変容する日本社会、特にバブル崩壊後の経済の変化は、日本型雇用制度の消滅、出生行動の変化をもたらし、出生率に大きな影響を与えた。
その結果、2000年前後に来るはずの第三次ベビーブームは来なかった。
(1995年から2013年の間に3番目の出生数のピークが来るはずであったが・・・)
この間に社会が大きく変化した。
1980年代以降進行してきた 「家族の変化」 は、単身者など生活上のリスクを抱える多くの人々を生み、さらに、1990年代後半から深刻化した「雇用システムの変化」 は、 企業が従業員の生活全般を支えるという「日本型雇用慣行」を消滅させ、職場から生活保障が受けられない非正規雇用を増加させた。
そして、これらに伴う低収入による生活基盤の不安定化が、就職、結婚、出産の時期にあ若い世代に大きな影響を与え、 未婚率の上昇という形で「晩婚化」、さらには両親と同居のまま「非婚化」現象をもたらした。その結果、出生率が過去最低にまで落ち込んで行った。
日本の人口構成で見ると、戦後の1947年前後の第一次ベビーブームは年間250万人以上の出生数に達し、一つの大きな集団を形成していた。
その第一次ベビーブーム世代の子どもたちが中心となって、1970年代前半に年間200万人に達する第二次べビーブーム世代が形成された。この二つの人口の塊が、日本総人口を引っ張ってきた。
しかし、1995年から2013年の間で来るものと期待された「第三次ベビーブーム世代」の到来がなかったことである。
晩婚化や非婚化の流れは1980年代以降強まっていたが、1997年以降の経済低迷に伴う厳しい環境は、ちょうど就職、結婚、出産の時期にあった世代に決定的な影響を与えた。
これが、晩婚化に追い打ちをかけ、2005年には出生率は過去最低の1.26にまで落ち込んだ。それでもその頃は出生数はまだ120万人であった。
我が国の「人口減少」は「家族」の変化と「雇用システム」の変化の行き着く先として生じたであった。
したがって、我が国の人口減の対策はこの2点に関連したものでなければならない、ということななる。極めて大きな困難を伴うものとなる。
2022年の出生率は2005年と同じ1.26、出生数は史上最低の77万人であった。