徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

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書評:今野敏著、『波濤の牙 海上保安庁特殊救難隊 (新装版)』(ハルキ文庫)

2022年08月20日 | 書評ー小説:作者カ行

商品説明
台風が接近し、海が荒れる茅ヶ崎沖で、海難事故が発生した。海上保安庁特殊救難隊の惣領正らは、直ちに現場に急行。北朝鮮船籍らしき船から、三人の男を無事救出した。だが、救助した男たちが突如変貌し、惣領たちに銃口を向けてきた。男たちの要求は、沈みゆく船から“荷物”を取って来いというものだった。荷物とは一体何なのか? 彼らの目的は? 特救隊の男たちの決死の戦いが始まる――。傑作長篇小説、待望の新装版。(解説・関口苑生)

「新装版」というタイトルからも分かるように、この作品はかなり古いもので、1996年に祥伝社より発行。2004年に文庫・新装版として角川から発行され、今年8月16日に電子書籍版として発行された作者の76番目の作品。
海上保安庁特殊救難隊という特殊な組織を取り上げ、時化た海でのその活躍を描くというだけでもかなり特異な作品だと思います。

当時の最先端の技術や救難装備などなどかなり念入りに調査したのだろうなと言うのが分かる緻密な描写で、技術的なことにあまり興味を持っていない読者には少々読みづらいかもしれません。

登場している技術ばかりでなく、言葉遣いもやや年代を感じるところはありますが、ドラマ展開には力強い牽引力があります。
また、笑顔が安心感を醸し出すパワフルな海の男たちの魅力もたまりません。惣領正を中心とする救難隊の物語がシリーズ化してもおかしくなかったと思いますが、そうはならなかったのが残念ですね。

そして、ハラハラばかりでなく、惣領正と付き合いの長い恋人のエピソード、30歳を迎えたジャーナリストの彼女の将来の悩みや心の揺れの描写など事件以外の人間関係のドラマも丁寧に織り込まれているところが今野節ですね。




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