です。


YASHAの惨劇から18年後、静のボディーガードを務めていたケン・クロサキが、同じく静のために働いていたルー・メイと結婚しハワイでコーヒー農場を営みながら平和に暮らしていたところを、シン・スウ・リンの息子・烈(リエ)が訪れ、クロサキ夫妻の長女アリサ(実の父親は静)に危険が迫っているので保護したいと申し出るのですが、そうこうしている間に危険の元である静のクローンがハワイに上陸し、アリサと接触してしまいます。その後初めてアリサは自分の出生の真実と「竜の娘」と呼ばれるほどの特殊能力の理由を知ることになり、静のことをもっとよく知るため彼の元へ行き、魂がない残忍なクローンとの戦いの渦中に飛び込んでいくことになります。
ルー・メイとケン・クロサキのカンボジアでの出会いや、ケンと静の出会いなど親世代のエピソードが盛り込まれていて、『YASHA 夜叉』の次世代編でありながらスピンオフ的な感じもあります。それゆえのお得感もなくはないですが、ストーリー単独でいうとちょっと物足りない感じが否めないですね。5巻しかないのでストーリーが描き切れてない印象があります。面白くないわけではないですが、ちょっと残念ですね。


レビュー:吉田秋生著、『BANANA FISH』全20巻


レビュー:吉田秋生著、『BANANA FISH』全20巻

2020年08月22日 | マンガレビュー




大昔にこの作家の『吉祥天女』を読んだことがありましたが、その後すっかり忘れてました。
ある人に勧められたので、『BANANA FISH』全20巻を一気読みしてしまいました。
1985年、ストリートキッズのボス、アッシュがニューヨークのロウアー・イースト・サイドで、胸を射たれて瀕死の男から薬物サンプルを受け取り、その男は「バナナフィッシュに会え…」と言い遺して息を引き取るところから壮大なストーリーが始まります。
ベトナム戦争で出征した際、麻薬にやられて正気を失ったままの兄グリフィンの面倒をみていたアッシュは、兄が時々つぶやく「バナナフィッシュ」と同じことばを聞き、興味を抱き、真実を探ろうとします。
そこからアッシュを少年の頃に引き取り、その美貌と才能に惚れこんで後継者にしようと目をかけていた暗黒街のボス、ディノ・ゴルツィネとの対立が深まり、裏社会の複雑な人間関係からドラマが二転三転してきます。
一方、カメラマン助手、英二が雑誌の取材でアッシュと出会い、この事件にどんどん巻き込まれていく中で、アッシュと英二のなんとも不釣り合いで不均衡だけれども美しい友情が泥沼の中に咲く蓮のように輝きを放っています。
スケールが大きいハードボイルドっぽい空気が濃厚なのに少女漫画雑誌で掲載されていた、というところに少々驚きました。
主人公のアッシュはヨーロピアンエレガンスの権化かというくらいの美貌の持ち主でIQ200近い天才を生かしてリーダーシップを発揮するスーパーヒーローですが、その美貌ゆえの悲劇的体験や、殺さなければ自分が殺されるという世界に身を置いているせいで基本的に人間不信で孤独。その彼にとっての唯一の癒しになるのが平和な日本から来た英二という位置づけです。設定としては少女漫画的にはありがち、どっかで読んだ印象を受けるのですが、ただの平和ボケ君ではなく、アッシュに惹かれ、歩み寄り、理解する努力をし、彼を信じて支え助けようとする心の強さを持っているところが魅力ですね。派手な主人公アッシュに目が行きがちですが、その彼が戦いの足手まとい・アキレス腱となる英二を手放せず、守ろうとしてしまうだけの魅力があります。
この二人の強い絆が、バナナフィッシュというミステリーの見どころの一つだと思います。
ディノ・ゴルツィネのアッシュに対する執着も毒々しいスパイスです。こっちのネチネチドラマの方が好みという方も少なくないと思いますw


レビュー:ヤマザキマリ著、『テルマエ・ロマエ』全6巻(エンターブレイン)

2019年12月04日 | マンガレビュー

『テルマエ・ロマエ』は義妹が日本から予告もなく送ってきてくれたマンガですが、独特のおかしみがあり、ずいぶんと笑わせてもらいました。
ローマ帝国はハドリアヌス皇帝の治世下の紀元後128年、浴場技師として働くルシウス・モデストゥスは浴場設計のアイデアに悩みながら風呂に入っているうちに排水口と思しき穴から激しき吸い込まれ、ようやく出たところは現代日本の銭湯だったーという具合に風呂または池などの水を介して日本のどこか(「平たい顔族」の国)の風呂にワープして、そこからアイデアを持ち帰ってそれをできる限り再現することを繰り返すうちに皇帝自身のお抱えとなってどんどん奇抜な浴場施設を開発していきます。
このローマと日本の入浴文化をつなげる発想も面白いですが、まじめ一徹で始終しかめっ面で眉間にしわを寄せているルシウスが日本の入浴文化の些細なことを真剣に調べ、驚き、「なぜ下等に見える平たい顔族がローマの文明にはないものをこうもやすやすと発明・使用しているのか」と悔しがる様の滑稽さが魅力的です。
私が特に気に入っているエピソードは、ローマで成金趣味の派手な風呂を作るように依頼されてうんざりしているルシウスが、日本にワープしてそこで「ローマ風の浴場」をクライアントに依頼されてまじめに調べていたのに、実際にはローマ風とはかけ離れた成金趣味のものがクライアントの希望でうんざりしていた日本の建築家と共感しながら芸術的完成度の高い浴場を作り上げるという3巻に収録されているものと、6巻に収録されているルシウスが日本で惚れてしまったラテン語を話す女性の祖父が古代ローマにワープして、マッサージ師の能力を発揮してとりあえず金を手に入れ、しまいにはハドリアヌス皇帝の寿命を2か月ばかり延ばすような施術をして褒美をもらって帰るエピソードです。このおじいちゃんの動じないところがすばらしいと思いました。マッサージの需要はローマの浴場でもあるわけで、そこにひょっこり出てしまったおじいちゃんが言葉は通じなくとも体を見れば状態が分かるので効果のあるマッサージを施し、彼の前に行列ができてしまい「しかたねえな」と治療し、終わってから「なんだかわからねえが、銭は手に入った」と今度は外に出て服屋で服を買い、飯屋で飯を食って、他の労働者と美味しい食べ物を通して通じ合うシーンとか、異世界での淡々としたおじいちゃんの反応が魅力的ですね。そして、ハドリアヌス帝のもとに連れていかれて、じじい同士眼力だけで語り合っているところがすごいですね。😅 
このマンガのすごいところは、これだけ登場人物がしかめ面のおっさん・爺さんで占められてシリアス風なのに、ところどころ吹き出してしまうようなユーモアが盛り込まれているところです。

最終巻の終わりに続編の新連載がスタートするようなことが告知されていたのですが、単行本化はされていないようですね。残念です。

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ

レビュー:こやまゆかり著、『バラ色の聖戦 The Future is in our Hands!』全20巻

2019年12月04日 | マンガレビュー

義妹からお勧めだからと全巻セットを送ってもらい、さっそく一気読みしたばかりでなく、二度読みしてしまうほど面白いマンガでした。30歳の専業主婦が読モをやったのを機にモデルを目指して戦う物語。
主人公の年齢が30歳で二人の子持ちであるということを除けば、平凡(以下)からスタートした主人公がなにかの分野で才能を発揮し、意地悪な敵や世間の冷たい風を受けて紆余曲折しながらも心強い味方もいて、結局大成するという割とよくあるストーリーパターンかと思います。すぐに思い浮かべられるものだけでも、美内すずえの『ガラスの仮面』(演劇)、一条ゆかりの『プライド』(歌)、山岸涼子の『舞姫テレプシコーラ』(バレエ)、中村佳樹の『スキップ・ビート』(演劇)などがあります。
しかし、この作品は主人公・真琴が既婚者(のちに離婚しますが)の専業主婦であることから、少女漫画では重点を置かれない「大人の女性の自由と生きがい」がコアテーマとなっており、理解のない夫、子育て、働く母親としての葛藤がきめ細かく盛り込まれているのが特徴的です。その意味でまさに「大人の女性に贈るマンガ」と言えますね。
しかし、こういうマンガに登場するライバルその他の人を陥れようとするエネルギーやその手段ってえげつないですよね。まあ、こういう毒があるからこそ主人公の強さやしなやかさが際立つのですけど、やっぱりすごいなーと感心せずにはおれません。どうしてそういうことにエネルギーが使えるのかなあとか、常にいらいらとしてて疲れるのに、ご苦労様みたいな。
この作品の悪役メインキャスト紗良はまさにイライラの塊ですが、そのイライラの原因は子供を自分の見栄の道具としてしか見ない母親から認められたいという渇望と認められない不安と絶望にあって、強烈ですがなかなか悲しいキャラでもあります。
紗良は分かりやすい悪役キャラですが、人としての底知れない怖さを感じたのは真琴の元夫・敦司の再婚相手・陽子ですね。絵に描いたような夫を立てる家庭的な専業主婦で敦司の理想の相手として登場しますが、敦司が脳出血で倒れ、後遺症で元の仕事に戻れなくて今後を真剣に悩んでいるときに見せた「収入を確保するのはあくまでも夫の役割で自分はそのためのサポート」という割り切りが逆に怖いような気がしました。妙に納得した面もありますが。夫の横暴をにっこり笑って許していたのはこのためだったのか!と。😅 
なんというか真琴のモデルの世界も異世界ですが、ママ友・主婦友の世界も私には無縁の者なので、いろいろと興味深くて勉強になりました。

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ

レビュー:長岡良子著、『暁の回廊』全4巻( ミステリーボニータ)

2019年11月19日 | マンガレビュー


『暁の回廊』は、「古代幻想ロマンシリーズ」に通じるものがあります。中心人物は古代の神々・三輪神の血をひく阿刀(あと)少年(のちの道昭)と葛城皇子(中大兄皇子)で、古代ファンタジーの独特の妖しい雰囲気を醸し出しています。山岸涼子の『日出処の天子』の若き厩戸皇子(聖徳太子)の神がかり的な超能力に通じる力がこの作品でも重要な要素となっています。上宮王家の滅亡や乙巳の変などの史実と絡めて物語が進行していきます。
絵柄もステキでファンタジーストーリーとして魅力的ですが、中大兄皇子を肯定的に描きすぎているかな、とも感じました。


にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ


レビュー:長岡良子著、『古代幻想ロマンシリーズ』全15巻(秋田書店)

2019年11月11日 | マンガレビュー


「古代幻想ロマンシリーズ」は『葦の原幻想』、『夜の虹』、『天離る月星』、『玉響』、『眉月の誓い』全4巻、『夢の奥城』、『月の琴』、『天ゆく月』、『初月の歌』、『昏い月』、『春宵宴』全2巻からなります。壬申の乱後の藤原不比等の生きた時代とその少し後あたりの幻想的な昔語りの集大成のようなマンガです。藤原不比等(史)は主人公として、また脇役として何度も出てきますが、『ナイルのほとりの物語』のラーモセのように一貫した語り手はいません。しかし時を超越して生きる三輪神人であるまゆりとオビトは何度か登場します。彼らはラーモセのように時の輪にとらわれているわけではなく、神人だから少々不思議なことができ、また長生きでもあるという設定です。
また不比等が自分の外戚としての地位を築き上げてから編纂した「日本書紀」に対して、かつて彼の史(フミヒト:書記官)として育てた田辺氏が「よくもあのような嘘を」と非難しているところが印象的です。それに対して不比等が「歴史とは勝者の書くものだ」と答えているのは想定内ですが。
古事記にもあちこちに歴史改竄の跡が見られますが、日本書紀の方は改竄がもっとひどく、故意的に蘇我氏の系譜を貶めて悪者にし、藤原氏を正当化するように歴史が書かれているのは周知のことです。この二つをまるで日本の正史または聖書のように崇め、そこにこそ日本人のルーツがあると思い込んでいる輩がいるのはちゃんちゃらおかしいですが、もしそこに何らかのルーツがあるとしたら、「改竄のルーツ」だけじゃないですかね。文書隠滅と改竄が今でも政治の世界に脈々と受け継がれているという意味なら、確かに記紀にそのルーツを見るのも間違いではないでしょう。
まあ、そうした政治的なものはともかく、このシリーズは幸福な恋も悲恋も無常の時の流れの中で感動的に描き出されており、歴史ロマンとしてもスケールが大きいですね。
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ



レビュー:長岡良子著、『ナイルのほとりの物語』全11巻(ミステリーボニータ)

2019年11月11日 | マンガレビュー


エジプトのトト神の神官ラーモセは時空を超えて存在し続ける賢者にして魔法使いで、彼の時を超えて出会ってきた人たちの人生・役割が揺蕩い悠久のナイル川の流れのように語られていきます。アクナトン、ツゥト・アンク・アメン、モーセ、クレオパトラ、イエス、ヘロドトスなどの歴史上の重要人物が現れては消え、最後にラーモセ自身の物語が明かされ、彼が「捉えられていた」時の循環から解放されるというストーリーです。
非常に壮大なファンタジーですが、歴史的な背景と哲学的・宗教的な問いが含まれた深みのある作品です。
一つ一つのエピソードは関連があったり、まったく関係がなかったりして【ストーリー展開】と呼べるような大きな流れは、ラーモセがまだただの人間で王子であった頃に話がいたって初めて少し見えてきます。
実に興味深いコンセプトの作品だと思いました。

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ

レビュー:ヤマザキコレ著、『フラウ・ファウスト』全5巻(講談社)

2019年11月10日 | マンガレビュー


ドイツ語ゆかりのタイトルと絵柄の怪しさに惹かれて全5巻大人買いして一気読みしてしまいました。
かの有名なファウスト博士が実は女性だった、という設定も、彼女が死ぬはずだった時にメフィストフェレスが契約を履行せずに彼女に不死の(しかしケガをすれば、治癒するたびに肉体が減って小さくなる)呪いをかけて、自分を探し出すようにというゲームを始めるという設定も新鮮で面白いです。この呪いのせいでフラウ・ファウストは100年もの間さまよいながらバラバラにされて封じられているメフィストフェレスの体を集めていくストーリーに、知識欲旺盛で勝手にフラウ・ファウストについていくことに決めた少年マリオンや、彼女と同級生だった人形師(諸事情によりまだ存命)のサラ、強い意志を持ったホムンクルスのニコ、異端審問官のロレンツォなど魅力ある登場人物たちの交錯する人生も面白いですね。
そしてやはり、ファウストとメフィストフェレスの一筋縄ではいかない恋愛にも似た濃密でこじれた関係というのが一番美味しかったです😊 


にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ