福田の雑記帖

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医療事故、医事紛争は何故減らないか?(15)増えるクレーム

2011年05月08日 13時23分42秒 | 医療、医学
 横浜市立大事件を機にマスコミが大きく取り上げたこともあって、医療機関側でも医療ミスや診療に関する患者との認識の違いを減らそうと努力するが増えた。今では、医療事故が起こった際には院内に調査委員会を迅速に立ち上げて対策することは大規模病院では一般的になったと思われる。

 それに伴い、診療の方針やこれから辿るであろう経過を詳しく説明する、いわゆるインフォームドコンセントがより重視されるようになり、カルテに説明した内容や行った診療内容を詳しく記録することも浸透した。その結果、医療者側と患者側の医療に対する認識の違いも埋まりつつあり、事故が起こった際にも訴訟まで至るケースが少なくなっている。

 そうは言っても、患者側の権利意識が高まったせいか日常の診療の中では医療者側に頻回に面談を申し込んできたりクレームをつけてくる事例は増えている様に思う。面談の意義を否定することは出来ない。このような場合に、医師や看護師は懇切丁寧に病状を説明する。クレームに対しては悪しき方向に発展しないように真摯に対応する。しかし、患者・家族との面談の中で私どもが一番困るのは発展性のない不毛な議論の繰り返し、どうどう回りである。忙しい状況の中、それに付き合うことほど無駄なことはなく、辛い。面談経過を文章にして渡しても、である。

 知人が勤務する病院で、夜間に看護師が家族に2時間以上詰め寄られた例があったとのことである。冷静に伝えれば数分で済むような内容であったが、家族は興奮し、話題に次々と枝葉が付き、かつどうどう回りしたと言う。何とか切り上げられなかったのかと思ったが、看護師の立場ではとても話を終えられるような状況ではなかったとのことである。

 医療の中で患者の病状の悪化、死亡といった結果は往々にして避けがたいが、理想論を前面に出してあくまで納得できないと感情的に主張してくる家族もいるし、人的体制や療養環境等が自分の考えに沿わない等と、現状の医療制度の中では何ともできないことにまで感情を顕わにしてクレームをつけてくる患者家族もいる。

 このような場合、医療者も同じ人間である。誠意を持って業務を進めていても「こんなことまでクレームつけられるのか」と一旦思ってしまうと、その患者の医療や介護に過度に慎重になる一方で、患者との共感を失い、かつ熱意を失う。結果として患者の不利益にもなりうるから互いに不幸である。
 私は譲りに譲って、患者、家族の気持ちには誤解があるとしても嘘はない、と思いたい。だから、面談を求めてくるのは良い。ただ、欲しいのは冷静な話し合いの場である。
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1 コメント

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no ability (noga)
2011-05-08 13:59:25
我が国が核攻撃を受けたらどのような事態が発生するか。
我が国の原発が大事故を起こしたらどうなるか。
疾走する弾丸列車が貨物列車に激突したらどのようになるか。

悪夢は見たくない。いつまでも能天気でいたい。
天下泰平の気分を壊したくない。

自分に都合の良いことだけを考えていたい。
それ以外の内容は、想定外になる。

ただ「間違ってはいけない」とだけ注意を与える。
「人は、誤りを避けられない」とは教えない。
「お互いに注意を喚起し合って、正しい道を歩まなくてはならない」とは、考えていない。

もしも自分にとって都合の悪いことが起こったら、びっくりする以外にない。
そして、「私は、相手を信じていた」と言い訳するしかない。だから、罪がないことになる。

危機管理は大の苦手。
だが、ナウな感じのする犯人捜し・捕り物帳なら大好きである。毎日テレビで見ている。

日本語には時制がないので、未来時制もない。
未来の内容を鮮明に正確に脳裏に描きだすことは難しい。
一億一心のようではあるが、内容がないので建設的なことは起こらない。
お互いに、相手の手を抑えあった形である。すべては安全のためか。不信のためか。

問題を解決する能力はないが、事態を台無しにする力を持っている。
親分の腹芸か、政党の内紛のようなもの。
今回の事件はわが国の国民性を色濃くにじませている。

http://www11.ocn.ne.jp/~noga1213/
http://page.cafe.ocn.ne.jp/profile/terasima/diary/200812

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