「ウェットウェア」 

2012-11-03 18:41:36 | Weblog



ルーディ・ラッカー著、マッドSF(ハードSFでもある)の大傑作、

「ウェットウェア」を読み終わる。

やはり、凄かった。

本当にとんでもない。


全編圧倒的にすごかったのだけど、

月のロボット達が陰謀で作り出した「人工生命第一号」である

「マンチャイル」が産まれて、本人の予定通り(?)暗殺されるくだりが

やはり、特に強烈だった。  そして、そのことが

直接描写されずに、あっさりと回想ですまされてしまうのも。

「マンチャイル」は自分が産まれた瞬間に、何て呼ばれたか記憶してて

(「男のお子さんですよ」)、

それで自分で「マンチャイル」って名乗るんだな。・・・・深い。

意味はしっかりと「人類の子」だ。

その子供の「バッバ」は、全然”いい思い”してなくて可哀想だ。

バッバは「厩」に隠れているのだな・・・・・。


ビート文学を愛する者としてはやはり・・・・

知生体であり、自立繁殖ロボットである「エミュル」がケルアックの喋り方をする、

のがやっぱり衝撃で、可笑しくて。しかも場所は未来の月面。

「エミュル」の姿はただの「箱」である。

対面する知生体ロボット「バーニス」はアラン・ポーの文体で喋る。

「バーニス」の姿は金色に輝く全裸の美女。

ある一章など全編が「バロウズ文体」で語られる。

(原語でそういうのが理解できたらまた、格別の感動があるだろうなぁ。)

馬鹿馬鹿しくて深遠で、センスが良くて、もう、本当に素晴らしい。


「エミュル」の登場の台詞を引用する。


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「バーニス、生きることは深い闇の大洋で、

われわれは次元騒ぎの派手やかな楽魚、われわれは絢爛たる花々で、

やがて騒陽が衰えてわれわれの亡骸を風が吹き散らす」

ハヤカワ文庫「ウエットウェア」ルーディ・ラッカー著・黒丸尚訳
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・・・・これで「バーニス」を口説いてるつもりなのが笑える。




しかし「マンチャイル」が死んでからの進行は 混乱、混乱で、

結局、どうなったんだ?と読了後に考える。


月面上の知性ロボット、「バッパー」はカビで全滅。

コッブの従兄弟のウィリィは、フロリダへ脱出。

「あなただけは新しいレヴェルに達するの」という謎めいた、それでいて

ちょと象徴的な台詞がウィリィに告げられる。最後にスタァンと合流。

バッバは地上の人工頭脳を開放するために戦ってる途中。

「ハッピィ外套」こと”進化した明滅被覆”がカビの影響から逃れて、

スタァンと一緒に月から地上へ降りてくる。

(結局この「ハッピィ外套」が、ロボット生命体と人間の接点なのだろうか。)

コッブ・アンダスンはバッバを逃がす時に射殺されてる。けど

コッブの「ソフトウェア」のコピーは月面にあるので・・・・・・

コッブは死にはしないのだな。ははは。

次作は翻訳されてるのだろうか?

(前回、読んだ時はまだ、「次作」は書かれていなかったと思う。)


それにしても

コッブの「ソフトウェア」がオフラインのときに

ずっと、”神と対話していた”というのがすごい。

「死」とはそういうものなのかもしれないな、などと

つい、思わせられてしまうのが何と言っても、最大の魅力だ。






ってな感じデシタ。

さて、

もう本当に寒くなったけど、風邪引かないようにね。




コメント
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