福田の雑記帖

www.mfukuda.com 徒然日記の抜粋です。

新型出生前診断と相模原事件(3) 両者の考え方の背景は同じではないか 

2016年09月05日 17時04分39秒 | 医療、医学
 新型出生前診断と相模原事件には同じ考え方があるのではないか??
 突飛と思えるかもしれないが、普段からマイノリティーに対する差別、老人問題、障害者問題に関心を持っている私にはそのように感じられる。相模原事件は憎むべき個別の凶悪犯罪ではあるが、そればかりと見なすことは出来ない部分もある。

 私たちの社会で知らず知らずのうちに、障害者の存在を否定し排除していく考え方があるのではないか。私など少ないかもしれないが、私の心の奥には、複雑かつ不快な感情として否定することは出来ず、嫌な感情としてまとわりついている。もっとも他の方々の考えは知る由もない。言えるのは、私はそうだということのみである。

 最近は、マイノリティーに対する憎悪に基づく「ヘイトスピーチ」や「ヘイトクライム」が平然と行われるような社会状況がある。社会的に困難な状況にある人たちへの暴言をたしなめるどころか、「よく言った」ともてはやす風潮も見られる。そのような集団的な行為だけでなく、ネットでは困難な状況にある人たちへ罵詈雑言が飛び交っている。

 報道によれば、容疑者は「ヒトラーの思想が降りてきた」と話しているという。これはナチス政権下で行われた「安楽死』政策、いわゆる「T4作戦」のことを指しているのだろう。ヒトラーは、施設で暮らす障害児や、精神病院に入院する患者など、最低でも7万人、一説には十数万人を殺害するよう、非公式の命令を出したという。書類としては残っていない。

 優生思想とは、遺伝学的に「劣等」な者を排除し、「優秀」な子孫を増やすことにより、民族全体としての健康を向上させようとする考え方のことで、この発想の元に強制的な不妊手術が広く実施されたのは、実はヒトラーではなく米国が最初であった。
 1907年にインディアナ州で断種法が可決されたのを皮切りに、1931年までに30州で法案が成立し、精神障害者などに対して1万2千件以上の不妊手術が行われた。
 スウェーデンでも、1934-75年までの間、強制的な不妊手術が行なわれた。

 日本では1940年に「国民優生法」が制定された。法は「悪質な遺伝性疾患の素質を持つ者」に対する不妊手術を促していた。だが戦中戦後は強制的な不妊手術は行われなかったらしい。戦後1948年「優生保護法」が成立、遺伝疾患のほかに「ハンセン病」、さらに「精神病」等も追加された。優生学的理由による中絶も可能となった。この法律は1996年に「母体保護法」に改正されたが、強制的に行われた不妊手術は1万6千件以上にのぼる。

 現代社会においても、優生思想は形を変えて存続しているのではないか?と考えざるをえない。新型生前診断に基づく堕胎、今回の障害者殺戮事件、ヘイトスピーチ、生活保護家庭に対するバッシング、認知症などのほか身体的障害を伴う高齢者をまとめ社会から離そうとする対策など、マイノリティを排除し「社会の負担、個人の負担を減らしたい」という意図に基づくという点で、共通するのではないか。

 障害者支援法、母体保護法、ヘイトスピーチ対策法などが次々と成立している。こんな法によって、障害者を、マイノリティを保護しなければならない現実は、その社会に、自分と異質な人々に対する差別感が根強く残っていることの証でもある。
 
コメント    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 新出生前診断と相模原事件(2)... | トップ | 徒歩通勤2016(8) ヘルスチャ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

医療、医学」カテゴリの最新記事